自然とともにある

禅林寺(永観堂)、総門をくぐり、中門への参道
東山を背景に、新緑のカエデがとても鮮やかです。
 
それにしても広々としたアプローチで
緑あふれるこの空間がとても清々しい気持ちにしてくれます。
 
 
 
 
玄関を抜けると緑あふれる中庭が現れます。
 
これは人の手によって生み出されたいわば「擬似自然」
しかし、その風景は限りなく本物に近く、作為が薄められています。
 
 
 
 
 
 
中庭へ大きく開いた釈迦堂の深い軒と縁側。
 
古来から日本人は生活のそばに自然を引き寄せて暮らしてきました。
そして、ただ単に自然に寄り添うだけでなく、
様々な手を加えて生活文化にまで引き上げてきたのです。
 
日本人が脈々と築いてきた自然とともにあるくらし、
忙しいこの時代だからこそ、その豊かさが深く感じられます。
 
 
 

虹ケ浜の家、断熱工事

虹ケ浜の家では屋根工事が終わり、室内の断熱工事が進んでいます。
 
屋根断熱に使用しているのは高性能のポリスチレンフォーム。
屋根一面を隙間なく覆い、この上に通気層をとることで
暑い夏の屋根の照りをかなり抑えることができるのです。
 
 
 
 
 
断熱材の端部が屋根の勾配に合わせて斜めにカットされ
木と木の間にぴったりとはまるように工夫されています。
 
 
 
 
屋根通気のための通気面戸(銀色に見えるメッシュ状の部分)
 
ここから空気を取り入れ、屋根の棟部分から空気を排出。
自然の重力換気により、夏でも過ごしやすい環境をつくります。
 
 

法然院 参道

法然院、参道入口
 
京都東山の麓に位置する法然院
その参道のデザインは今見てもとても洗練されており、かつ独創的。
俗世界から聖域に導くアプローチの妙を味わうことができるのです。
 
 
 
 
石段は自然石を乱形に敷き詰め、御影石の延石で縁を引き締めています。
リズミカルなパターンは、まるで静かな沢の流れのようで、
俗世の乱れた心を洗い落としてくれるているようです。
 
 
 
 
 
石段を上がるとその先には静かな木立が広がるのみ。
そこにあるのは「無」、ただただ静けさのみが漂います。
 
参道はここで左に折れ、場面が転換、
はやる気持ちを落ち着かせているように長い長い参道を歩かせます。
 
 
 
 
 
左に折れた参道はしばらく木立の中をまっすぐ進みます。
自然の山の斜面を切り裂くように挿入された幾何学的な造形、
静けさの中にも強い意志を感じます。
 
参道の先には再び石段があり、第二の場面転換が行われます。
高低差と角度を振ることで、世界が変わることを強く印象付けています。
 
 
 
 
 
その石段から参道を見返したところ。
矩折りの参道と緩く幅広い石段、調和と対比が見事にバランスしています。
 
 
 
 
 
階段をのぼると、正面に山門が見えてきます。
ぽっかりと四角に開いた山門が風景の焦点をつくり
アプローチのクライマックスを見事に演出しています。
 
参道はここから一直線に山門へ向かい、床の仕上げも砂利敷きに変わっています。
踏みしめる音が加わることで、聖域に向かうことをさらに意識させます。
 
高低差を利用した巧みな場面転換で長いアプローチに抑揚を与え
抑制されたデザインながら、しっかりとした意図が感んじられる空間です。
 
 
 

櫛ヶ浜の家、配筋検査

櫛ヶ浜の家、鉄筋工事が終わり、配筋検査を行いました。
 
 
 
 
 
今回もグリーンデザインオフィスの岩田さんにチェックをお願いしました。
まずは仕様書通りに施工されているかを確認。
 
 
 
 
電子ノギスで鉄筋の太さも正確に測っています。
 
 
 
 
地中梁の寸法やかぶり厚、フックの角度など、ひとつひとつをチェック。
1箇所、主筋が足りていない箇所があり、是正を指示。
 
 
 
 
 
 
耐力壁下部のアンカーボルト
御影石の長石を貫通してアンカーしてあります。
 
 
 
 
外周部の耐力壁のためのアンカーボルトの施工状況。
人ひとりがなんとか入れるほどの狭い隣地との隙間で
かなり面倒な仕事ですが、きちんと施工されています。
 
 
 
 
新たに柱の足元が傷んでいるのがわかり、
この部分も根継ぎすることになりました。
 
 
手間も時間もかかる仕事ばかりで
普通のリフォーム会社なら根を上げそうですが
百戦錬磨のプロ集団は動じることなく、仕事をこなしていきます。
 
 

四君子苑

京都の鴨川沿いに位置する四君子苑。(写真奥、赤レンガ調の建物は北村美術館)
 
昭和の数寄者、北村謹次郎の旧邸と茶苑、そして庭園からなる数寄屋建築の至宝です。
建築を手がけたのは、数寄屋の名棟梁、北村捨次郎
本宅は戦後、進駐軍によって一時接収されましたが
昭和38年、近代数寄屋建築の第一人者、吉田五十八設計によって建て替えられました。
 
 
 
 
 
西向きの表門は軒が低く、ひっそりとした表情です。
道路との間に設けた駒寄せ(木の柵)の格子は間が大きく、高さも低め。
門や塀の高さとのバランスがよく、さりげなく結界をつくっています。
 
