御幸通が公園に!

徳山駅前から北へ伸びる御幸通が1日限定で公園に!
 
周南市中心市街地活性化協議会の主催で社会実験が行われるそうです。
 
御幸通の中央部分に天然芝の公園にして椅子やテーブル、ハンモックが置かれ
のんびりとくつろげる場所を生み出します。
コーヒーや軽食のキッチンカーも出店するそうです。
 
車社会で駐車場や車道ばかりになってしまったまちを
人のくつろげる場所に変えていこうという、新たな試みです。
 
当日は天気もよさそうです。
まちなかでの新しい日常の体験へ、出かけてみてはいかがですか?
 
 

岡山芸術交流3

岡山市のまちや名所を巡ってアートを鑑賞する岡山芸術交流
最後は、まもなく改修を終えて公開を控える岡山城へ
 
 
 
 
 
 
岡山城西の丸に展示されたアート作品
池田亮司によるサウンドインスタレーション
 
横長の巨大なスクリーンに
音と映像によるデジタルアートが表現されています。
 
 
 
 
 
 
様々な映像が刻々と変化していくスクリーン
 
江戸時代の月見櫓や大樹を背景にしたデジタルアートは
新旧のコントラストが明快で、とてもクールです。
 
 
 
 
 
 
横から見たスクリーン
 
スクリーンにはフレームがなく
周りの風景とシームレスにつながっていて、エッジがとてもシャープです。
 
 
 
 
 
 
 
アップで見るとエッジのシャープさがよくわかります。
 
音と映像によるデジタルアートはとても大きな情報量がありながら
物理的な厚みや質量感が感じられず、なんだか不思議な感覚です。
 
3回目となる今回の岡山芸術交流、
欧米以外からも多数のアーティストが参加しています。
コンセプトや表現が多彩でクオリティも高く、充実した芸術祭です。
 
岡山芸術交流は11月27日まで開催されています。
11月3日にはリニューアルされた岡山城も公開されるので
アートや建築に興味のある方は、この機に出かけてみるのもよいでしょう。
 
 

岡山芸術交流2

金色の鈴を束ねた長さ10mの作品
 
オリエント美術館に展示されたオブジェは床から数ミリ離れていて
上から吊るされていることに気づきます。
 
改めて研ぎ澄まされた繊細さを感じます。
 
 
 
 
 
 
見上げるとこの美術館の中央を貫く吹抜け空間の中心に合わせてあり
重厚なコンクリートの空間と繊細な金属の鈴が一体となった空間になっています。
 
 
 
 
 
 
美術館の2階から吹抜けを見たところ
 
岡田新一の設計による美術館は古代オリエント美術を展示しており
外部とは遮断された閉鎖性の高い建築空間です。
 
中央の吹抜け空間は幾何学的な洞窟のような空間に
天窓からの光が表情豊かな陰影を作り出しており
改めて、並々ならぬ情熱をかけてデザインしたことがわかります。
 
 
 
 
 
 
後楽園の観騎亭
江戸時代、藩主がこの場所で家臣の乗馬の上達ぶりを眺めたそうです。
 
日頃は非公開ですが、今回の芸術祭の会場として
建物も公開されていました。
 
 
 
 
 
 
寄棟の小屋組が現しになった天井の下は実に開放的な空間で
内外がつながる日本建築特有のとても気持ちのいい空間です。
 
 
 
 
 
 
作品は機械じかけで円状に砂紋が描かれるもので
小さなモーター音と砂を引きずる音がたえず繰り返し
時間の永遠性と形の一過性が同時に感じられます。
 
 
 
 
 
 
後楽園に来たなら、やはり流店を見ないわけにはいきません。
旭川から引いた水は巧みにデザインされた水路によって
この建物の内外を巡っています。
 
 
 
 
 
 
建物の中を貫く水の流れと飛び石
 
作られた時代は古いものの、空間デザインは実に独創的で
その斬新さは現代アートに引けを取りません。
 
 
 
 
 
 
 
外観も驚くほどの軽やかさです。
特に1階はほとんど壁のない透ける空間で
デザインの面でもとても刺激になる建築です。
 
 
 
 
 
