大神の家2、工事開始

昨年から進めてきた設計と見積調整を経て、工事が始まりました。
川に沿う土地からは対岸の段々畑や緑へと視界が広がり
南の方角には新南陽のまちが遠望できるロケーションです。
 
 
 
 
 
 
 
底盤の配筋工事が終わり、瑕疵保険の検査が行われました。
 
 
 
 
立上り部分の主筋はフック付で、かぶり厚さも良好です。
 
 
 
 
 
一方、底盤の鉄筋はスペーサーが一部めり込んで
かぶり厚が不足していたため、修正を指示しました。
 
 
 
 
 
かぶり厚さを修正し、コンクリート打設。
引き続き、基礎立上り部分の工事が続きます。
 
 

何気ない風景@梅田

大阪駅前から望む早朝の梅田スカイビル
京都駅でも有名な原広司の設計です。
 
著作「機能から様相へ」で論じた均質空間へ対する批判的思考を
この巨大なビルにも表現しようと試みたことが
朝焼けの景色が写し込まれた姿から感じられます。
 
それでも、巨大なガラス張りの均質な壁という存在感はやはり強く
現代へ変化する過渡期の時代状況が伺えます。
 
 
 
 
 
 
ビルの足元まで近づいてみると、思わぬ風景が!
 
均質で硬質なビルのよそよそしさが
足元に群がる中低層のビル群によって見事にかき乱されています。
 
まるで、上手に仕上げられた絵画に子供が落書きをしたように
よそよそしさが無邪気な雰囲気に変わります。
 
美と醜の定義や境界については過去にも何度か触れてきましたが
その概念以上に、まちの体温のような部分でこの風景は興味深いです。
 
 
 
 
 
 
「落書き」つながりでもう一つ
梅田スカイビル界隈の路上に書かれた配管工事のための記号たち。
文字や線が入り乱れ、専門業者でなければ落書きにしか見えません。
 
現在、梅田北エリアで進んでいる大規模開発に伴う工事なのかもしれません。
 
美しいとはとても言えないこの風景はまちが進化する活力を表していますが
一方で、ラーメンの赤提灯などが一掃されて
よそよそしい風景に変わってしまうのだろうかと、ちょっと不安にもなります。
 
世の中は真新しいものやきれいごとだけでできているわけではありません。
美醜を超えて、時代時代の様々な歴史が重なっていたり
表通り以外に路地裏や横丁的な多様な場によって深い奥行きが生まれます。
 
巨大な開発がまちの体温までも奪ってしまうことにならないことを
願うばかりです。
 
 
 
 
 
工事中の仮囲いに看板が掲げられていました。
大阪駅前の貨物ヤード跡地を活用した9万平米あまりに及ぶ巨大開発です。
(詳しくはこちら https://umekita2.jp
 
オフィスやホテル、商業施設などに加え、
東京ドーム1個分の都市公園が大都市大阪のど真ん中に生まれる予定です。
 
看板の絵にあるような緑豊かな潤いのある場所ができると思うと
とてもワクワクします。
 
ただ、懸念がないわけでもありません。
日本の都市公園には管理する側の息苦しさが常に漂っていて
パリやニューヨークにある公園のような
人間味や自由でのびのびとした雰囲気が生まれにくいのが難点です。
 
願わくば
この都市公園が、管理されたよそよそしい場所ではなく
大阪らしい人間臭さを包み込めるような、寛容な場になることを期待します。
 
 

臼杵の家、耐震調査と完了検査

 

臼杵の家では、建物の工事がほぼ終了し、
改めて完成後の耐震性能を常時微動計測機によって調査しました。
 
中庭をはさんだ2棟とも結果は良好で
地盤との共振に対しても安全であることが確認できました。

 

 

 

翌日には、検査機関による完了検査が行われました。
ダイニング側はまだ美装前で養生が残っていますが
建主こだわりの照明器具が入って、とてもよい雰囲気です。
 
 
 
 
 
 
リビングルームは養生もとれて、綺麗に仕上がっています。
引き渡しに向けて、これから最後の仕上げを進めていきます。
 
 
 

