深い軒がつくる陰影と木枠のあかり窓 雪深い高山では、雪が滑り落ちないよう屋根を緩い勾配とし、軒を深くして足元を雪から守るという、この地固有の建築形態が見られます。木部には煤(すす)を混ぜたベンガラが塗られ、モノトーンながらとても美しい表情です。
漆黒の建物のなかに際立つ白く塗られた梁の木口 まるで紋付袴の着物のような引き締まった品格が感じられます。色も素材も形さえも自由自在に選択して表現できる今の時代にあって、ストイックに伝統的なデザインを守り続けている、その精神がなんともクールです。
深い軒がつくる陰影と木枠のあかり窓 雪深い高山では、雪が滑り落ちないよう屋根を緩い勾配とし、軒を深くして足元を雪から守るという、この地固有の建築形態が見られます。木部には煤(すす)を混ぜたベンガラが塗られ、モノトーンながらとても美しい表情です。
漆黒の建物のなかに際立つ白く塗られた梁の木口 まるで紋付袴の着物のような引き締まった品格が感じられます。色も素材も形さえも自由自在に選択して表現できる今の時代にあって、ストイックに伝統的なデザインを守り続けている、その精神がなんともクールです。
通り沿いに置かれた緑の鉢植え それぞれの家の前に置かれた鉢植えは手入れが行き届き、潤いのある気持ちのいい通りが形成されています。
まち並みというのは、みんなでつくるもの。 決して一人だけの力で生み出せるものではありません。
そこにくらす人々が美意識を共有し、日々の手入れを怠らずに継続することで成り立つもの。その協調と努力の積み重ねの総和がかけがえのない風景となって現れます。それは、単体の建築とは違う、価値の重みがあります。
ちなみにこちらは、2007年に訪れた南フランスのアンティーブ旧市街。石造りの古い建物が連なる細い路地には、高山と同様に、それぞれの家ごとに緑が配されて心地よい雰囲気を提供しています。
歴史や文化は違えど、美しく心地よいまち並みには、共通のエッセンスが感じられます。
早朝の高山旧市街
日中は観光客でにぎわうこの界隈に朝の静けさが漂います。 通りの奥まで連なる町並みは、路地も含めた空間全体がひとつの工芸品のようです。ひとつひとつの町家の美しさだけでなく、通り全体で生み出された調和が日本有数の町並みを形作っています。
個と全体の調和、貫かれた美意識、その美意識を維持していくことの大変さも含めて、経済に流されず、かつ経済との両立を実行しているこの町並みが現代の日本にあることに希望を感じます。
高山市の市街地を南北に流れる宮川
日の出前の川沿いは、猛暑の中でもとても静かで涼しげです。 しっとりと落着いた風情の高山旧市街を少しずつレポートしていきます。
見事なそり具合、まるで日本刀のようなシャープかつ優美な曲線が美しい。 国宝 瑠璃光寺五重塔の屋根改修工事の見学会に行ってきました。70年ぶりとなる令和の大改修では、主に傷んだ屋根の檜皮葺きを葺き替えます。
葺替え前の屋根の写真 茶色い屋根に白く毛羽立ったように見えるのは、檜皮を留めていた竹釘です。檜皮は、樹齢70年以上の生きたヒノキの表面にある樹皮を剥ぎ取ったものでとても貴重なもの。檜皮葺きの寿命は本来25〜30年とのことなので、すでに耐用年数をかなり過ぎており、写真のような状況になるのも無理はありません。
葺替えが終わった最上層の屋根 優美なそりを見せる3次曲面は、自然のままの檜皮を数十万枚重ね合わせ、人間の手仕事によって作り出したものです。
葺替えられた屋根を近くから見たところ。 ランダムにうねる檜皮の表面はまるでざらついた動物の皮膚のようですが、一枚一枚の重ねしろは4分(約12ミリ)にそろえられており、一つの大きな屋根としてみたときにはとてもなめらかで美しい表情となるのです。
ひとつとして同じものがない自然物である樹皮を巧みに組み合わせ、全体として美しい屋根を生み出す、途方もないような匠の技です。それは、最先端のデジタル技術でもなし得ない、自然と人間の協奏曲です。
日本人の培ってきた美意識と技術の奥深さを目の当たりにして、身震いがする思いです。
大分の臼杵の家が完成して、この秋で3年になります。
最近、猫2匹が家族に加わり、猫用のステップとともに、元々飼っているゴールデンレトリバーの段差昇降用にステップをつけるご相談をいただきました。
現在、猫や犬などを飼っている世帯は日本全体の25%あるとの統計もあり、人と動物が共に暮らすというライフスタイルが当たり前の時代になりました。一方で、農業が主体だった時代には、家の一部に家畜小屋が一体化していたこともあり、必ずしも特別なことでもないのかもしれません。建築的には、岩手の曲がり屋など、ひとつの様式になっているものもありました。
ということで、新たな時代の同居のあり方をイメージしつつ、人も動物も生き生きと暮らせる場を検討中です。
写真はお施主さんから送っていただいたお店の入り口部分ですが、どこか日本離れしていて、ナポリやシシリアの旧市街を想起してしまいました。
経年変化が進みつつある銅板の引戸や杉板の風情がなんとも渋い。 いや、すでに渋すぎです!
設計当初から経年変化を楽しみたいと言われていたお施主さんのご希望だった姿が少しずつ立ち現れていて、今後の変化がまた楽しみです。