「魯山人の宇宙」に刺激をいただく

周南市美術博物館で開催中の「魯山人の宇宙展」に行ってきました。

食文化を通じて陶芸や書、絵画、漆芸などあらゆる芸術を統合して表現した総合芸術を生み出した北大路魯山人。

この春に放送されたNHKのドラマ「魯山人のかまど」で使用された器も何点か展示されていました。

それらは、伝統を下敷きにしながら、魯山人の個性によって自由に展開し、時に大胆に、時に繊細に表現され、まさに多彩な表現を見せています。

 

 

ドラマの中でも撮影に使われた茶室「夢境庵」が実物大で再現されていました。展示では、なぜか茶室に座卓が置かれ、笑顔の魯山人が座っています(笑)

 

 

この茶室は千宗旦の茶室「叉隠」を手本に魯山人が設計したもの。叉隠にある洞庫口(点前座脇の道具収納)がこの茶室にも茶道口の横に設けられています。

実際の茶室では、収納ではなく、水屋につながる給仕用の引戸になっており、NHKのドラマでは、ここから客であるロックフェラー3世に料理を提供する様子が描かれていました。

 

 

床の間の床柱は黒柿の自然木がそのまま使われています。

 

 

こちらが実際の茶室の床柱(展覧会チラシより)

「当たり前」を超越した強い存在感がありながらも、不思議と説得力があり、気を衒ったようには感じません。

大胆さと繊細さ、そして遊び心、魯山人ならではの感性に感服です。

 

 

この茶室にはにじり口に加えて貴人口が設けてあるとの解説があり、学系員に尋ねたところ、この写真を見せてくれました。

にじり口から直接茶室に入るのではなく、貴人口から前室を経て改めてにじり口をくぐる独自の動線になっています。

展覧会では茶室以外は撮影禁止だったのですが、その他の陶芸や絵画も含め、建築の表現にも参考になる作品がいくつもありました、現在設計中の茶室のこともイメージしながら、色々刺激をいただきました。

 

 

引き算と豊かさ

メディアでも話題になったホテトチップスのモノクロパッケージ

地元のスーパーでもようやく店頭に並ぶようになり、思わず購入しました。

一部には色がなくなって寂しいなどのコメントも聞かれますが、そもそもこれまで無頓着に色を浪費していたのではないか・・・

消費社会では知らず知らずのうちに欲望が際限なく膨らんで、足し算ばかりのデザインが氾濫し、ついつい人はそれに流されてしまいます。

この地味なパッケージは、そんな社会に一つの問いを投げかているのでははないか?

知足(足るを知る)という言葉がありますが、日本人にはもともと引き算のできる感性が宿っていると思っています。

例えば、絵画などで画面を埋め尽くさずに残す余白やわざと文字数を制限した俳句、石と砂だけで庭を表現する枯山水、そして空間の狭さを楽しむ茶室など。

現代はモノも情報も溢れていて消費者の心をくすぐりますが、そんな時代だからこそ、あえて足し算ではなく引き算で上手にバランスをとることで、これまでとは違う豊かさに出会えるのではないか・・・

そんなことを思う一品です。さて中身のお味はいかに・・・

 

2026.7.6 設計事務所 TIME

意志を感じるデザイン

秋野不矩美術館はアプローチの工夫や外観の造形、リアルな質感など、建築家の秀でたデザイン力を感じました。今回は、細かいところにスポット当てます。

写真はアプローチ道路脇の手すりと側溝です。これがデザイン?と思ってしまうほど何気ない造りです。

はっきり言って地味!安っぽい・・・?

確かに見た目は決して洗練されているとは言い難いかもしれませんが、どちらも木で作られていることが肝であることは間違いありません。

美術館の原始的な造形や自然素材のワイルドな質感が生み出す世界観が、これらの小物たちにもしっかりと貫かれており、私にとっては、これぞデザイン!と言える一品です。

木は腐るとか、木は色褪せるとか、ネガティブな意見も囁かれそうですが、それすら超越した建築家の力強い意志を感じるデザインです。

 

 

Showcase Hotel KASANE

有福温泉に生まれたコンセプトホテル Showcase Hotel KASANE
古い旅館をリノベーション、地域の職人による手仕事をフューチャーし
独自の世界観が展開しています。
 
 
 
 
 
 
玄関に入るとあざやかな藍染めの下駄箱が目を引きます。
 
 
 
 
 
 
下駄箱の取手もオリジナルのもの
細部に至るまでデザインへの情熱が伝わってきます。
 
 
 
 
 
 
 
玄関ロビーの中心にはオリジナルのものと思われる大階段
明るさを落とした陰影の中に存在感を示しています。
 
 
 