 
 
よく手入れされた庭園と秋の空
 
アートと自然はとても相性が良く
日常ではなかなか味わうことのできない心地よい時間を与えてくれます。
 
 

岡山芸術交流1

秋らしい季節がやってきたということで
岡山芸術交流と瀬戸内国際芸術祭をはしごして
アートの刺激をたっぷり浴びてきました。
 
1日目は今回で3回目の開催となる岡山芸術交流
岡山市の市街地や岡山城、後楽園などの景勝地を舞台に
まちぐるみで散策できるアートイベントです。
 
 
 
 
 
 
滑り台のある遊具のようなオブジェとライブイベント
 
最初にやってきたは旧内山下小学校
岡山城の西の丸跡地に建てられた小学校で
現在は廃校になっていますが、毎回アート展示が行われています。
 
体育館にあるこの作品、
手前のパフォーマンスと奥のオブジェに関連はありません。
 
ドラム缶を土台にしたステージでは
毎日様々な出演者がパフォーマンスを行います。
 
後ろのオブジェでは実際に滑り台を滑ることができて
ちょうど白人のカップルが滑り台を体験しているところに
手前のパフォーマーが「青い珊瑚礁」をシャウトしているという図。
 
なんともシュール・・・
 
 
 
 
 
 
 
教室を舞台にしたアート
 
窓一面にパンチングされたスクリーンがはめられていて
外の景色や光が制御された教室は非日常の空間へ昇華。
 
既存の長い洗面台もなかなかいい味があり、アートと一体化しています。
 
 
 
 
 
 
 
緑豊かな学校の中庭
 
昭和9年に建てられた鉄筋コンクリートの校舎、
初期モダニズムの匂いが香る渋さが魅力的で
現代アートの会場としてとてもしっくりはまっています。
 
 
 
 
 
 
 
旧西の丸庭園を背景にしたアート
モノクロのスクリーンに幽霊のように映り出す人影が
庭園を不思議な世界に変容させます。
 
 
 
 
 
 
 
校舎の階段
 
これはアート作品ではありませんが
踊り場の窓からにじむ光に照らされたモルタルの階段や腰壁は
モノとしての存在感がもはやアートです。
 
 
 
 
 
 
 
こちらも校舎の廊下です。
 
校舎の壁天井は基本的に白く塗られた空間で
アクセントカラーの入口ドアがほどよいアクセントになっています。
 
ハンチのついた現しの梁や露出した電線管もリアルで
空間にいい表情を与えています。
 
 
 
 
 
 
こちらの教室は空間全体に黒板塗装が塗られた深緑の異空間です。
 
先生と生徒は透明またか空っぽで服だけが見えていて
声や音もなく、動きもない静寂な空間にもかかわらず
おしゃべりが聞こえるようで、想像力をかきたてられます。
 
 
 
 
 
 
 
教室の窓から校庭を見下ろしたところ
 
3年前の会場は一面、土のグラウンドでしたが
今回は全面に芝生が敷き詰められ、芸術祭のテーマである
DO WE DREAM UNDER THE SAME SKY の文字が表現されています。
 
 
 
 
 
 
 
プールに巨大ぬいぐるみ!?
 
巨大なクマのぬいぐるみが大の字に横たわっています。
最初は、死んでいるのかと思ったのですが、どうも服従のポーズのようです。
 
頭についたピンクのリボンにグレーのパンツが
ぬいぐるみの愛らしさに性的なイメージを重ねた倒錯した表現が
インパクトとともにアートとしての強度が感じさせます。
 
まだ最初の会場を見ただけなのに
すでに感性を大きく揺さぶられています。
 
 

アノニマスな存在感

KATACHI museumに展示されているおろし器たち
 
金属製や木製にハイブリッドなものまで
おろし器一つとっても実に多様なかたち(デザイン)があります。
 
 
 
 
 
 
こちらの金属製のおろし器はポンチのようなもので
間隔をあけて穴が開けられています。
 
しかし、その穴たちは必ずしも同じ間隔ではなく
それなりに適当なズレがあります。
 
 
 
 
 
