版築壁の現地確認

臼杵の家では、
建主のご希望で中庭の仕切り壁を版築でつくることになりました。
 
版築というのは、土を突き固めて基礎や土塀にしたもので
近代以前には寺院や貴族の館などの外塀として使われてきました。
しかし、経済性やスピード優先の現代では、工業化も進み
機能的な塀として版築が使われることはほぼなくなりました。
 
手間暇かかる版築ですが、
スピード優先の工業製品では出せない味のある表情が魅力です。
 
唯一無二の壁をつくるために、建主や工務店と検討を重ねた結果
この一品だけは長門の福田さんにお願いすることになりました。
 
時期も時期だけに、感染対策を徹底した上で
材料の搬入を兼ねて現地で打合せを行いました。
 
 
 
 
 
 
壁の高さが2m以上あるため、
2トン車いっぱいに積まれた土は全部で80袋、
1枚の壁にこれほどの土が必要とは、ちょっと予想外でした。
 
材料を降ろした後、現場で細かい寸法等の確認を行い
工事の日程も決まりました。
 
 
 
 
 
 
こちらはキッチン収納に使うカウンター用の無垢材
 
現場に向う途中、
中津の建具屋さんに立ち寄って確認してきました。
3.6mの長さがとれる無垢材が必要なため
提示していただいたのがバルサムという北米産の白木です。
 
 
 
 
 
 
 
カンナで削るとこのような表情でクセの少ない淡い色合いの木目です。
しっかり乾燥した材で狂いも少ないとのことで建主にもご了承いただき、
この材料で進めることになりました。
 
 
 
 
 
 
キッチン周りに据える造付の家具たちも順調に製作が進んでいるようです。
 
 
 
 
 
 
現場にはキッチンの顔となるカウンター家具が運び込まれていました。
 長さは4mもあるフランス製のビンテージです。
 
主役となるこの家具にふさわしい空間となるよう
平面プランと構造計画を何度も練り直してこの場所が用意されました。
 
 
 
 
 
 
ダイニングキッチンでは、壁のしっくい工事が進んでいます。
左官屋さんが塗っているのはディスプレイ用の棚。
 
細長く入り組んだ棚全体をコテで仕上げるのはけっこう面倒ですが、
一つ一つ時間をかけて仕上げていただいています。
 
 
 
 
 
 
リビングに据えられたミニキッチン。
こちらは全面モルタルで仕上げます。
 
この家の仕上げはほとんどが工業製品ではない職人による手仕事です。
その分、時間と手間がかかってしまいますが
その一つ一つの積み重ねが、ここでの暮らしを豊かに包み込み
経年変化とともに豊かな時間を提供してくれるでしょう。
 
 

臼杵の家、内装工事進行中

臼杵の現場も
 
外観はほぼ仕上がっており、現在内部の左官工事が進行中です。
 
 
 
 
 
南側正面からの外観
 
中央の中庭をはさんで
横スリット窓が印象的なダイニングと開口の大きな2階吹き抜けのリビング。
 
 
 
 
 
ダイニングから玄関方向を見たところ
まだ仕上げのしっくいを塗る前段階ですが、夏の日差しもあり
窓の少ない空間の割に明るさは十分です。
 
 
 
 
 
横スリット窓のカウンターの右側にはディスプレイ棚のアルコーブ
壁と同様にしっくいで仕上げてもらいます。
 
 
 
 
 
リビングの開口は防犯上、仮設の板戸で半分が塞がっていますが
しっくい塗装された空間は落ち着きのある明るさです。
 
 
 
 
 
 
窓側からの見返し
 
右奥には小上がりのたたみの間、
その上部は隠れ家のような子供室です。
 
 
 
 
 
 
階段も仕上がり、シンプルな手すりも取付完了しています。
 
 
 
 
 
洗面室と視覚的につながる浴室
 
床、壁ともモルタル仕上げで
蒸し暑い中、左官屋さんが丁寧に仕事をしてくれています。
 
設計に1年半、そして着工から7ヶ月余り。
普通の家であれば、すでに完成していてもおかしくないのですが
建主のこだわりをひとつひとつ確認しながらの家づくりです。
 
この忙しい時代にはありえないようなつくり方かもしれませんが
建主と設計者、そして施工する工務店それぞれが思いを受け止めて
進めることができている、とても稀な家づくりかもしれません。