櫛ヶ浜の家、骨組み補強

柱の根継ぎ工事4日目、
柱の背割り部分に埋め木をして、仕上げのかんな掛け。
これら、すべてが現場での手仕事です。
 
 
 
 
金輪継ぎ、ピッタリはまりました。
 
 
 
 
込栓を打ち込んで、しっかり固定。
 
 
 
 
1本につながった新旧の部材。
このあと、さらにかんな掛けして細かい段差をなくしていきます。
 
 
 
 
こちらはもう一つの難所、
建屋中央の傷んだ掘立柱を新しいものに取り替えて
もともとの足固め材を四方から差し直します。
 
 
 
 
力いっぱい掛矢で叩いても1回で数ミリしか動きません。
たいへんですが、その分しっかりとした接合部ができあがります。
 
 
 
 
どうしても入らないところを、少しずつノミで削って微調整。
 
 
 
 
 
ようやく3方の部材がはまりました。
このあと、X、Y方向のねじれをさらに修正するようです。
 
 
 
 
こちらは外周部の柱。
 
外壁解体時に足元の傷みが見つかったため、
足元部分を切断し、根継ぎする必要が出てきました。
この部分は新たに耐力壁にするため、やむを得ない判断です。
 
古い建物の解体修理では、事前調査では確認できない不確定要素があり
追加のコスト管理も含め、施工同様にしばらく難所が続きます。
 
 

週末連載 台湾35

先週につづき、すきま風景をもうひとつ
 
この路地もかなりミステリアスな雰囲気をもっていますが
 一方で、これだけの長さがまっすぐに通っていることから
近代都市としての計画性をも暗示させます。
 
 
 
 
試しに航空写真をググってみると、このとおり。
 
四角に囲われた街区の中に鰻の寝床状のビルがびっしり。
それらが南北の真ん中できれいに分けられ、そこを路地が貫いています。
 
この路地は、ある意味よそよそしい大通りの性格に対して、
リアルなコミュニティをささえる都市のサブシステムと言えるのかもしれません。
 
 

櫛ヶ浜の家、骨組み補強工事始まる

隣地側外壁を解体したところ
 
耐震補強を行うため土壁を撤去したところ、
隠れていた部分に新たな傷みが見つかりました。
(写真の柱1、2)
 
 
 
 
柱1の足元は腐っていて、ほとんど宙に浮いている状態。
 
 
 
 
柱の上部まで傷みがはげしく、
おそらく雨漏りなどによるものと思われます。
 
 
 
 
 
柱上部の梁も一部傷みが見られます。
 
 
 
 
 
柱2の足元の傷み具合。
こちらは外壁の鉄板を剥がした際に見つかったもの。
 
 
 
 
 
これは道路側の土間部分にある足固め。
柱との付け根が傷んでいます。
 
 
新たに見つかった部分も含め、構造強度に影響する部分は
補強方法を検討の上、手直しをする方針です。
 
 
 
 
母屋の柱の根継ぎが始まりました。
 
足元がシロアリに食われて潰れていた柱の下側を切断し、
新たな柱に組み替えていきます。
 
写真は金輪継ぎと呼ばれる強固な継手です。
 
 
 
 
 
しっかりはまった!・・・と思ったら
まだまだ調整が必要なんだそうで、この柱の加工だけでもう3日目だそう。
 
 
 
 
 
こちらは柱の足元部分。
既存の足固めとの接合部の具合を調整しています。
 
 
 
 
その柱を一旦外したところ。
伝統的で複雑な接合部の形状です。
 
 
 
 
既存の柱、上部の接合部。
立ったままの柱の状態で手刻みの加工は想像以上に手間がかかりそうです。
 
 
 
 
 
こちらは、傷んだ足固め材のかわりに組み替えられるもの。
こちらも既存の部材に合わせて現場で加工中。
 
 
 
 
外部では1階の屋根の葺き替え(下地まで)が終わり、
2階屋根解体用の足場が組まれました。
来週は2階屋根の葺き替えが行われる予定です。
 
 

櫛ヶ浜の家、化粧軒裏工事

道路側の屋根工事
 
道路に面したこの部分は準防火地域の規制に合わせる必要がありますが
もともとの化粧軒裏の意匠を生かすため、あえて一旦解体。
見た目はほとんど変えずに準耐火構造の仕様で作り直します。
 
 
 
化粧野地板に使われているのは30ミリの厚板。
実(さね)部分が赤く見えるのは、既存に合わせたベンガラ塗り。
 
 
 
この部分の骨組みは母屋側に少し傾いていたため
補強のための横つなぎ材を加えます。
写真は既存の桁材にほぞ穴を開けているところ。
 
 
 
 
横つなぎ材を既存の骨組みの長さに合わせるため
仮組みしては削ることを何度も繰り返しながら少しずつ寸法調整、
新築の何倍もの手間がかかっています。
 
 
 
 
作り直された化粧軒裏(室内天井部分)
新たにベンガラで塗られた天井は、既存の骨組みに比べて赤色が鮮やかです。
 
古い材に合わせて色を調整することもできるのですが
あえて歴史のリアリティを生かすことを大切にし、
時間の経過によって生まれる自然な調和に期待を込めています。
 
 
 
 