 
木製のおろし器
 
板のかたちはかなり大雑把です。
 
庶民が使う道具なので、そこに美意識は必要なく
安価に作れる道具としての必然性がそのままかたちになっています。
 
そこには、
正確につくられる工業製品とは違う素朴さや温かみがあり
ただの道具なのにアノニマスな、ものとしての存在感があります。
 
 
 
 
 
 
工業製品にはない素朴さという意味では
大津島の石柱庵もそれに通ずるところがあります。
 
100年以上前、切石を柱に、木の丸太を梁に使い
掘っ立てたような倉庫だったこの空間。
 
そのアノニマスな空間は茶室として読み替えることで
現代建築では表現できない独自の存在感が生まれています。
 
 
 

素材と造形の味わい

動物を形どった古代遺跡の遺品のような・・・
 
でもこれはれっきとした道具なんです。
KATACHI museumには世界中から古今東西の道具類が集められています。
 
タイで使われていたココナッツ削り器だそうですが
角か牙のある牛を表現したようなアートにも見えてきます。
 
 
 
 
 
 
こちらは三本足で踏ん張る怪獣のようにも見えましたが
18世紀にフランスで使われていたパン焼きグリルだそうです。
 
 
足や爪のようなフック状の形には手仕事の素朴さもあり
人間が作り出した道具としての創造性とともに温かみが感じられます。
 
 
 
 
 
これは何でしょう?
 
まるで謎解きのようですが、
実は私もなんだったか忘れてしまいました(笑)
 
でも、あえて謎解きできなくても
木と鉄で構成された形自体に得も言われぬ味わいがあります。
 
それは建築にも通ずるところがあって
機能や実用性を超えて存在する、素材と造形の味わいのようなものです。
 
 

KATACHI museum

内田鋼一さんプロデュースによるKATACHI museum
 
数々の商業施設でにぎわう敷地の中で
ここだけヨーロッパの片田舎の風景のような
静かで素朴な雰囲気をもつ外観が印象的です。
 
 
 
 
 
 
 
その外観をまとっているのがこの土壁です。
 
少し粗めに仕上げられた壁は、
時間の経過による風化が強く現れそうな質感です。
 
 
 
 
 
 
 
建物の妻側に設けられた小さな穴が入口です。
なにか、蔵に入っていくようなイメージを連想します。
 
 
 
 
 
 
穴に踏み込むと、右側に入口が現れます。
入口は木製の引戸で、扉それ自体が骨董品でできています。
 
 
 
 
 
 
 
受付を抜けて室内に入ってきたところ
ワンルームの室内全体に古い道具たちがちりばめられています。
 
これらは内田さんが世界各国を巡って集めてきたものたちで
すべて生活雑器ですが、機能を超えた芸術性があふれています。
 
次回は、これらの道具たちの魅力に迫ってみたいと思います。
 
 
 

日本最大の商業リゾートVISONへ

三重県和気町に7月20日オープンした商業リゾートVISON

敷地面積119ha、東京ドーム24個分という広大な敷地に
「癒・食・知」を軸にさまざまな体験が楽しめる施設が展開しています。
 
右手前に見える建物は日本最大級の産直市場、マルシェヴィソン
伊勢志摩や松阪の食材が食べられるバーベキューコーナーもあり
芝生の斜面は子供たちの格好の遊び場になっています。
 
 
 
 
 
 
建物は幾つかのゾーンに分かれて点在しています。
 
こちらはスウィーツヴィレッジといわれるゾーンにある
パティシエの辻口博啓氏が手がけるペーカリーカフェ
 
 
 
 
 
 
シンプルな切妻屋根の室内は天井の高いおおらかな空間
朝から続々とお客さんが訪れています。
 
 
 
 
 
 
こちらはサンセバスチャン通りと言われるエリア
 
スペインのサンセバスチャン市と連携したバルなどがあるとのことで
建物は軒下空間を持つ杉板張りの日本的なデザインです。
 
長屋状の建物にはD&DEPARTMENTやミナペルホネン、くるみの木など
知る人ぞ知るこだわりのお店が軒を並べています。
 
 
 
 
 
