宇部の家 新計画案

昨年から進めてきた宇部の家のリノベーション計画
 
当初は上の模型の左端の南向きの部屋をリノベーションして
セカンドリビングにする計画でした。
 
その後、建主が住まい方を再考され
右端にある既存のリビングを本格的にリノベーションすることになり
改めて計画を練り直し、打合せを重ねてきました。
 
最大の課題は、LDK以外にある6部屋とのつながりがなく
部屋数の割に広さと家族の一体感が感じられないことでした。
 
 
とはいえ、元々の間取りのかたちの制約もあって
LDKとその他の部屋をつないで一体感を出すのに苦戦しましたが
何度も案を練り直し、建主も粘り強く検討していただいたおかげで
今回、ようやくプランの方向性が固まりました。
 
 
 
 
 
 
 
建物の北東端にあるリビングと隣接する部屋たちは
間仕切位置を調整することで視線の抜けをつくり
視覚的なつながりを生み出します。
 
また、既存の天井を取り払い、大屋根で各部屋を空間的につないで
部屋同士の一体感をさらに高めていきます。
 
 
 
 
 
 
 
 
基本的な間取りはほとんどそのままですが
開口部や間仕切の位置を調整することによって
各部屋のつながりや屋外への広がりを生み出します。
 
 
 
 
 
 
 
キッチンからリビング南側を見たところ
 
リビングの南側には薪ストーブを部屋のシンボルとして設置し
その向こうの植栽、さらにその先の庭へと視線が抜けていきます。
 
薪ストーブの右斜め方向は、南端のウッドデッキまで視線が伸び
どこにいても家族のつながりが感じられる住まいになりそうです。
 
プランがまとまってきたので
これから詳細のデザインをさらに詰めていく予定です。
 
 

皆川明の展覧会 「つづく」

GW前の4月23日から皆川明の展覧会が福岡市美術館で開催されています。
ちょうど臼杵の家へ行った帰りに、見学してきました。
 
 
 
 
 
 
会場には、これまでにデザインした400着以上の服が並んでいます。
 
服の形はとてもオーソドックスですが
生地や柄、色合いなどはどれ一つ同じものはなく
その創作に込めたのエネルギーにため息が出ます。
 
 
 
 
 
 
定番のタンバリン
 
一見、何気ない柄に見えますが
それぞれの輪は正円ではなく、あえて微妙な歪みをもたせ
さらに細部にもこだわり抜いています。
 
 
 
 
 
 
このメモにもあるように
刺しゅうはあえてラフに、でもジンタン(丸い粒)は重ならないように
明確な意志をもってイメージを方向づけています。
 
 
 
 
 
 
この三つ葉では刺しゅうによる輪郭線が一定ではなく
毛羽立ちの具合をあえてランダムに、ラフに表現しています。
 
 
 
 
 
 
こちらの生地は、遠目にはわからないのですが
近づいてみると色違いの糸を無数に織り込んでいることがわかります。
 
そこには、人の心を動かすほどの濃密な表現が込められていました。
 
 
 
 
 
 
うさぎをモチーフにしたこちらのパターン
 
白地にブルーのうさぎを配したそのパターンはシンプルですが
ブルーの色は水彩画のような微妙な濃淡があり
人の手でしか得られない不均質な温かみが現れています。
 
それは、まるで陶器の表情に通づるようです。
 
絵付における形の揺らぎや色のにじみ、かすれやムラなど
人の手でしか生み出すことのできない、唯一無二の味わいがあります。
 
 
 
 
 
 
なかにはこんな挑戦的な服も
 
知らない人が見れば、ぼろに間違われそうですが
意図的に生地を破いているようなデザインです。
 
表地はくすんだ色なのに、
破れたところから覗くスカイブルーの鮮やかな色がとてもスリリングで
ギリギリのバランスを取っているようにも感じます。
 
 
 
 
 
 
一着一着に渾身の思いを込めて生み出されたこれらの服たち
 
皆川さんが自身のブランドを立ち上げた頃、
巷にあふれていたのはDCブランドの刺激的な服たち。
それは、バブル時代の熱狂を象徴するような消費される一過性の存在でした。
 
奇抜さや派手さばかりを競い合うようなそれらの服に対し
「特別な日常の服」にこだわって作られてきたこれらの服は
使い捨てではない、着る人一人一人の記憶を刻みながら
服とともに紡がれる時間を経て、その人にとっての愛着となっていきます。
 
このことは、建築という異なるフィールドにいる自分にとっても
バブル時代をリアルタイムで通過してきた同時代人として
とても共通する感覚を覚えます。
 
バフルの頃は、まさに建築は使い捨ての極致にありました。
とても大きな存在であるはずなのに、
非常にはかない、薄っぺらいものになっていました。
 
本来、建築は服以上に長い時間を生きるはずの存在です。
そこで日々積み重なる時間が暮らす人や家族にとって
かけがえのない時間となり、それがいつか愛着となるように。
 
皆川さんのものづくりを通して
改めてその思いを確認することのできた貴重な機会です。