宇部の家 新計画案

昨年から進めてきた宇部の家のリノベーション計画
 
当初は上の模型の左端の南向きの部屋をリノベーションして
セカンドリビングにする計画でした。
 
その後、建主が住まい方を再考され
右端にある既存のリビングを本格的にリノベーションすることになり
改めて計画を練り直し、打合せを重ねてきました。
 
最大の課題は、LDK以外にある6部屋とのつながりがなく
部屋数の割に広さと家族の一体感が感じられないことでした。
 
 
とはいえ、元々の間取りのかたちの制約もあって
LDKとその他の部屋をつないで一体感を出すのに苦戦しましたが
何度も案を練り直し、建主も粘り強く検討していただいたおかげで
今回、ようやくプランの方向性が固まりました。
 
 
 
 
 
 
 
建物の北東端にあるリビングと隣接する部屋たちは
間仕切位置を調整することで視線の抜けをつくり
視覚的なつながりを生み出します。
 
また、既存の天井を取り払い、大屋根で各部屋を空間的につないで
部屋同士の一体感をさらに高めていきます。
 
 
 
 
 
 
 
 
基本的な間取りはほとんどそのままですが
開口部や間仕切の位置を調整することによって
各部屋のつながりや屋外への広がりを生み出します。
 
 
 
 
 
 
 
キッチンからリビング南側を見たところ
 
リビングの南側には薪ストーブを部屋のシンボルとして設置し
その向こうの植栽、さらにその先の庭へと視線が抜けていきます。
 
薪ストーブの右斜め方向は、南端のウッドデッキまで視線が伸び
どこにいても家族のつながりが感じられる住まいになりそうです。
 
プランがまとまってきたので
これから詳細のデザインをさらに詰めていく予定です。
 
 

宇部の家、現況・劣化調査

宇部の家では、リノベーションに伴い耐震改修することが決まり
今回もグリーンデザインオフィスにお願いして
改めて現況の詳細について調査を行いました。
 
平面、高さ、各部材の寸法などの実測を行い
建物の歪みや部材の劣化状況、含水率など
丸一日かけて調べていただきました。
 
 
 
 
 
 
今回、また新たな秘密兵器が登場、
その名も「360度カメラ」
 
既存の建物にはかなりの情報量が詰まっていますが
図面が残っていない場合、それらをできるだけくまなく把握する必要があります。
しかし、限られた時間ですべての情報をチェックするのは大変で
また、見逃してしまう情報があった場合には再調査が必要になったりします。
 その手間を少しでも軽減してくれる頼れる武器として重宝しそうです。
 
 
 
 
 
 
一通り寸法を取り終えたところで
各部屋の床の傾きをチェックしていきます。
これによって建物の沈下状況を推定します。
 
 
 
 
 
 
これは柱の傾きを図っているところ。
各部屋の柱を測定したところ、予想以上に柱が傾いていることが判明。
土地の地形の影響もあり、家全体が同じ方向に歪んでいるようです。
 
 
 
 
 
 
床下も確認。
建築基準法ができる前の昭和初期の建設でもあり
柱は掘立て式ですが、どうもその後にレベル調整された痕跡があります。
 
これらの状況を総合的に検討した結果、
床下にジャッキを入れて、
家の傾きを修正していく方向で調整を進めることになりました。
 
 
 
 
 
 
構造の現場調査に合わせて、私は改修部分の現状をチェック。
写真は各部屋の床レベルの状況です。
 
右上の和室と左上の内縁は建設当時のままのようで敷居の高さ分の段差があり
手前中央の玄関ホールは、その後に改修されたようで、床レベルが異なります。
 
改修では、これらの部屋を一体化することを検討しており
床レベルの調整が必要になります。
 
その他にも、玄関や窓位置の変更など、
改修に伴って解決しなければならない検討事項をピックアップしていきました。
 
これらの情報の上に建主のご要望を重ね合わながら
この家にとっての最適解を探していきます。
 
 
 

ヘリテージマネージャー実践講座@旧山口電信局舎

ヘリテージマネージャー講座、
今年も座学と実測調査などでスキルアップを図ります。
今回は、山口市の旧山口電信局舎の実測調査を実施。
 
旧山口電信局舎は明治6年頃、
日本の近代化を進める流れの中で建設されました。
 
宝形屋根に下見張りの外壁、鎧戸のついた縦長の窓などで構成され
派手さはないですが、端正な洋館の佇まいを今に残しています。
 
この建物はすでに登録文化財に登録されていますが
関係者のご尽力もあり、売却に伴う解体の危機を逃れ
リノベーションを経て地域資産として再出発する計画があるそうです。
 