 
 
 
階段を上がると複数の宿泊室へアプローチ
間接照明や集光型のダウンライトなどが空間に落ち着いた表情を与えています。
 
 
 
 
 
 
宿泊室に入ると、一面和紙の柔らかい光が迎えてくれます。
 
 
 
 
 
 
部屋の真ん中には、象徴的なペンダントライト
木製のシェードにもこだわりが込められています。
 
 
 
 
 
 
ダイニングテーブルの奥にはちょっとした調理ができるミニキッチン
天板も含め、木製のオリジナル家具として製作されています、
 
水栓、IHコンロやオリジナルのフード、壁の棚など
ひとつひとつ吟味してアレンジしたものたちが絵になる風景を創っています。
 
 
 
 
 
 
ダイニングルームの奥にあるベットルーム
木材や障子、土壁などの自然な色合いの中に藍の差し色が効いています。
 
 
 
 
 
 
ベッドルームの開口部も和紙による柔らかい光
落ち着いた雰囲気があり、夜明けも柔らかく感じられる空間です。
 
 
 
 
 
 
障子の組子にもこだわりが・・・
デザインを詰め込むと、場合によっては、やり過ぎになりがちですが
このホテルに込める真摯な思いでバランスを図っている感じがします。
 
 
 
 
 
 
寝室の奥にあるアクセントライト
既成のL型鋼を、あえて余計な手を加えずに潔く扱って
裏面に間接照明を組み込んだだけの好感が持てるデザインです。
 
 
 
 
 
 
ダイニングルームとの間仕切壁は元々の仕上げを取り外し
筋違いも含め、骨組みを意匠としてアレンジしています。
 
 
 
 
 
 
洗面室とトイレを仕切るカーテンのレールは懐かしい竹尺
若々しい遊び心に思わず笑みがこぼれます。
 
 
このホテルをプロデュースするのは
江津市内にあるSUKIMONOというデザイン会社で
建築や家具のデザインにとどまらず、
地域に根ざしたまちづくりにもこだわりを持っているようです。
 
まだまだ若い会社だけに、これからの展開が楽しみです。
 
 

虚を実現する力 倉俣史朗のデザイン展

世田谷美術館で行われている倉俣史朗の回顧展に行ってきました。
 
デザインの仕事をする人なら知らない人はいないであろう、
それほど強く独創的な作品を世に残した倉俣史朗
 
個人的には、建築家の北山孝二郎氏のもとでの修行時代、
兄である安藤忠雄さんや三宅一生さんとともに近い関係で
常に刺激を受ける存在でしたが、1991年、56歳で早逝。
 
今回、時代を超えた普遍の強さを持つ作品群を見てきました。
 
 
 
 
 
 
週末ということもあってか、開館10分前にはすでにこの行列。
注目度の高さを改めて実感します。
 
 
 
 
 
 
今回、最初の展示室のみ撮影可能ということで
せっかくなので名作たちを記録に残してきました。
 
 
 
 
 
 
まるで線画をそのまま立体にしたような01チェアとテーブル
 
単純明快な形ながらシルエットが重なって映り込む姿がまた美しく
それもイメージとして織り込まれていたであろうと思うと改めてゾクゾクします。
 
最小限のパーツに還元しながらも決して単調ではなく
シニカルのような、それでいてユーモアも感じられるような
そしてなにより、デザインの強度がしっかりと感じられる作品です。
 
 
 
 
 
 
 
天板の丸いフレームと脚の取合い
 
デザインにおいて異なるパーツを組合わせるとき
常に明快な答えが見つからず逡巡することがありますが
さすが、こんな手があったのか!とハッと気づかせてくれる
単純なのになんともエレガントな解答です。
 
 
 
 
 
 
ガラス片を象嵌したテラゾーテーブル
 
正方形の天板と同じく正方形のやや太い脚で構成された
形態としてはいたってシンプルなテーブル
 
しかし、ガラス片をランダムに象嵌したテラゾーで成形されていて
唯一無二の表情がテーマとして強く現れています。
 
 
 
 
 
単純な造形は精緻に組み合わされることによって
強い緊張感がにじみ出しています。
 
 
 
 
 
 
TOKYO
 
イッセイミヤケの店舗でデザインされたテラゾーテーブルは
白い色と丸い形がベースになっています。
 
 
 
 
 
 
白いベースに色とりどりのガラス片が散りばめられています。
 
それらひとつひとつは単なる破片にすぎないのにもかかわらず
どうしてこんなに美しい姿になるんだろう・・・
 
まさに倉俣マジックです。
 
 
 