虹ケ浜の家、造作工事

キッチンの水屋と欄間部分の製作中
 
食器棚や家電収納、ゴミ箱、そしてインターホンに電話、機械警備の総合盤など
使い勝手が良いようにこの部分に造付収納としてまとめられます。
 
 
 
 
 
オープンキッチン手前のカウンター収納
 
日用品や書類などの生活必需品がこちらにまとめて納められます。
今回の造付家具はすべて大工さんの手により現場でつくられます。
 
 
 
 
こちらは玄関のベンチ
 
古い家の床の間に使われていたケヤキの地板を再利用、
こちらも古い家の記憶とともに綺麗な木目の表情も生かします。
 
 

何気ない風景@櫛ヶ浜の家

工事現場に現れたタレル!
 いや、正確にはタレルっぽい風景です。
 
現在、再生工事中の築95年の町家、
雨よけのために窓を覆っているブルーシートから漏れる光が拡散し、
ほの暗いブルーな空間に変容していました。
 
作為のないところに図らずして現れたジェームズ・タレルでした。
 
 

週末連載 台湾34

路地? それとも・・・
 
地下鉄(MRT)雙連駅近く、ビルとビルのすきま風景。
都市生活では必要だけど、見せびらかすべきでないものたちがあふれていて
その様はまるで都市の内臓のようです。
 
このすきま、どうやら通り抜けできそうなんですが
通過する間に消化されそうで怖い・・・
 

虹ケ浜の家、後半戦

虹ケ浜の家では外壁の塗装が終わり、足場が解かれました。
 
外観デザインは、限りなく普通です(笑)
 
「できるだけ目立たない家を」との求めに応じ、地味に抑えていますが
それでも、盛り土によって建物の存在感が大きくなってしまうので
極力軒高を低くして圧迫感を少なくしようとしています。
 
 
 
 
内部ではリビングの欄間回りの加工が行われています。
既存建具や造付家具の枠との取り合いがあり、見た目以上に大変そうです。
 
 
 
 
 
既存建具を使った欄間。
古い家の内縁の欄間に使われていたものを、玄関正面のこの場所に配置。
 
 
 
 
 
 
玄関側から見たところ。
リビングからの柔らかい光を玄関に届けるとともに
新しい家に古い家の持っていた時間と風情を織り込んでいきます。
 
 

屋根解体工事

連日、暑い日が続きていますが
現場では既存屋根の瓦の撤去作業が行われました。
炎天下の中、1枚1枚の手作業、本当にご苦労様です。
 
 
 
 
1階道路側の屋根下地、見上げ
 
既存垂木のサイズは60⨉50前後(現在の規格とは違います)
化粧軒裏の意匠を維持したまま準耐火構造にするため
垂木と野地板は一旦解体し、納まりや部材寸法が改められます。
 
 
 
 
西面2階既存屋根
両端が中央に比べて下がっているのがわかります。
こちらも隅木を入れ直して、矯正していきます。
 
 
 
 
入母屋、隅棟部分の状態
 
瓦を固定していた漆喰は剥がれ落ちており、かなりの瀕死の状態。
風雪に耐えてきた屋根、ようやくお役ご免となります。
 
1箇所1箇所に現代とは規格や納まりの違いがあり、かつ劣化の状況も様々です。
意匠の継承、耐久性、施工性、コストなど多くの変数が絡み合う中で
最適解を求めて大工さんと相談しながら施工方針を定めていきます。
 
 

週末連載 台湾33

台湾庶民の台所のひとつ、雙連朝市
文昌宮という廟を中心に、南北に広がっています。
 
 

 

文昌宮には学問の神様「文昌帝」が祀られており
受験生にも人気のある廟なんだそうです。
 
 
 
 
 
 
 
活気ある朝市の中に静かな祈りの場が同居しています。
 
 
 
 
 
 
 
魚や野菜、果物、食料品などが狭い路地の両側に延々と並んでいます。
整然と商品が並ぶスーパーマーケットではけっして味わうことのできない
人と人の距離の近さとリアルな質感があふれています。
 
朝市や市場は、都市を活性化させる潤滑油のような場、
ドライな現代の都市にこそ、もっとも必要な都市の装置です。
 
 
 
 
 
こちらの加工食品、かなりのウェット感が高温多湿の台北の街らしい。
試しに湯葉のようなもので巻いた右のものをゲット、なかなかの美味です。
 
 
 
 
 
こちらは台湾版のクレープのよう。
中国語はわからなくても、ジェスチャー付で「これひとつ」と言えば
ちゃんとコミュニケーションは成立します。
 
 
 
 
 
 
オッとその時、一台の車が割って入ってきました。
人であふれるこの狭い路地をわざわざ通るか!?
 
まるで無法地帯のようですが
いや、これこそが台湾では当たり前のルールなのかもしれません。
 
誰も騒ぐことなく、平然と車をやり過ごしていく姿に
混沌を柔軟に受け入れていく人間の強さのようなものを感じます。
 
 
 
 
 
朝市のそばには地下鉄MRTの駅からつづく公園があり
買ったものをこちらでのんびりといただくこともできます。
そこにはおこぼれにあずかる鳩たちも・・・
 
ここには余計なルールがあまり存在せず、まさに平和な場所といえるでしょう。