ロン・ミュエク展

この秋注目の展覧会を見るため、東京へ行ってきました。一つ目は森美術館で開催されていたロン・ミュエク展

圧倒的にリアルな質感と誇張されたスケールが強烈な印象を持っていて、一瞬にして鑑賞者の心をとらえます。

 

 

 

「枝を持つ女」と題された作品

背中を思い切りそらして、体の2倍以上の長さがある枝を抱える造形と力んだ表情に緊張感が溢れています。

それにしてもなぜ裸体なのか・・・?

古典芸術にならっているのでしょうか?しかし、決してギリシャ彫刻のように均整の取れた肉体ではありません。それよりも強調されているのは、中年女性のだぶついた体つき。

そこにあるのは理想的な美ではなく、等身大の究極のリアリティです。

 

 

 

ベッドに横たわる女性は、驚いたような表情でこちらを向いています。心の動いた一瞬を表現した作品です。

実はこの作品、女性の体のサイズは実際の3倍くらいでかなり大きいのです。そのため、現実には見ることのない細かい顔や体の質感を覗き見てしまったような奇妙な後ろめたさを感じてしまします。

 

 

 

まるで私たちが小人になったような状態で、ベッドを覗き見たところに、女性がハッと目を覚ましてこちらを見ているかのようです。

まるで寝ている女性を盗撮する私たちに気づいた瞬間を捉えたようで、不思議なリアル感があります。

 

 

 

天使と思われる中年の男は、疲れ果てたのか、うなだれています。

天使といえば、普通は幼児のような初々しいイメージあるので、この像は。正確には昔は天使だった中年の男なのかもしれません。

天使という無垢なイメージと憂鬱そうな男のイメージが混在して、私たちの常識を揺さぶります。

 

 

 

テーブルの両側で対峙する老人とニワトリ

どちらも相手の殺気を感じて緊張する一瞬です。写真には写らない緊張感がバチバチに現れています。

 

 

 

ここにあるのも、幸福な美とは異なる、不都合な現実の中からうまれる切迫感。そして、それを助長するような老人の衰えてたるんだ肉体。

確かに美しくはないけれど、一瞬をとらえた強烈なリアリティとスリリングな場面表現は、現代アートにしては分かりやすく、とてもフォトジェニックです。

 

 

 

これもある意味、フォトジェニックか・・・

人体ほどの大きさがある頭骸骨が空間いっぱいに積み重なっています。これ以上のシュールな光景はないだろうという、挑戦的な作品です。

美醜の狭間に迷い込んだ私たちの価値観が崩れていくようですが、なぜか、気味悪さよりも驚きの方が勝っています。

 

 

 

それは他の人も同じようで、頭蓋骨の森で記念写真を撮る光景それ自体が、空間全体としてシュールな作品のようです。

究極のリアルが生み出す説得力と、一方で目には見えないけれど確かに存在する内面の表現が、アートの奥行きをまた一つ広げてくれたような展覧会でした。