何気ない風景 @上村

何気ない風景、久々の投稿です。
 
打合せの帰り道、
この辺りではよくある山あいの風景のなかに
なにやら気になる建築のシルエットが・・・
  
周囲の自然の大きさに対して
建物の置かれ方やサイズのバランスが抜群です。
 
 
 
 
 
3つに分節されたボリュームは、
まるで楽譜の音符ようにリズミカルに並んでいます。
 
左と中央のボリュームは段違いで、
右のボリュームはそれらから切り離されていますが
屋根の形状によって左側のボリュームとの関係性を保っています。
 
これらのボリュームの正面には窓がないため
抽象性と純粋性はさらに高まっています。
 
 
 
 
斜めから見たところ。
 
左側の妻側にはシャッターがはめられているので
軽トラか耕運機が格納されているものとみられます。
 
中央と右側のボリュームは背が低く、向き合う面が吹きさらしで
開放倉庫として使われているようです。
 
右側のボリュームが離れているのは、
物が増えたために後に増築されたからなのかもしれません。
 
その屋根は、お互いが糸でも引くように跳ね出して
関係性を強めています。
 
現代のバナキュラーとでも言えそうな
どこにでもあるような素朴な形と表情ですが
図らずも現れた構成美やプロポーションによって
無作為の美のとしての極点に至ろうとしています。
 
 
 

臼杵の家、外部工事進行中

臼杵の家では、屋根や外壁周りの工事が進行中です。
 
遠隔地の工事のため、
頻繁に現地に出向いてチェックすることが難しいのですが
工務店(住想)さんが工事の進行状況を画像で送ってくれるので
細かい部分の納まりやデザインの調整もやりやすく、とても助かります。
 
 
 
 
 
こちらは屋根の換気棟の施工状況
 
軒先から入った空気をここから抜くことによって
夏場の屋根裏の熱気を逃がすことで暑さを抑えることができ、
屋根下地内の結露による骨組みの劣化も防ぐことができます。
 
 
 
 
 
こちらが軒先の通気穴(防虫網付)
垂木と垂木の間の面戸板という部材にひとつひとつ穴を開けるため
結構手間がかかっていますが、丁寧に加工していただいています。
 
 
 
 
 
こちらは中庭の屋根部分
外壁のある部分と部材どうしの取り合い方が少し異なるので
大工さんの意見を監督さんが仲介してラインと電話でやりとりしながら
他の部分と統一感が出るように形状を調整していきます。
 
 

10年という時間

 
今も鮮明に思い出される津波の光景、
あの日を境に日本人の防災意識は高まりました。
 
しかし、あれから10年、
あの日の防災意識をキープできているでしょうか?
(まさに自分にも問いかけ直しているところです)
 
この間に地震や台風、集中豪雨など
日本各地で大きな被害は続き、今は感染症に悩まされています。
 
「まさか、こんなことになるとは・・・」
 
「こんなことは初めて」
 
被災した人たちのインタビューでたびたび聞かれるこの言葉、
日常が平安であればあるほど、自然は不意をついてきます。
 
「天災は忘れた頃にやってくる」
 
物理学者、寺田寅彦が発したと言われるこの言葉があります。
人間は忘れやすい生き物で、時に慢心すらしてしまいます。
 
「世の中が安全になればなるほど、人間の危機意識は弱まるのか?」
 
毎年、高専の授業で学生たちに語りかける命題です。
 
安全や防災は意識し続ける努力をしないと「愛する人」さえ守れないかもしれない。
それは、「平和」と少し似ている気がします。
 
 

2021.3.11 設計事務所 TIME