宇部の家、現況・劣化調査

宇部の家では、リノベーションに伴い耐震改修することが決まり
今回もグリーンデザインオフィスにお願いして
改めて現況の詳細について調査を行いました。
 
平面、高さ、各部材の寸法などの実測を行い
建物の歪みや部材の劣化状況、含水率など
丸一日かけて調べていただきました。
 
 
 
 
 
 
今回、また新たな秘密兵器が登場、
その名も「360度カメラ」
 
既存の建物にはかなりの情報量が詰まっていますが
図面が残っていない場合、それらをできるだけくまなく把握する必要があります。
しかし、限られた時間ですべての情報をチェックするのは大変で
また、見逃してしまう情報があった場合には再調査が必要になったりします。
 その手間を少しでも軽減してくれる頼れる武器として重宝しそうです。
 
 
 
 
 
 
一通り寸法を取り終えたところで
各部屋の床の傾きをチェックしていきます。
これによって建物の沈下状況を推定します。
 
 
 
 
 
 
これは柱の傾きを図っているところ。
各部屋の柱を測定したところ、予想以上に柱が傾いていることが判明。
土地の地形の影響もあり、家全体が同じ方向に歪んでいるようです。
 
 
 
 
 
 
床下も確認。
建築基準法ができる前の昭和初期の建設でもあり
柱は掘立て式ですが、どうもその後にレベル調整された痕跡があります。
 
これらの状況を総合的に検討した結果、
床下にジャッキを入れて、
家の傾きを修正していく方向で調整を進めることになりました。
 
 
 
 
 
 
構造の現場調査に合わせて、私は改修部分の現状をチェック。
写真は各部屋の床レベルの状況です。
 
右上の和室と左上の内縁は建設当時のままのようで敷居の高さ分の段差があり
手前中央の玄関ホールは、その後に改修されたようで、床レベルが異なります。
 
改修では、これらの部屋を一体化することを検討しており
床レベルの調整が必要になります。
 
その他にも、玄関や窓位置の変更など、
改修に伴って解決しなければならない検討事項をピックアップしていきました。
 
これらの情報の上に建主のご要望を重ね合わながら
この家にとっての最適解を探していきます。
 
 
 

ヘリテージマネージャー実践講座@旧山口電信局舎

ヘリテージマネージャー講座、
今年も座学と実測調査などでスキルアップを図ります。
今回は、山口市の旧山口電信局舎の実測調査を実施。
 
旧山口電信局舎は明治6年頃、
日本の近代化を進める流れの中で建設されました。
 
宝形屋根に下見張りの外壁、鎧戸のついた縦長の窓などで構成され
派手さはないですが、端正な洋館の佇まいを今に残しています。
 
この建物はすでに登録文化財に登録されていますが
関係者のご尽力もあり、売却に伴う解体の危機を逃れ
リノベーションを経て地域資産として再出発する計画があるそうです。
 
 
 
 
 
 
実測調査では当初の意匠を残す応接室から寸法を当たっていきます。
西洋では石を加工して作られることが多い窓枠ですが、こちらは木製で
西洋のオーダーを手本に職人が試行錯誤しながらアレンジしたことが伺えます。
 
 
 
 
 
 
応接室の隣接する和室
こちらはのちに住宅として使用する際に改修されたようで
オリジナルの姿とはかなり違うようです。
 
建物を残しながら住み継いでいくということは
このようなプロセスも現実としては十分あり得ることで
それ許容していくことも必要となります。
 
 
 
 
 
 
和室の外側は生活の都合か、それとも所有者の憧れゆえか
鎧戸から出窓(しかもアルミ既製品)に改変されています。
 
このような途中の改変をどう評価するかは
その時々に関わる人々の感性に委ねられますが
個人的には、建物の由来や歴史、意匠や素材の調和を考慮すると
アルミサッシュの形状と質感は調和という観点から違和感がるため
できるならオリジナルに戻していくことがベターではないかと思います。
 
 
 
 
 