この駒寄せがあることで道路との間(ま)を引き締めて、
小さな空間に緊張感と奥行きを生み出しています。
 
 
 
 
土間に配された飛び石。
自然石のかたち、大きさ、色、構成、すべてにクオリティが溢れています。
 
 
 
 
 
入口扉のコンポジション。
上下に杉の中杢、その間に入れた竹格子が洒落てます。
 
 
 
 
左脇の中潜り。
正面大扉より小ぶりに抑え、簡素な表情に徹しています。
 
 
 
 
簡素なデザインながら、真ん中に3本の切込みが入れてあります。
繊細に仕上げたその細工が、節のある丸太の粗野な枠材と対比をなしています。
 
 
 
 
 
右脇壁の照明器具。
両脇を台形にして厚みを減らし
竪格子を入れることでさらに涼しい表情にまとめられています。
 
 
 
 
軒裏は白竹の簀の子貼り、わざと目地から泥土をはみ出させたのも
北村の好みだそうで、細部にわたって心が配られ、趣向があふれています。
 
表門だけでもこれだけのクオリティに満ちているのだから
中はどれだけすごいのだろうと、否が応でも期待が膨らみます。
 
 
 
 
この門をくぐるとめくるめく数寄屋のワンダーランドが待っています。
しかし、写真撮影はご法度なので、残念ながらレポートはここまでです。
 
天下の銘木をふんだんに使い、当代気鋭の大工と建築家、そして庭師が手がけた名作を
何度も何度もため息が出る思いで味わいました。
 
四君子苑は毎年、春と秋に特別公開されています。
あなたも、次の機会に是非、堪能してみてください。
 
北村美術館HP
四君子苑
 
 

徳山高専、建築デザイン概論

 
徳山高専での建築デザイン概論、
学生たちにデザインで考慮すべきポイントを挙げてもらいました。
 
「立地条件」や「日当たり」といった敷地を取り巻く前提条件や
「住みやすさ」や「居ごこち」などの居住性、
「耐久性」や「耐震性」などの安全性や性能など様々なポイントが出てきました。
 
我々実務者にとって常に悩みの種である「費用」も挙げられています。
また、「甘さ」や「マイルド」など、建築の持つイメージについて言及するものもありました。
 
建築は限られた予算と与えられた敷地条件の中で
いかに安全で快適であり、そしてある共感の生まれるものを創造するという
特別な仕事であることを学びました。
 
 

新緑の京都

南禅寺近くの無鄰菴。
庭の新緑と流水、そして東山が一体になった美しい風景です。
 
新緑の季節を迎えた京都、
今回は特別公開の四君子苑や美しい庭をもつ建築を視察してきました。
 
 
庭と建築をめぐる新たな気づきやその成り立ちについて
今後、少しずつ紹介していく予定です。
 
 
 

デザインとは?

徳山高専で建築デザイン概論の授業を担当することになりました。
最初のテーマは「建築デザインの基礎知識」ということで、
まずは本質を探るべく、デザインとは一体なにものか、について考えます。
学生たちの反応はいかに?
 

 

櫛ヶ浜の家、家揚げ工事2

基礎の根切(土の掘削)工事が進んでいます。
 
昨日は耐震補強設計をお願いしたグリーンデザインオフィスの岩田さんに
現場をチェックしていただきました。
 
今回の耐震補強設計では表層地盤の状態を調査した上で
地盤の固有周期に沿った上部構造の補強設計を行っています。
地震時には、地盤の状態によって大幅に建物の揺れが増幅される可能性があるため
そのリスクをチェックした上での設計が為されています。
 
4/9に放送されたNHKスペシャル「大地震 あなたの家はどうなる? 
〜”見えてきた地盤リスク”〜」でも詳しく放送されています。
これについても改めてブログで紹介する予定です。
 
 
 
 
 
さて、工事の方はというと
家が建った状態での基礎工事なので、掘削も人力なんです。
手間も時間も(そしてコスト)もかかる大仕事です。
 
 
 
 
掘った土はベルトコンベヤで外に待機するダンプに運ばれていきます。
 
 
 
 
建物外周部の状況。
布基礎のような役目をしていた長石が地面から切り離されています。
 
 
 
 
中央の柱の基礎もジャッキ4つで持ち上げています。
 
 
 
 
家にくっついていた造付収納も一緒に浮いています。
 
 
 
 
土台と長石の下が空いていて、建物が宙に浮いた状態です。
このあとさらに掘削を進め、家全体をジャッキアップして
鉄筋工事に移っていく予定です。
 
 
 
 
 

中央町の家、一年検査

下松の中央町の家で一年検査を行いました。
昨年の春にお引渡しをして一年が経ちますが
新築かと思うほど、とても丁寧に使っていただいています。
 
変わったのは、最初は少し赤味が強かった床の色が落ち着いてきたところ、
そして、家具や雑貨が入って雰囲気がアップしています。
 
 
 
 
リビングに続くこちらの部屋もとても有効だそうで
空間の広がりとくつろぎに貢献しています。
 
天井の梁が痩せて壁に隙間ができたのでシールで穴埋めをして検査は終了。
お好みの家具や雑貨に囲まれて心地よい暮らしをされているとのことで
これからも家族の大切な時間を紡いでいってほしいと思います。。