 
壁一面、土壁で仕上げられたKATACHI museum
陶芸家の内田鋼一さんがプロデュースしたミュージアムです。
 
内田さんには、この施設の構想時からお話を聞いていたので
せっかくの機会と思い、長野から足を伸ばしてやってきました。
 
商業施設でゆったりと楽しい時間を過ごすとともに
文化に触れることのできる貴重な施設でもあります。
 
 
 
 

御城番屋敷@松阪

旧松阪城内に残る御城番屋敷
 
まっすぐに延びる石畳の道、
両側には同じ高さで刈り揃えられた生垣が植えられています。
 
生垣の奥には江戸末期に建てられた藩士の組屋敷があり
現在でも、その子孫などが生活を営んでいるそうです。
 
個性的な形と長さを持つ生垣は、道と屋敷の公私を区切り
その高さ(約1.7m)によって屋敷のプライバシーを守るとともに
整然とした秩序と緑の潤いによって独自の景観美を生み出しています。
 
 
 
 
 
 
松阪城から見た御城番屋敷
 
長さ十二間半(約23m)の長屋が道を挟んで平行に建っていて
ここだけ江戸時代の秩序あるまち並みが残っています。
 
 
 
 
 
 
番屋敷と道路の間には端から端まで生垣が植えられて
建物・生垣と道路がワンセットになった空間が形成されています。
 
 
 
 
 
 
生垣には所々にスリットがあり
これがそれぞれの屋敷に入る入口になっています。
 
 
 
 
 
 
入口を正面から見たところ
 
生垣は道と屋敷を仕切るだけでなく
入口の門のような役割にもなっています。
 
 
 
 
 
 
 
番屋敷の特徴である生垣は、周辺の家々にも生かされており
このあたり一帯、整った緑の景観が連続して
歩いていてもとても気持ちのいい通りです。
 
 
 
 
 
 
こちらは生垣ではないですが
鉢植えの緑が道路一面に置かれています。
 
樹木や植栽は常に手入れが必要で
忙しい現代ではとかく敬遠されがちですが
手をかけてあげれば、家も引き立ち、まちにも潤いを与えてくれます。
 
潤いとともに、手間をかけることで自身の心も整えてくれる
緑のある暮らしがもつ効用を実感させてくれる
そんな松阪のまち並みです。
 
 
 

ヘリテージマネージャー養成講座@石城神社

三次元にうねる屋根
ヘリテージマネージャー養成講座で石城神社の改修工事を視察しました。
 
入母屋と切妻を組合わせた屋根は非常に複雑な三次曲面です。
 
この神社が建てられたのは室町時代、
当然ながらコンピューターもCADもありません。
 
近代化する前の日本人の造形感覚とともに
いかに柔軟に建物を作り上げていたのかと、驚嘆してしまいます。
 
 
 
 
 
 
改修前の屋根の写真
前回の修理は昭和59年で、それから38年が経過、
木材でできた屋根は随分と傷んでいることがわかります。
 
 
 
 
 
 
右が傷んだ屋根の断片。
長さ30センチの板を重ね合わせていますが
外部に面した部分が朽ちています。
 
左は新しく作った屋根のサンプル
帯状の銅板を積層する板の途中に1mごとに挟み込み
雨で流れ出す緑青によって防虫効果をもたせているそうです。
 
 
 
 
 
局面部の先端
幅10センチほどのこけら板を巧みに重ねて仕上げています。
 
 
 
 
 
こけら板の表面には筋状の細かい凹凸があります。
これは、厚板を鉈(なた)で割って3ミリにスライスする際に
自然にできた凹凸です。
 
あえてこの凹凸を残すことで重ねた部分に細かい隙間をつくり
雨で濡れた板が乾燥しやすいようにしているのです。
 
 
 
 
 
仕上がった屋根をよく見ると完全な真っ平らではなく
あちらこちらで微妙に波打っていたりします。
 
この揺らぎがむしろ表情となって、真っ平らにつくるより
下から見上げた時の味わいになっているのだと感じます。
 
昔の人は自然の摂理を受け入れながらも創意工夫を重ねることで
現代の科学以上に自然を巧みに利用した建築を生み出してきたのだと
改めて学ぶことの多い機会になりました。