藤田美術館

全面ガラス張りの圧倒的な開放感です。
 
大阪では、中之島美術館に続き、もう一つ、美術館に行ってきました。
大阪城にも近い敷地に建つ藤田美術館です。
 
実業家、藤田傳三郎の邸宅にあった蔵を私設美術館にしたものでしたが
老朽化のため、このたび建て替えられてリニューアルオープンしました。
 
国宝9点を収蔵する美術館は、中央の一段高い白いボリュームが展示室と収蔵庫で
その外側に深い庇が伸びる開放的なロビーが広がっています。
 
 
 
 
 
 
道路越しに見たアプローチ
 
道路と敷地を隔てる仰々しい塀や柵はなく
まちに開かれた外観は、まるでモダンなカフェかショップのようです。
 
 
 
 
 
 
建物の側面もガラス張りでまちとダイレクトにつながっています。
 
貴重な美術品は外的環境からしっかり保護した上で
美術館のパブリックな部分は、思い切りまちに開いていて
機能的にも意匠的にもとても明快なデザインになっています。
 
 
 
 
 
 
こちらも敷地と道路の境界には極力高さを抑えた車止めのみで
床レベルがそろえられていてまちとの連続性が強調されています。
 
 
 
 
 
 
道路と反対側には手入れが行き届いた庭園があり、
その先にある邸宅跡の公園につながっています。
 
展示室はロビーとは対照的に自然光を遮り、明るさを抑えた空間ですが
薄暗い展示室を出ると開放的なこの庭園の景色が一気に開けます。
この庭園を見ながら外通路を通ってロビーに戻るという動線になっています。
 
まちに開いたとても小粒の美術館ですが
その空間は、 開 → 閉 → 開 と明快に場面が展開し
美術品のクオリティとともにメリハリの効いた体験を提供してくれます。
 
 
 

中之島美術館 静と動

深い庇がガラス面につくる陰影が美しい
 
中之島美術館、2階エントランス階は全面ガラス張りで
透明感のあるすっきりとしたデザインです。
 
 
 
 
 
 
金属ルーバーの軒天井はそのまま内部まで連続、
目地のラインがきれいにそろっています。
 
無機質な素材の組合せながら、ディテールまで突き詰められ
工事の品質と相まって、洗練された美しさを見せています。
 
 
 
 
 
 
 
ガラス面に映り込むまち並み、
さらにガラスのプリズム効果で虹のような光が加わり
単純なはずのガラス面が多彩な表情を表しています。
 
 
 
 
 
 
室内はパノラマ状に外のまち並みに開いています。
落ち着いたトーンの室内と全面ガラスによる開放感が
気持ちのいい空間を生み出しています。
 
 
 
 
 
 
エントランス階の上部は3層の展示空間で
それがピロティ状の柱で持ち上げられ、宙に浮いています。
 
 
 
 
 
 
展示室につながる2本のエスカレーター
 
奥側のものが行き用で手前側が帰り用、
長く伸びるエスカレーターをゆっくりと進むことによって
ダイナミックな吹抜けを動的な空間体験としてまるごと味わうことができます。
 
 
 
 
 
 
1階から見ると4層吹き抜けの空間に斜めのボリュームがささっていて
インパクトのある造形になっています。
 
 
 
 
 
 
1階階段からの見上げ
 
ストイックでシンプルな外観からは想像できないほど
ダイナミックな中央の吹き抜け空間です。
 
シンプルな外観とダイナミックな室内空間という静と動が見事に構成され
空間デザインからディテールに至るまで納得の力作でした。
 
 

都市の魅力的な公共空間、中之島美術館

大阪の中之島にこの春オープンした中之島美術館
 
堂島川の対岸からは、一見、無表情なブラックボックスに見えますが
都市の公共空間として、また美術館の持つべき性能面などで
様々な工夫が盛り込まれたデザインになっています。
 
 
 
 
 
 
側面の道路から見るとブラックボックスは宙に浮いた存在で
1階はカフェやショップ、2階は美術館のエントランスとなっています。
 
この2層の空間はチケットがなくても誰でも自由に入れる
まちに開かれた場です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2階のエントランスは道路から6mほど上がったところにあり
川沿いの道路からは、丘のような公園を上りながらアクセスできます。
 
 
 
 
 
 
通路や階段脇にはあちこちに植栽が植えられていて
まっすぐに上がっていくだけの単調なアプローチではなく
公園をゆっくりと散策するようなアプローチです。
 
 
 