 
 
 
How High the Moon
 
金属メッシュによるボリューム感のある曲面がとてもエレガントです。
しかし、イスの中は空っぽというトリッキーなデザインで
空虚さと軽快さという相反する二面性がなんとも不思議です。
 
ここで使われているエキスパンドメタルというメッシュ材は
フェンスや仮設の床などに使われる無機質な工業部材ですが
倉俣の手にかかると全く異なる美へと変身してしまいます。
 
 
写真に収められたのはこの4作品だけですが
そのほかにも透明なアクリルにバラの花を閉じ込めたミス・ブランチ
透明なガラス板だけで構成されたガラスの椅子など、充実の作品群です。
 
独創的なデザインなのに風のように軽やかな倉俣史朗のデザイン、
そして、イメージを現実の形と姿に実現していく力と強い意志。
30年以上を経た今、改めて鮮烈な刺激を得ることになりました。
 
 

中之島美術館 静と動

深い庇がガラス面につくる陰影が美しい
 
中之島美術館、2階エントランス階は全面ガラス張りで
透明感のあるすっきりとしたデザインです。
 
 
 
 
 
 
金属ルーバーの軒天井はそのまま内部まで連続、
目地のラインがきれいにそろっています。
 
無機質な素材の組合せながら、ディテールまで突き詰められ
工事の品質と相まって、洗練された美しさを見せています。
 
 
 
 
 
 
 
ガラス面に映り込むまち並み、
さらにガラスのプリズム効果で虹のような光が加わり
単純なはずのガラス面が多彩な表情を表しています。
 
 
 
 
 
 
室内はパノラマ状に外のまち並みに開いています。
落ち着いたトーンの室内と全面ガラスによる開放感が
気持ちのいい空間を生み出しています。
 
 
 
 
 
 
エントランス階の上部は3層の展示空間で
それがピロティ状の柱で持ち上げられ、宙に浮いています。
 
 
 
 
 
 
展示室につながる2本のエスカレーター
 
奥側のものが行き用で手前側が帰り用、
長く伸びるエスカレーターをゆっくりと進むことによって
ダイナミックな吹抜けを動的な空間体験としてまるごと味わうことができます。
 
 
 
 
 
 
1階から見ると4層吹き抜けの空間に斜めのボリュームがささっていて
インパクトのある造形になっています。
 
 
 
 
 
 
1階階段からの見上げ
 
ストイックでシンプルな外観からは想像できないほど
ダイナミックな中央の吹き抜け空間です。
 
シンプルな外観とダイナミックな室内空間という静と動が見事に構成され
空間デザインからディテールに至るまで納得の力作でした。
 
 

魁講座@徳山高校

母校の高校にて、進路選択に生かすための職業人講座を行いました。
建築家がどんなことを考え、その考えを形や空間にしていくのか、
その他、仕事の難しさややりがいなどをお話ししました。
 
 

 

講座で紹介した整形外科です。
 
この病院では患者にとってリラックスできる空間をつくることを目指し
周辺環境を味方につけることでそれを実現したことをお話ししました。
 
具体的には、道路の対面にある高校の土手の緑(写真左側)を借景に使い
待合室やリハビリ室から四季折々の緑の風景を感じられるようにしています。
 
 
 
 
 
待合室から土手の緑を見たところ
 
風景をより美しく見せるため、3mの高さにある庇で風景を切り取り
窓枠や柱をできるだけ省いて風景の邪魔にならないようにしています。
 
 
 
 
 
 
柱を省略するためにトラス構造の梁(黄色の破線部分)を使い
柱を支える間隔を通常の2倍以上広げるなど
構造の工夫によって実現したことなどもお話ししました。
 
 
 
 
 
 
城ケ丘の家では、
敷地の制約を逆手にとって居心地のよい環境をつくるための
様々な工夫についてお話ししました。
 
 
 
 
 
 
 
こちらは敷地回りの配置図です。(灰色部分が敷地)
 
隣地の建物や間口の広い道路からのプライバシーが確保しにくい状況で
さらに、敷地形状が不整形で扱いにくいという制約もありました。
 
 
 
 
 
 
一方で、設計で目指したのは
上の写真のように開放感のある室内と庭が一体につながる
日本の伝統的な居住空間が持つ心地よさです。
 
一見、相矛盾するようなテーマですが
それを実現するために2つの建築を参考にしています。
 
 
 
 
 
 
プライバシー確保のためにヒントにしたのが中庭空間です。
スペインのアンダルシア地方には真夏の日差しを遮るために
家を囲い込み、中庭と室内を一体で暮らす伝統的な住居があります。
 
