穏やかに過ごせる場の大切さ

令和4年も残り少なくなりました。
今年はどんな一年だったでしょうか?
 
世界な出来事も多い中、建築関係もコロナ禍の混乱によるウッドショックや
戦争による資源高で工事費にも大きな影響が続いています。
 
3月に竣工した大神の家2も木材価格高騰の影響でコスト調整に苦労しました。
現在、設計中の宇部の家のリノベーションも減額調整などで年を越します。
 
それでも、コストを抑えるために「安かろう悪かろう」では後々問題が起こります。
 
限られた費用の中でも何が一番大切なのかをしっかり吟味し
割り切るところは潔く割り切ることを上手にできれば
タイトなコストでも愛着のわく建築を生み出すことは可能です。
 
 
 
 
 
大神の家2も幾つかの要望を割愛しなければいけませんでしたが
「家族がのびのびとおおらかに暮らす」というテーマはぶれることなく実現。
家がまるで公園や広場のように、居心地よく過ごせる空間にこだわりました。
 
 
 
 
 
 
 
周南のまちでも、「車から人へ」の動きが少し垣間見られました。
11月に行われた社会実験では、御幸通りが公園のような豊かな場に。
コロナ禍でも人々がゆったりと交流できる場の大切さが再認識されました。
 
様々な不安の多い現代だからこそ、人と人が孤立するのではなく、
家でもまちでも人と人がつながって穏やかに過ごせる場が大切だと思います。
 
TIMEはそんな場や時間の大切さによりフォーカスして
その価値を提供することにこだわっていきたいと思います。
 

2022.12.28 設計事務所 TIME

藤田美術館

全面ガラス張りの圧倒的な開放感です。
 
大阪では、中之島美術館に続き、もう一つ、美術館に行ってきました。
大阪城にも近い敷地に建つ藤田美術館です。
 
実業家、藤田傳三郎の邸宅にあった蔵を私設美術館にしたものでしたが
老朽化のため、このたび建て替えられてリニューアルオープンしました。
 
国宝9点を収蔵する美術館は、中央の一段高い白いボリュームが展示室と収蔵庫で
その外側に深い庇が伸びる開放的なロビーが広がっています。
 
 
 
 
 
 
道路越しに見たアプローチ
 
道路と敷地を隔てる仰々しい塀や柵はなく
まちに開かれた外観は、まるでモダンなカフェかショップのようです。
 
 
 
 
 
 
建物の側面もガラス張りでまちとダイレクトにつながっています。
 
貴重な美術品は外的環境からしっかり保護した上で
美術館のパブリックな部分は、思い切りまちに開いていて
機能的にも意匠的にもとても明快なデザインになっています。
 
 
 
 
 
 
こちらも敷地と道路の境界には極力高さを抑えた車止めのみで
床レベルがそろえられていてまちとの連続性が強調されています。
 
 
 
 
 
 
道路と反対側には手入れが行き届いた庭園があり、
その先にある邸宅跡の公園につながっています。
 
展示室はロビーとは対照的に自然光を遮り、明るさを抑えた空間ですが
薄暗い展示室を出ると開放的なこの庭園の景色が一気に開けます。
この庭園を見ながら外通路を通ってロビーに戻るという動線になっています。
 
まちに開いたとても小粒の美術館ですが
その空間は、 開 → 閉 → 開 と明快に場面が展開し
美術品のクオリティとともにメリハリの効いた体験を提供してくれます。
 
 
 

何気ない風景@堂島川と高架道路

堂島川に覆いかぶさるように走る阪神高速道路
その裏面に現れた光のゆらぎ
 
水面に差し込んだ日光が反射して無骨な構造物に波紋が表情を与えています。
こんな無機質な巨大構造物にも美を見出すことができます。
 
 
 
 
 
 
 
高架の高速道路は日本の経済成長とともにまちに現れ
ダイナミックな構造物は都市の風景における象徴的な存在です。
 
 
 
 
 
 
一方で、まちの川沿いはほとんど高速道路に占拠されて
まちと川との接点は人間らしい暮らしから遠ざけられてきました。
 
しかし、世界では都市の水辺が人間らしい場として見直され
川を生かした都市づくりが行われています。
 
 
 
 
 
 
ここ中之島でも、川沿いの河川管理通路にイスやテーブル、植栽を配し
川沿いに人の集う場を生み出す取組みが行われています。
 
時は経済の時代から環境の時代へ
 
日本人も経済一辺倒ではなく、
自然のもつ景観やその居心地のよさに価値を見出だし始めています。
 
この場所も大阪府の政策として
水辺を人々の憩いの場に蘇らせる取組みを始めています。
 
まだ緒についたばかりではありますが
少しずつ、まちが人間らしさを取り戻そうとしています。