 
 
 
アクセスは階段のほかに緩やかなスロープの選択肢もあり
高齢者や身障者に対しても配慮されています。
 
 
 
 
 
 
ゆるやかな丘には段々状の踊り場がありベンチも備わっているので
川や都市の風景を眺めたり、家族や友人とおしゃべりしたりなど
ゆったりと過ごせる場所になっています。
 
このアプローチは美術館に行くための単なる通路ではなく
都市の中にある公園としてもデザインされているのです。
 
 
 
 
 
 
床は既成コンクリートの細かい平板が石畳風に敷き詰められていて
すべりにくくて排水性もよく、コスト面でもよく考えられています。
 
 
 
 
 
 
散策路脇の植栽との取り合いはスチールプレートの見切りで
植栽の生え際がシンプルですっきりしたデザインです。
 
 
 
 
 
 
エントランスのある2階まで上がってくると
ヤノベケンジのアート作品 SHIP’S CAT が迎えてくれます。
 
作品の周りにもベンチが設けられているので
ここでもゆったりと時間を過ごすことができます。
 
アートや都市の自然に親しむことができる
とてもゆとりのある空間になっています。
 
 
 
 
 
 
 
堂島川に面する側の手すりには10センチほどのカウンターがついていて
まちを眺めながらコーヒーで一服もできそうです。
 
隅々まで細かい配慮がされた、心地よいデザインです。
 
 
 
 
 
 
エントランスレベルには開放的な芝生広場が設けてあり
この日は週末のイベント用の設営がされていました。
 
川に面した芝生広場は美術館の付加価値として
まちとの親和性をとても高めています。
 
この場所は、美術館に来る人にもそうでない人にも開かれていて
都市の公共空間として、とても魅力的なデザインだと感じました。
 
 

中之島、まち並みの過去と現在

早朝の中之島と堂島川
 
大阪の中之島界隈を視察してきました。
次々に高層化が進む大阪の中心部のなかでも
都市の余白として、ゆとりを感じられる貴重な場所です。
 
 
 
 
 
 
 
日本銀行大阪支店
 
中之島には歴史ある建築がいくつか残っていて
現代の高層ビル群の中に威風堂々とした佇まいを見せています。
 
 
 
 
 
 
 
中之島公会堂
 
ネオ・ルネサンス様式を基調にした外観はとても表情豊かで
この建築があることによって中之島の個性が明確になっている気がします。
 
 
 
 
 
 
 
三井住友銀行大阪本店
 
大正末期から昭和初期にかけて建設された建物は
端正なプロポーションで抑制の効いたデザインですが、
外壁に使われた竜山石が重厚感のある端正な表情を見せています。
 
 
 
 
 
 
 
ダイビル本館の入口ファサード
 
1925年に建設された8階建てのダイビル、
ネオ・ロマネスクの美しいデザインで長く愛されてきましたが
平成の再開発で2013年に22階建ての高層ビルに建て替えられました。
 
様々な保存を望む声に応え
堂島川側の外観は、建替前の建材を再利用して忠実に再現されたそうです。
 
 
 
 
 
 
 
 
旧ダイビルの外観を再現した低層部分とセットバックしてそびえる高層部分
 
東京の歌舞伎座や中央郵便局などと同様のデザイン手法で
元の建物の外観を台座のようにしてその上に現代的なガラス張りの建築が載る形になっています。
 
 
 
 
 
 
 
 
中之島も再開発によって高層化が進み、まちの姿がどんどん変化してきましたが
そんな中に、この春、低層の新スポットがオープンしました。
 
周囲の高層ビルに挟まれるようにして建つ、漆黒のオブジェのような建築で
ぽっかりと空いた空がこの場に固有の磁場を生み出しています。
 
 
 

塩飽大工の技、吉田邸

塩飽大工の技が光る吉田邸
本島の笠島地区に残る築100年の住宅です。
 
中世から塩飽水軍は海運業とともに船大工の技量も高く
江戸時代以降、建築の大工技術へと引き継がれていきました。
吉田邸は、その塩飽大工が技術の粋を存分に生かしてつくった住宅です。
 
 
 
 
 
 
庭に面した開放的な座敷
 
正面には昇天する龍に見立てた松の木があり
開口によって象徴的に切り取られています。
 
 
 
 
 
 
 