私もセビリアの町で実際に泊まったことがありますが
家の中と外の境界が曖昧につながった心地よさを実感しました。
 
今回は、この中庭を日差しの代わりに視線を遮ることに利用しています。
 
 
 
 
 
 
もう一つ、不整形な敷地への対応では
ブルガリアの山深くに建つリラの僧院を参考にしています。
 
 
 
 
 
 
リラの僧院を平面図で見ると真ん中に礼拝堂(黒い建物)があり
そのまわりを修道僧の宿所が取り囲むように建っています。
しかも、宿舎はかなり角度を振った形になっています。
 
その間には不整形の中庭が存在し
実際にその場に立ってみるととても動きがあり
場所ごとに見え方が変わるとても魅力的な空間でした。
 
 
 
 
 
 
 
2つの建築をヒントに
不整形な中庭という形式で家を配置したのがこの図です。
 
隣地の建物に対し
「くの字」型の母屋(白い部分)を敷地形状に合わせて置き
道路側にも離れ(茶色の部分)を配置して視線を制御しています。
 
ただし、日本の夏の湿度を考慮して完全な中庭にはせず
2箇所ほど切り離すことで風通しも確保しています。
 
 
 
 
 
 
道路側から見た外観です。
 
白い母屋と茶色の離れの間には植栽を生垣状に植えて
外からの視線を制御し、風通しは確保しています。
 
さらに周辺に対して緑の潤いも提供するという
一石三鳥の役割をこの植栽に託しています。
 
 
 
 
 
 
中庭空間は不整形で動きがあり、とても風通しがよいのです。
夏場は母屋と離れの間にオーニングを渡すことで快適に過ごせます。
 
 
 
 
 
 
室内から見たところ
 
中庭にはウッドデッキを敷き、開口部を大きくとって
室内と庭とが一体でつながる開放感のある空間を実現しました。
 
差し込む朝日は季節ごとに角度が変わり
四季折々の変化を感じられる居心地のよい空間です。
 
このように敷地の制約も積極的に受け入れながら工夫を凝らすことで
標準的な敷地以上に個性的で心地よい住まいができるのです。
 
設計では実現できること、できないことがそれぞれあります。
 
それでも、様々な工夫を重ねることによって
そこに暮らす人が人間らしく、生き生きと過ごせる空間をつくること、
それが何より重要であることを学生たちに伝えました。
 
 
 

皆川明の展覧会 「つづく」

GW前の4月23日から皆川明の展覧会が福岡市美術館で開催されています。
ちょうど臼杵の家へ行った帰りに、見学してきました。
 
 
 
 
 
 
会場には、これまでにデザインした400着以上の服が並んでいます。
 
服の形はとてもオーソドックスですが
生地や柄、色合いなどはどれ一つ同じものはなく
その創作に込めたのエネルギーにため息が出ます。
 
 
 
 
 
 
定番のタンバリン
 
一見、何気ない柄に見えますが
それぞれの輪は正円ではなく、あえて微妙な歪みをもたせ
さらに細部にもこだわり抜いています。
 
 
 
 
 
 
このメモにもあるように
刺しゅうはあえてラフに、でもジンタン(丸い粒)は重ならないように
明確な意志をもってイメージを方向づけています。
 
 
 
 
 
 
この三つ葉では刺しゅうによる輪郭線が一定ではなく
毛羽立ちの具合をあえてランダムに、ラフに表現しています。
 
 
 
 
 
 
こちらの生地は、遠目にはわからないのですが
近づいてみると色違いの糸を無数に織り込んでいることがわかります。
 
そこには、人の心を動かすほどの濃密な表現が込められていました。
 
 
 
 
 
 
うさぎをモチーフにしたこちらのパターン
 
白地にブルーのうさぎを配したそのパターンはシンプルですが
ブルーの色は水彩画のような微妙な濃淡があり
人の手でしか得られない不均質な温かみが現れています。
 
それは、まるで陶器の表情に通づるようです。
 
絵付における形の揺らぎや色のにじみ、かすれやムラなど
人の手でしか生み出すことのできない、唯一無二の味わいがあります。
 
 
 
 
 
 
なかにはこんな挑戦的な服も
 
知らない人が見れば、ぼろに間違われそうですが
意図的に生地を破いているようなデザインです。
 
表地はくすんだ色なのに、
破れたところから覗くスカイブルーの鮮やかな色がとてもスリリングで
ギリギリのバランスを取っているようにも感じます。
 
 
 
 
 
