週末連載 台湾27

夜のとばりに怪しく光る牌坊(中国様式の門)
台北の最も古い町、萬華地区にある貴陽街の入口です。
 
この先にある華西街夜市を目指してホテルから歩いてきましたが
あたりはすっかり暗くなって少々心細くなりますが、
まるで「千と千尋の神隠し」の世界に引き込まれるように奥へと進みます。
 
 
 
 
門をくぐってすぐのところにある艋舺青山宮
こちらも台北では歴史のある道教の寺院、
夜遅くまで開放されていて、まるで祭りの縁日のような雰囲気です。
 
 
 
 
再びうす暗い道を進むと見えてきた「華西街夜市」の看板
さらにその先にも明かりのついた門が見えます。
 
暗さのなかに浮かび上がるまちは、まるでチャイニーズマジック、
なぜか奥へ奥へ引き込まれてしまう、
夢の中に迷い込んでしまったような不思議な時空間です。
 
 
 
 
ここまでくるとようやく人の賑わいが感じられます。
この先はアーケードになっていて、迷宮の核心に近づいてきた感じがします。
 
 
 
 
大通りをはさんでさらに奥へつづく夜市
 
 
 
アーケードを抜け、さらにつづく夜市
こちらには服や雑貨、土産物などがあふれていて
さっきの薄暗い静けさが嘘のような賑わいです。
 
 
 
 
歩き疲れて腹が空いたところで一服することに
屋台も盛況です。
 
 
 
 
今宵の食事、台湾ビールとともに
このままこの迷宮で陶酔していくのでした。
 
 
 

虹ケ浜の家、古い部材について

 

虹ケ浜の家で使う階段板
解体した古い家で使われていた松板を加工し、
新しい階段の寸法に合わせて調整し、再利用します。
 
ここのところ、古いものを生かして次の時代につないでいく仕事が増えていますが
このプロジェクトでは、古い部材を新しい家にアレンジして、
そこに暮らす人にとっての「愛着」という価値を加えていきます。
 
 
 
 
 
こちらは古い家の内縁の欄間に使われていたガラス建具
 
丸太桁に合わせて高さが調整されていたので
1枚1枚高さ寸法が違うので扱いにくい部材ですが、廃棄してしまうのはなんとも忍びない。
なんとか工夫して生かしていきます。
 
 
 
 
 
中桟のディテール
使われている材の質が良く、中桟の細工、表情も素晴らしい。
 
経済的でシンプルなデザインが主流になる中で
この手間のかけ方はなかなか貴重です。
 
新しい家と古い部材、新しいデザインと古い表情、
これらの間合いを調整しながら、調和した空間づくりの検討を進めます。
 
 

曳家工事見学

 

常盤公園での古民家の曳家工事
 
櫛ケ浜の家で家上げ工事を行う大工さんの現場を見学してきました。
敷地の南側(写真奥)に建っていた建屋を北側の新しい基礎のところまで曳家し、
南側に庭を整備するというプロジェクトです。
 
 
 
 
井桁を組み上げてレベル調整された上にレールを敷き
丸パイプをかませて転がしていくという方法です。
 
敷地にはかなりの高低差、そして建屋は老朽化して歪んでいるのですが
これを臨機応変にレベル調整して水平を出しています。
 
 
 
 
井桁足場のディテール
定型の既成部材は一切なし、どこにでもある角材を組み合わせています。
配管を外した状態の便器もそのままで移動されていきます。
 
 
 
 
引っ張っているのは手前に見えるウィンチひとつ。
この小さな動力以外はすべて手作業というのですから大したものです。
まさに経験と勘のなせるスゴ技です。
 
この古民家、老朽化で雨漏りや土台の腐朽、建屋の歪みなど
普通であれば、解体、廃棄されてもおかしくない状態ですが
優れた大工技術を伴えば再生できるのだ、ということに的を得た思いです。
 
もちろん、建て替えたほうが経済的かもしれませんが
往時の木組や年月の経った風格を残せるのなら、
新築よりも多くの価値を持って長生きできるわけです。
 
長期的な視点で考えれば、むしろこちらのほうが経済的で、かつ地球にも優しい。
建物の価値を考えるスパンを捉え直す、画期的な工事を見た思いです。
 
 

櫛ケ浜の家、解体工事スタート

 

櫛ケ浜の家、
昨年いっぱい設計とコスト調整を行っていましたが
築95年の町家再生へ向け、いよいよ工事がスタートしました。
 
奥の母屋とその後に増築された下屋部分(写真手前)、
まずはこの下屋を解体していきます。
 
 
 
 
母屋(左)と下屋を切り離したところ。
 
 
 
 
反対側から見たところ
坪庭に植えられていたマキの木は保存し、新しい中庭に活かします。
 
 
 
 
下屋を解体したところ
元々の母屋の立面が現れました。
 
このあと、下屋の基礎を除去、整地し、
手前部分の新たな増築へ向け準備が進みます。
 
 
 

週末連載 台湾26

 

台北の地下鉄MRT、台大醫院駅
 
駅のホームは改札のフロアの一つ下、
改札からまっすぐ進んでエスカレーターを降りていきます。
 
空間的には、改札の階とつながる吹抜けになっていて
地下鉄のもつ圧迫感がなく、地下なのにとても開放的です。
 
 
 
 
ホームには危険防止のホームドアが完備され、デザインもとてもスマート。
安全とデザインを上手にバランスさせています。
 
ある意味、日本をお手本に成長してきたアジアの国々、
様々なところに日本が手本にしたいような「快さ」を生み出しています。
 

 

河東の家、工事終盤

 

ストリップ階段、ほぼ形が整いました。

模型の段階では踊り場はボックス状の閉鎖形でしたが、
最終的にすべてストリップにして軽快さを強調しました。
 
手前と奥に分かれていた2つの空間は、階段によりゆるやかに分かれつつ、
小さいながらもそれぞれに広がりと気配の感じ取れる空間になりました。
 
 
 
 
こちらは塗装下地のパテ処理
 
耐震補強の関係で下地が構造用合板になったため
表面の凹凸を目立たせないように徹底的にパテ処理されています。
 
塗料を塗ると隠れてしまう地道な作業ですが、
その手間のかかり様といい、頭の下がる塗装屋さんの仕事ぶりです。

 

2017.1.19 設計事務所 TIME 

 

週末連載 台湾25

 

永康街の繁華街を抜けた路地裏、
落ち着いた佇まいの中に、さりげなく家々の緑が潤いをつくっています。

 

 

門前を彩る植栽
 
南フランスでもそうでしたが、
家々がその個性を示しながら街並みと関わっています。

 

 

以前に触れた集合住宅のバルコニー
こちらも、格子と緑が優しい風景を作っています。
 

物干し場と化した日本のマンションにはない、公共のスピリットを感じる風景です。

 

2017.1.14 設計事務所 TIME

 

平和な建築

あけましておめでとうございます。

昨年12月にNHKのドキュメント72時間という番組で沖縄のウチナーンチュ大会を特集していました。そのなかで、ブラジルから来た二人の若者が歌を口ずさむシーンがありました。ささやくようなそのハーモニーは、歌で争いを解決したいと願う若者の思いがにじみでる平和で清らかなものでした。

世の中には良いこともそうでないこともたくさんありますが、そんななかで、あの歌声はとても心に響きました。

あの歌声のような安らかな空間であるアンリ・マティスのロザリオ礼拝堂、私が目指す平和な空間、平和な建築です。あの歌声から、改めて平和な建築への歩みを進めたいと素直に思った年の始めです。

本年もどうぞよろしくお願いします。

 

2017.1.4 設計事務所 TIME