庭に面した内縁の床板は長手方向に継ぎ目のない一枚物。
軒を支える軒桁も長さ12mの一本物で贅を尽くしています。
 
庭に面する開口部は柱間もかなり広くとっていますが
骨組の狂いもなく、今でもスムーズに建具が開け閉めできるそうで
塩飽大工の技術力の高さがわかります。
 
 
 
 
 
 
付書院の障子もとても繊細な組子で、指物師の技術の高さも目を引きます。
 
 
 
 
 
 
座敷の欄間には一つ一つ形の違う刀の鍔が千鳥に埋め込まれていて
ここにも趣向を凝らした大工の技が見て取れます。
 
 
 
 
 
 
トイレの便器はなんと染付の焼き物製です。
足を置く場所も陶器でつくられ、床は白黒の市松模様にデザインするなど
隅から隅までこだわり抜いています。
 
現在は人口280人ほどの静かな島ですが
塩飽大工の技が息づく吉田邸は
この島が栄えた時代の姿を今に伝えてくれます。
 
 
 
 

岡山芸術交流2

金色の鈴を束ねた長さ10mの作品
 
オリエント美術館に展示されたオブジェは床から数ミリ離れていて
上から吊るされていることに気づきます。
 
改めて研ぎ澄まされた繊細さを感じます。
 
 
 
 
 
 
見上げるとこの美術館の中央を貫く吹抜け空間の中心に合わせてあり
重厚なコンクリートの空間と繊細な金属の鈴が一体となった空間になっています。
 
 
 
 
 
 
美術館の2階から吹抜けを見たところ
 
岡田新一の設計による美術館は古代オリエント美術を展示しており
外部とは遮断された閉鎖性の高い建築空間です。
 
中央の吹抜け空間は幾何学的な洞窟のような空間に
天窓からの光が表情豊かな陰影を作り出しており
改めて、並々ならぬ情熱をかけてデザインしたことがわかります。
 
 
 
 
 
 
後楽園の観騎亭
江戸時代、藩主がこの場所で家臣の乗馬の上達ぶりを眺めたそうです。
 
日頃は非公開ですが、今回の芸術祭の会場として
建物も公開されていました。
 
 
 
 
 
 
寄棟の小屋組が現しになった天井の下は実に開放的な空間で
内外がつながる日本建築特有のとても気持ちのいい空間です。
 
 
 
 
 
 
作品は機械じかけで円状に砂紋が描かれるもので
小さなモーター音と砂を引きずる音がたえず繰り返し
時間の永遠性と形の一過性が同時に感じられます。
 
 
 
 
 
 
後楽園に来たなら、やはり流店を見ないわけにはいきません。
旭川から引いた水は巧みにデザインされた水路によって
この建物の内外を巡っています。
 
 
 
 
 
 
建物の中を貫く水の流れと飛び石
 
作られた時代は古いものの、空間デザインは実に独創的で
その斬新さは現代アートに引けを取りません。
 
 
 
 
 
 
 
外観も驚くほどの軽やかさです。
特に1階はほとんど壁のない透ける空間で
デザインの面でもとても刺激になる建築です。
 
 
 
 
 
 
 
よく手入れされた庭園と秋の空
 
アートと自然はとても相性が良く
日常ではなかなか味わうことのできない心地よい時間を与えてくれます。
 
 

素材と造形の味わい

動物を形どった古代遺跡の遺品のような・・・
 
でもこれはれっきとした道具なんです。
KATACHI museumには世界中から古今東西の道具類が集められています。
 
タイで使われていたココナッツ削り器だそうですが
角か牙のある牛を表現したようなアートにも見えてきます。
 
 
 
 
 
 
こちらは三本足で踏ん張る怪獣のようにも見えましたが
18世紀にフランスで使われていたパン焼きグリルだそうです。
 
 
足や爪のようなフック状の形には手仕事の素朴さもあり
人間が作り出した道具としての創造性とともに温かみが感じられます。
 
 
 
 
 
これは何でしょう?
 
