週末連載 台湾40

真っ赤な丸提灯とアールデコ様式のビル
 
迪化街にやってきました。
このまちの歴史は古く、19世紀の清朝時代に貿易のための商店や問屋街が開かれ
日本統治時代、戦後の中国統治を経て、現在は観光地としても賑わいを見せています。
 
その繁栄の歴史は、必ずしも直線的なものではなく
中国や日本、日本を経由して移入された西洋の文化などが
まるで積層したケーキの断面のような風景として見えてきます。
 
 
 

夏の高野山11

石庭に描かれた砂紋、
大柄にして大胆で、力強い曲線を描いています。
 
 
 
 
折り返してうねる曲線
 
 
 
 
 
こんな波紋の模様も・・・
 
 
 
 
 
こちらがその石庭のある寺院、福智院。
 
この宿坊には重森三玲が最晩年にデザインした三つの庭があります。
今回は高野山と共に重森三玲の世界も堪能します。
 
 

夏の高野山10

金剛峯寺の石庭、蟠龍庭
 
幅の狭い渡り廊下を通り抜けた先に現れるこの景色。
白砂の砂紋が広がる中、脇に据えられた石が余白を豊かにしています。
 
 
 
 
砂紋と砂紋が直交するポイント
 
意匠上、どちらを勝たすか、線をどう止めるか
広々とした庭の中にも細部のこだわりが存在しています。
 
 

夏の高野山9

高野山真言宗の総本山、金剛峯寺
 
表門へのアプローチはとても穏やかで
太鼓橋の円弧は浅く、階段の勾配もとても緩くつくられています。
 
威厳よりも寛大さがにじみ出るようなこの空間は
すべての衆生を受け止める空海の哲学をそのまま表しているようです。
 
 
 
 
 
境内東側にある会下門の手前からの見たアプローチ見返し。
 
掃き清められた地面に朝日が落とす杉木立の淡い影。
実に清らかな時空間がただよっています。
 
 
 
 
杉木立に囲まれた境内は、逆に土の地面が広がるのみ。
入母屋の重厚な寺院に対し、かぎりなく「無」に近い余白が広がっていて
何もないはずのこの空間に、何故かこころをやすらかにする力を感じます。
 

櫛ヶ浜の家、棟上げ

櫛ヶ浜の家で増築部分の棟上げが行われました。
古くからある密集市街地の細長い敷地での工事はなかなか大変ですが
狭い空間の中でも上手にクレーン作業が進められました。
 
 
 
 
台風が去り、晴天のもと、無事棟上げ完了しました。
増築棟の奥にある既存棟と対になる形で奥行きのある住空間となっています。
これから、既存棟とともに仕上げ工事に進んできます。
 
 

週末連載 台湾39

迪化街に向かう途中、
突如現れた要塞のような集合住宅。
 
巨大な壁面もさることながら、そこに張り付いた庇、室外機、バルコニー。
どうやら個々の居住者のニーズに応じて後付けされたようです。
 
そのイレギュラーな構成が巨大壁面の威圧感を和らげて
生き生きとした人間くさい表情を獲得しています。
 
それにしても、
この後付けパーツ、一体どうやってつけたのか・・・?
 

2017.9.16 設計事務所 TIME 

夏の高野山8

高野山、もうひとつの聖地、壇上伽藍
 
高野山を開いた空海が修禅の道場として伽藍を建立。
左手が金堂、朱色が鮮やかな多宝塔は道場のシンボル根本大塔です。
 
壇上伽藍には宗教上重要な建物がいくつも配置されていますが
それ以前の法隆寺や東大寺に比べ、軸線や中心軸などが曖昧です。
 
その一方、
杉木立の中にゆったりとした間合いで配置されたランドスケープは
むしろ、伊勢神宮の境内などに近い感じがあります。
 
古神道にも通ずる真言密教の自然観がそのまま現れているようで
その世界観はすべて人に開かれ、心を開放するおおらかさを持っています。
 
 
 
 

 

櫛ヶ浜の家、配筋検査

櫛ヶ浜の家では、増築部分の基礎工事が進行中。
配筋検査を行いました。
 
 
 
 
土間や立上り部分の鉄筋径、間隔、継手の長さなどをチェック。
 
 
 
 
土間部分のかぶり厚さチェック。
こちらはかぶりが4センチしかないため、
スペーサーを入れ直してかぶりの修正を指示。
 
 
 
 
こちらのかぶり厚さは十分です。
 
 
 
 
櫛ヶ浜特有の鰻の寝床状の細長い敷地の奥行きを生かした増築棟、
既存棟との間にあるマキの木を残し、
坪庭をはさんで新旧の空間が向かい合う形になります。
 

夏の高野山7

奥の院のクライマックス、御廟。
 
ここまでの2キロの道行きには織田信長や明智光秀などの戦国武将、
法然などの宗教家など、歴史上の重要人物も供養されています。
 
敵味方の区別や宗派の違いを超えてこの地に祀られる魂たち。
それら全てを受け入れてきた空海、弘法大師とはいかなる存在なのか?
 
835年、この地で入定し、信仰上は今も生き続ける空海、
争いの絶えないこの世界にあって、あらゆる違いを超えて慕われるその存在があり
奥の院には、寛容にして強力な包容力があふれています。
 
 
 

夏の高野山6

杉木立と墓碑たち
 
20万基を超える墓碑が並ぶ奥の院。
それらは杉の木立の中に無造作に置かれているようにも見えます。
 
人の手によって整備され、整然と並ぶ西洋の墓地とは違い
自然の地形の中に場当たり的に置かれたような墓地の風景。
 
それは、
あるがままの自然に応じていくという
日本人独特の自然観が無意識に現れているのかもしれません。