 
一着一着に渾身の思いを込めて生み出されたこれらの服たち
 
皆川さんが自身のブランドを立ち上げた頃、
巷にあふれていたのはDCブランドの刺激的な服たち。
それは、バブル時代の熱狂を象徴するような消費される一過性の存在でした。
 
奇抜さや派手さばかりを競い合うようなそれらの服に対し
「特別な日常の服」にこだわって作られてきたこれらの服は
使い捨てではない、着る人一人一人の記憶を刻みながら
服とともに紡がれる時間を経て、その人にとっての愛着となっていきます。
 
このことは、建築という異なるフィールドにいる自分にとっても
バブル時代をリアルタイムで通過してきた同時代人として
とても共通する感覚を覚えます。
 
バフルの頃は、まさに建築は使い捨ての極致にありました。
とても大きな存在であるはずなのに、
非常にはかない、薄っぺらいものになっていました。
 
本来、建築は服以上に長い時間を生きるはずの存在です。
そこで日々積み重なる時間が暮らす人や家族にとって
かけがえのない時間となり、それがいつか愛着となるように。
 
皆川さんのものづくりを通して
改めてその思いを確認することのできた貴重な機会です。
 
 
 

旧毛利家本邸画像堂 見学会

重要文化財の旧毛利家本邸画像堂
工事が終わり、改めて画像堂の見学会に行ってきました。
 
森の木々に囲まれた環境の中に建つ建物は
明快な構成と和の様式でまとめられた荘厳な雰囲気です。
 
 
 
 
 
楼閣部分の宝珠、入口屋根の鬼瓦や懸魚、木口を白く塗られた垂木など
寺院建築の伝統的意匠でまとめられています。
 
 
 
 
 
隅棟先端部の輪違瓦の意匠
細かいところまでしっかりと洗練されたデザインです。
 
 
 
 
 
補強金物が新調された入口扉は重厚な表情です。
 
 
 
 
 
火灯窓は寺院建築の様式をモチーフにしていますが
やや扁平のプロポーションにデフォルメされていて
伝統をただ単にコピーしたというより記号的に表現しているように感じます。
 
 
 
 
 
黒い仕上げで渋く光る金物類
 
 
 
 
 
扉の蝶番は銅製のオリジナルのもののようで
マイナスビスが使われています。
 
 
 
 
 
画像堂内部
毛利元就を中心に歴代藩主の肖像画が飾られています。
 
骨組みはちゃん塗りと呼ばれる塗料で黒く引き締められ
楼閣部分の欄間から自然光が柔らかく漏れる垂直性の強い空間。
 
毛利家の精神的な拠り所となるこの空間を
西洋の空間構成と和と様式を融合させて演出しています。
 
 
 
 
 
床には御影石と美祢の石灰岩による渦巻き模様の人研ぎ仕上げで
荘厳な中にも華やかな意匠を織り交ぜています。
 
工事中にも感じたことですが
和と洋のせめぎ合う大正という時代に
伝統と現代性をどのように調和させていくのか
葛藤しながら、もしくは楽しみながらデザインしたであろう
設計者の思いが感じられる建築でした。
 
 

ヘリテージマネージャー講座、長門編の1

先週の土曜日に行われたHM講座、
今回は長門市の日置地区の旧家と湯本温泉のエリアリノベーションを視察。
 
午前中は日置地区の旧家を視察、
大正末期に建てられた建物でかなり古いですが、
そこに刻まれたデザインや仕事ぶりから
当時つくった人たちの意気込みを感じ取っていきます。
 
まず最初に見学したのは江戸時代から呉服屋を営んでいた中野家本店の別荘。
敷地には事務所、別宅、離れの浴室の3棟が残っています。
写真は道沿いに建つ洋館の事務所です。
 
 
 
 
道に対し、45度に隅切りされた入口部分。
入口上部には一際目を引く丸い庇が突き出しています。
 
丸い庇の幕板部分には同じく円形の装飾がはめ込まれ
日本建築にはなかった新しいデザイン要素が積極的に使われています。
 
 
 
 
 
 
モールディングの窓枠に縦長の窓。
ちなみに窓枠のモールディングは石ではなく、木を加工して作られています。
窓の桟割りも複雑で、かなり練りこんでデザインされたことが感じられます。
 
 
 
 
 
屋根下には稲妻型の軒蛇腹もつけられ
入口の丸いの庇と対をなすデザインとなっています。
 
これら外観の意匠を見るだけでも
当時新たに入ってきた西洋の様式を積極的に取り入れようとした
デザインに対する意気込みが強く感じられます。
 
文化の中心でなかったこの地方にあって
突然現れたこの洋館は大正末期の当時としては
かなり斬新な風景として見えていたことでしょう。