隠し味@伊勢神宮

伊勢神宮、宇治橋から見た五十鈴川
 
世俗の世界から橋を渡って神域に入るこの場所は
とても重要な入口であり、象徴的な移動空間です。
 
橋を渡るときに
左手の方からひときわ川音がよく聞こえる場所があります。
 
そこには川幅いっぱいにわずかな段差が存在しており
段差部分の川底には自然石が敷き詰められていて
流れる川音がよく響くのです。
 
 
 
 
 
 
 
上から見た宇治橋と五十鈴川(Google Mapsより)
 
宇治橋の左側に、橋と平行するような直線上の段差は
この部分が人為的に造られたことを示しています。
 
神域に入ることを橋を渡る行為によって意識させ
さらに音による効果でそれを強調しているかのようです。
 
 
 
 
 
 
宇治橋(写真上の丸印)を渡りきると参道は右に折れ
そこからしばらくまっすぐな道が続きます。
 
300mほど進んだところで再び五十鈴川が現れ
石畳を下ったところで御手洗場に至ります。(写真下丸印)
 
 
 
 
 
 
徳川綱吉の生母、桂昌院が寄進したと言われる石畳を下りていくと
川で直接身を清めることができます。
 
よく見ると川の向こう岸に洲ができていて
自然と御手洗場に流れが向かうようになっているのがわかります。
 
なにげなく流れるこの川、
一見自然そのものに見えながらわずかに人の意思が重ねられ
さりげなく場の演出がなされているようです。
 
自然に敬意を払ながら
ほんの少し、まるで隠し味のようにそっと人為を注ぎ込む。
この空間をつくった日本人の微細な感性に心が揺さぶられます。