人がつくった聖域2

空に向かって伸びる常緑広葉樹と落葉広葉樹
 
明治神宮の参道
その参道を包み込むように大樹が広がっています。
 
太古の昔から存在する原生林のような迫力がありますが
実は、この杜は大正時代に人の手によって生み出されたものです。
 
 
 
 
 
参道沿いの案内書きによると
ここは江戸時代には加藤家と井伊家の庭園があった場所で
明治時代に皇室の料地になりました。
 
しかし、その後、明治の終わりには荒地となっていましたが
明治神宮の造営にあたり、豊かな杜をつくることが計画されたのです。
 
計画を担った本多静六、本郷高徳、上原敬二らの専門家は
人の手によらない「永遠の杜」を実現することをめざしました。
 
それは、
成長の早い針葉樹がまず育ち、その後は徐々に広葉樹に置き換わり
150年かけて人の手を離れて自然に循環していくという
自然の摂理を尊重した遠大な計画でした。
 
全国から10万本の樹木が奉納され、
植林や参道づくりにはのべ11万人の青年が勤労奉仕を行ったそうです。
(以上、明治神宮の公式サイト、およびNHKスペシャルより)
 
 
 
 
 
現在の参道脇には、朽ち果てた倒木の脇から新芽が芽吹いており
確かに自然の循環が行われていることがわかります。
 
環境問題への関心が高まる中、
目先の成果だけにとらわれず、時間がかかっても自然の持続性を尊重する
この神宮の杜の営みは多くの示唆を与えてくれます。
 
 
 
 
 
早朝の参道では、「はきやさん」とよばれる職人が
長い柄のほうきを巧みに使って、参道をきれいにしていました。
 
ここで集められた落ち葉は、再び杜に返されて
杜の循環に生かされるのです。
 
100年の時を経て、人の手を離れて循環し始めた杜は、
わずかに人の手を借りながら自然のもつ豊かさを持続させていきます。
 
自分が目にすることのできない150年後の計画をつくった専門家たち、
そして樹木を奉納し、労働を捧げた、たくさんの人々。
 
そこにうかがえる「利他のこころ」が
この聖域の精神性にあらわれているような気がしてなりません。
 
 
 

人がつくった聖域

4月に訪れた明治神宮
 
若い頃からなぜか神社や寺院に惹かれ、
仕事で休みが取れると、よく京都や奈良に出かけていました。
 
特に古いから好きというわけでもないのですが
俗世間にはない聖なる場所のもつ精神性に惹かれたのでしょう。
海外でも教会やモスクへはよく足を運び、同様の感覚を覚えてきました。
 
明治神宮は今回が初めての参拝で、自然とこころが引き締まります。
原宿駅側の入口からちょうど工事中だった鳥居の脇道を抜けて
見えてきたのがこの南参道です。
 
原宿の賑やかなまち並みからわずか数分足らずでこの景色に一変、
早朝の境内は空気が澄みわたり、まさに聖なる世界へタイムスリップ。
 
おおらかにのびる参道は真っ直ぐではなく、ゆったりとカーブを描き
途中にある橋へ向かってゆるやかに下り、そこからまた上っていきます。
両側には参道を覆うように大きな樹々が空間を包み込んでいます。
 
ここには人工的なものはほとんど見当たりません。
あるのはただただ広々とした道と樹々と空だけ。
 
なのに、とても品があって、こころが静かに洗われていくようです。
 
 明治神宮は、大正9年(1920年)に人の手によってつくられた
比較的新しい神社です。
 
しかし、それはむしろ「人の手」というより
「人のこころ」によって生み出されたものなのかもしれません。
 
人がつくったこの聖域は、いかなる思いで生み出されたのか
次回、改めて探ってみたいと思います。
 
 
 
 
 

宇部の家 内装デザイン検討

宇部の家のリノベーション計画、内装デザインの検討中です。
 
既存LDKの天井を取り払い、小屋梁を露出した状態をパースでチェック。
 
天井裏の詳細はまだ正確につかめないので
ひとまずわかる範囲で小屋組を入れて雰囲気をチェックしていきます。
 
この図はキッチンからダイニングを通してリビング方向を見たところ。
その先のプレイルームを抜けて中庭のウッドデッキまで視線が延びていきます。
 
 
 
 
 
リビングからキッチンを見返した図
 
既存のキッチンを大幅にリニューアル、
耐震壁を考慮しつつ、屋外の畑や木々へ視線が抜けるよう
吊戸棚はあえて割愛し、新たに大きな窓を設けています。
 
キッチンやリビングに必要な備品、子供のワークスペースなど
必要な機能や収納スペースを建主と検討しながらアレンジしていきます。
 
 
 
 
 
 
既存の和室と中庭
 
リビングに隣接する和室(画像奥の部屋)は間仕切りを取り去り
プレイルーム的なスペースへ変換。
 
二間続きだった手前の和室はそのまま残し、
内縁から続く中庭にウッドデッキをめぐらして
和室からの広がりと中庭周りの部屋との回遊性を高める計画です。
 
リノベーションでは予算の制約が大きい場合が多いのですが
それに反するように、改善したいことは沢山あります。
 
 
ご要望が増えれば、その分予算とのギャップが大きくなるため
工事範囲やデザインとコストのバランスを図るのは結構大変です。
 
建主にはその点をご理解いただきながら
打合せを何度も重ねて、ご要望を形にしながら落としどころを探っていきます。