 
当初の建物に増築された部分では
増築の接続部分からの雨漏りが確認されます。
 
建物を後付けする際には、丁寧にデザインと施工をしないと
長く使っていく上では、このようなリスクが発生します。
 
 
 
 
 
 
屋根からの浸水によって床下の湿度が上がり
隣室のたたみにまで影響が出ているようです。
 
木造の建物にとって、雨漏りやシロアリによる被害は致命傷で
長く使っていく上では、根本的な対処が不可欠となります。
 
所有者のお話では
今後のリノベーションではこれらの部分を含め
一旦骨組みまで解体して傷んだところを修繕されるようで
この建物に対する愛着と本気度が強く伝わってきます。
 
 
 
 
 
建物の寿命は、所有者の考え方次第で変わりますが
物理的な寿命は、手入れ次第で人間の寿命よりはるかに長いのです。
 
丁寧にデザインし、しっかりと施工された建物は
地域の景観として人の暮らしに定着して歴史を重ね
その地域に暮らしてきた人々の過去と未来を結びつける大切な存在となるのです。
 
なお、この建物を地域遺産としてまちを盛り上げる企画が
関係者によって10月初旬に行われます。
 
 

版築壁と薪ストーブ、そしてモルタル

臼杵の家、中庭の版築壁は型枠が解体されて
仕上がった壁が現れました。
 
まるで地層がそのまま現れたような壁は
土のリアルな素材感を持ちながら、抽象的なアートのようにも見えます。
 
とても存在感があるのに、不思議と静けさが漂う壁を前にすると
何か、心が穏やかになる感じがします。
 
 
 
 
 
室内には薪ストーブが据えられ
奥に見えるヴィンテージのカウンターとともに
この空間の濃度が一気に高まってきました。
 
 
 
 
 
 
水回りの空間は洗面台も含めてモルタル仕上げ
やや大きさを絞った窓からの光を受けて
陰影の深い表情がなかなか渋いです。
 
 
 
 
 
 
リビングのミニキッチンもモルタル仕上げ
職人さんが丁寧に仕上げてくれています。
 
こちらも軒が深く、抑制された光の中で
モルタルの質感が引き立っています。
 
 

四熊家住宅 進行状況

江戸時代の建築が残る四熊家住宅、
その長屋門の左側にある既存建屋を改修する今回の工事、
夏の間に屋根、外壁の改修がかなり進みました。
 
主役である長屋門に対し、脇役に徹しながら
主従のバランスや互いの間合いを意識して外観をデザインしています。
 
 
 
 
 
 
改修部分はの屋根は長屋門に合わせて軒を深くすることで
長屋門側から瓦屋根が連なり、調和のとれた外観になっています。
 
 
 
 
 
 
 
改修部分の妻側外観
腰壁は杉の板壁、上部はしっくい仕上で
こちらも長屋門との視覚的な連続性を意識した外観です。
 
 
 
 
 
 
改修部分内部は現代の生活に合わせたシンプルな構成です。
天井は杉板貼り、壁は珪藻土で
内部も長屋門との一貫性を意識した仕上としています。
 
 

版築壁工事その他

臼杵の家で版築壁の工事が始まりました。
まず、コンクリート基礎の上に型枠を建て込んでいきます。
 
 
 
 
 
 
真砂土にセメントと顔料を加えて攪拌。
水を加えながら最適の粘度に調合していきます。
 
 
 
 
 
 
攪拌された土は結構粗めで水気があまりないように見えますが
手でギュッと握って水分が染み出すくらいの粘度が最適なんだそうです。
 
 
 
 
 
 
顔料は4色あって少しずつ濃さが違うそうです。
これらを各層ごとに変えることで地層のような独特の表情が現れます。
 
ちなみに、どんな順番の組合せにするのか聞いたところ
返ってきた答えは、適当!(笑)
 
 もちろん、頭の中にはイメージがあるのでしょうが
経験からくる直感が一番間違いないのかもしれません。
 
 
 
 
 
 
攪拌された材料は粒の粗さもいろいろで
これによって自然な表情が生まれます。
 
 
 
 
 
 
 