まるで謎解きのようですが、
実は私もなんだったか忘れてしまいました(笑)
 
でも、あえて謎解きできなくても
木と鉄で構成された形自体に得も言われぬ味わいがあります。
 
それは建築にも通ずるところがあって
機能や実用性を超えて存在する、素材と造形の味わいのようなものです。
 
 

KATACHI museum

内田鋼一さんプロデュースによるKATACHI museum
 
数々の商業施設でにぎわう敷地の中で
ここだけヨーロッパの片田舎の風景のような
静かで素朴な雰囲気をもつ外観が印象的です。
 
 
 
 
 
 
 
その外観をまとっているのがこの土壁です。
 
少し粗めに仕上げられた壁は、
時間の経過による風化が強く現れそうな質感です。
 
 
 
 
 
 
 
建物の妻側に設けられた小さな穴が入口です。
なにか、蔵に入っていくようなイメージを連想します。
 
 
 
 
 
 
穴に踏み込むと、右側に入口が現れます。
入口は木製の引戸で、扉それ自体が骨董品でできています。
 
 
 
 
 
 
 
受付を抜けて室内に入ってきたところ
ワンルームの室内全体に古い道具たちがちりばめられています。
 
これらは内田さんが世界各国を巡って集めてきたものたちで
すべて生活雑器ですが、機能を超えた芸術性があふれています。
 
次回は、これらの道具たちの魅力に迫ってみたいと思います。
 
 
 

日本最大の商業リゾートVISONへ

三重県和気町に7月20日オープンした商業リゾートVISON

敷地面積119ha、東京ドーム24個分という広大な敷地に
「癒・食・知」を軸にさまざまな体験が楽しめる施設が展開しています。
 
右手前に見える建物は日本最大級の産直市場、マルシェヴィソン
伊勢志摩や松阪の食材が食べられるバーベキューコーナーもあり
芝生の斜面は子供たちの格好の遊び場になっています。
 
 
 
 
 
 
建物は幾つかのゾーンに分かれて点在しています。
 
こちらはスウィーツヴィレッジといわれるゾーンにある
パティシエの辻口博啓氏が手がけるペーカリーカフェ
 
 
 
 
 
 
シンプルな切妻屋根の室内は天井の高いおおらかな空間
朝から続々とお客さんが訪れています。
 
 
 
 
 
 
こちらはサンセバスチャン通りと言われるエリア
 
スペインのサンセバスチャン市と連携したバルなどがあるとのことで
建物は軒下空間を持つ杉板張りの日本的なデザインです。
 
長屋状の建物にはD&DEPARTMENTやミナペルホネン、くるみの木など
知る人ぞ知るこだわりのお店が軒を並べています。
 
 
 
 
 
 
壁一面、土壁で仕上げられたKATACHI museum
陶芸家の内田鋼一さんがプロデュースしたミュージアムです。
 
内田さんには、この施設の構想時からお話を聞いていたので
せっかくの機会と思い、長野から足を伸ばしてやってきました。
 
商業施設でゆったりと楽しい時間を過ごすとともに
文化に触れることのできる貴重な施設でもあります。
 
 
 
 

御城番屋敷@松阪

旧松阪城内に残る御城番屋敷
 
まっすぐに延びる石畳の道、
両側には同じ高さで刈り揃えられた生垣が植えられています。
 
生垣の奥には江戸末期に建てられた藩士の組屋敷があり
現在でも、その子孫などが生活を営んでいるそうです。
 
個性的な形と長さを持つ生垣は、道と屋敷の公私を区切り
その高さ(約1.7m)によって屋敷のプライバシーを守るとともに
整然とした秩序と緑の潤いによって独自の景観美を生み出しています。
 
 
 
 
 
 
松阪城から見た御城番屋敷
 
長さ十二間半(約23m)の長屋が道を挟んで平行に建っていて
ここだけ江戸時代の秩序あるまち並みが残っています。
 
 
 
 
 
 
番屋敷と道路の間には端から端まで生垣が植えられて
建物・生垣と道路がワンセットになった空間が形成されています。
 
 
 
 
 
 
生垣には所々にスリットがあり
これがそれぞれの屋敷に入る入口になっています。
 
 
 
 
 
 
入口を正面から見たところ
 
生垣は道と屋敷を仕切るだけでなく
入口の門のような役割にもなっています。
 
 
 
 
 
 
 
番屋敷の特徴である生垣は、周辺の家々にも生かされており
このあたり一帯、整った緑の景観が連続して
歩いていてもとても気持ちのいい通りです。
 
 
 
 
 
 
こちらは生垣ではないですが
鉢植えの緑が道路一面に置かれています。
 
樹木や植栽は常に手入れが必要で
忙しい現代ではとかく敬遠されがちですが
手をかけてあげれば、家も引き立ち、まちにも潤いを与えてくれます。
 
潤いとともに、手間をかけることで自身の心も整えてくれる
緑のある暮らしがもつ効用を実感させてくれる
そんな松阪のまち並みです。