材料を型枠の中に流し込んで、上から突いていきます。
 
 
 
 
 
 
型枠1段目をある程度突き終わったところで鉄筋を継ぎ足し
2段目の型枠を建て込んでいきます。
 
 
 
 
 
 
室内ではキッチンのステンレス天板の取付が進行中。
 
 
 
 
 
 
ヴィンテージの家具も準備が整ったところで定位置に据え付けです。
 
 
 
 
 
家具の中にコンセントを組み込むため
巾木部分に配線用の穴を開けています。
 
 
 
 
 
こちらはディスプレイ棚のしっくい仕上げの最終段階です。
 
 
 
 
 
 
一通り家具が据えられて室内の雰囲気がだいぶ整ってきました。
来週にはここに薪ストーブが搬入される予定です。
 
 
 
 
 
版築壁の工事2日目。
残り1.7mほどの高さをひたすら突いていきます。
 
ちなみに1層の厚さは10センチ前後、
全部で24層になるそうです。
 
 
 
 
 
中庭側から見た施行中の風景、
この時点で2/3程度まで上がってきました。
 
 
 
 
 
ついに上まで突き終わり、天端を均して終了です。
1週間ほどこの状態で置いたのち、型枠をバラす予定です。
 
少し大げさに言えば、世界でここだけにしかない唯一無二の版築壁、
出来上がりの表情が楽しみです。
 
 
 
 

版築壁の現地確認

臼杵の家では、
建主のご希望で中庭の仕切り壁を版築でつくることになりました。
 
版築というのは、土を突き固めて基礎や土塀にしたもので
近代以前には寺院や貴族の館などの外塀として使われてきました。
しかし、経済性やスピード優先の現代では、工業化も進み
機能的な塀として版築が使われることはほぼなくなりました。
 
手間暇かかる版築ですが、
スピード優先の工業製品では出せない味のある表情が魅力です。
 
唯一無二の壁をつくるために、建主や工務店と検討を重ねた結果
この一品だけは長門の福田さんにお願いすることになりました。
 
時期も時期だけに、感染対策を徹底した上で
材料の搬入を兼ねて現地で打合せを行いました。
 
 
 
 
 
 
壁の高さが2m以上あるため、
2トン車いっぱいに積まれた土は全部で80袋、
1枚の壁にこれほどの土が必要とは、ちょっと予想外でした。
 
材料を降ろした後、現場で細かい寸法等の確認を行い
工事の日程も決まりました。
 
 
 
 
 
 
こちらはキッチン収納に使うカウンター用の無垢材
 
現場に向う途中、
中津の建具屋さんに立ち寄って確認してきました。
3.6mの長さがとれる無垢材が必要なため
提示していただいたのがバルサムという北米産の白木です。
 
 
 
 
 
 
 
カンナで削るとこのような表情でクセの少ない淡い色合いの木目です。
しっかり乾燥した材で狂いも少ないとのことで建主にもご了承いただき、
この材料で進めることになりました。
 
 
 
 
 
 
キッチン周りに据える造付の家具たちも順調に製作が進んでいるようです。
 
 
 
 
 
 
現場にはキッチンの顔となるカウンター家具が運び込まれていました。
 長さは4mもあるフランス製のビンテージです。
 
主役となるこの家具にふさわしい空間となるよう
平面プランと構造計画を何度も練り直してこの場所が用意されました。
 
 
 
 
 
 
ダイニングキッチンでは、壁のしっくい工事が進んでいます。
左官屋さんが塗っているのはディスプレイ用の棚。
 
細長く入り組んだ棚全体をコテで仕上げるのはけっこう面倒ですが、
一つ一つ時間をかけて仕上げていただいています。
 
 
 
 
 
 
リビングに据えられたミニキッチン。
こちらは全面モルタルで仕上げます。
 
この家の仕上げはほとんどが工業製品ではない職人による手仕事です。
その分、時間と手間がかかってしまいますが
その一つ一つの積み重ねが、ここでの暮らしを豊かに包み込み
経年変化とともに豊かな時間を提供してくれるでしょう。