 
 
 
 
 
実測調査では当初の意匠を残す応接室から寸法を当たっていきます。
西洋では石を加工して作られることが多い窓枠ですが、こちらは木製で
西洋のオーダーを手本に職人が試行錯誤しながらアレンジしたことが伺えます。
 
 
 
 
 
 
応接室の隣接する和室
こちらはのちに住宅として使用する際に改修されたようで
オリジナルの姿とはかなり違うようです。
 
建物を残しながら住み継いでいくということは
このようなプロセスも現実としては十分あり得ることで
それ許容していくことも必要となります。
 
 
 
 
 
 
和室の外側は生活の都合か、それとも所有者の憧れゆえか
鎧戸から出窓(しかもアルミ既製品)に改変されています。
 
このような途中の改変をどう評価するかは
その時々に関わる人々の感性に委ねられますが
個人的には、建物の由来や歴史、意匠や素材の調和を考慮すると
アルミサッシュの形状と質感は調和という観点から違和感がるため
できるならオリジナルに戻していくことがベターではないかと思います。
 
 
 
 
 
 
当初の建物に増築された部分では
増築の接続部分からの雨漏りが確認されます。
 
建物を後付けする際には、丁寧にデザインと施工をしないと
長く使っていく上では、このようなリスクが発生します。
 
 
 
 
 
 
屋根からの浸水によって床下の湿度が上がり
隣室のたたみにまで影響が出ているようです。
 
木造の建物にとって、雨漏りやシロアリによる被害は致命傷で
長く使っていく上では、根本的な対処が不可欠となります。
 
所有者のお話では
今後のリノベーションではこれらの部分を含め
一旦骨組みまで解体して傷んだところを修繕されるようで
この建物に対する愛着と本気度が強く伝わってきます。
 
 
 
 
 
建物の寿命は、所有者の考え方次第で変わりますが
物理的な寿命は、手入れ次第で人間の寿命よりはるかに長いのです。
 
丁寧にデザインし、しっかりと施工された建物は
地域の景観として人の暮らしに定着して歴史を重ね
その地域に暮らしてきた人々の過去と未来を結びつける大切な存在となるのです。
 
なお、この建物を地域遺産としてまちを盛り上げる企画が
関係者によって10月初旬に行われます。
 
 

四熊家住宅 進行状況

江戸時代の建築が残る四熊家住宅、
その長屋門の左側にある既存建屋を改修する今回の工事、
夏の間に屋根、外壁の改修がかなり進みました。
 
主役である長屋門に対し、脇役に徹しながら
主従のバランスや互いの間合いを意識して外観をデザインしています。
 
 
 
 
 
 
改修部分はの屋根は長屋門に合わせて軒を深くすることで
長屋門側から瓦屋根が連なり、調和のとれた外観になっています。
 
 
 
 
 
 
 
改修部分の妻側外観
腰壁は杉の板壁、上部はしっくい仕上で
こちらも長屋門との視覚的な連続性を意識した外観です。
 
 
 
 
 
 
改修部分内部は現代の生活に合わせたシンプルな構成です。
天井は杉板貼り、壁は珪藻土で
内部も長屋門との一貫性を意識した仕上としています。
 
 

リノベーション、完了

カピン珈琲のプチリノベーション、すべて完了しました。
 
寝室窓の目隠し格子も取付けられ
既存の木の色に合わせて塗装されて、外観の表情も整えられました。
 
 
 
 
 
格子は奥行きを深くしてあるので
横から見ると中の様子はほとんど見えません。
 
 
 
 
 
寝室内部
ルイスポールセンの照明の色合いがとても印象的です。
 
ベッド背面の壁仕上げは色々と検討されましたが
最終的には壁と同じ白い塗装で合わせることになりました。
 
その結果、リネン類も含め、室内がすべて白で統一されて
照明の明かりの色だけが際立つかたちになり
シンプルで静かななかにも味わいのある空間に仕上がりました。
 
 
 
 
 
正面から見たところ
明かりの色だけが抽象的に存在しています。
 
 
 
 
 
目隠し壁の裏側はクローゼットとレコード棚
 
 
 
 
 
 
レコード棚の一部はDJブースになっています。
 
 
 
 
 
廊下に設けたロフト用のはしご
建主のセレクトしたアメリカ製の頑丈な製品です。
 
 
 
 
 
ロフトからはしごを見下ろしたところ
 
 
 
 
 
小屋裏空間は結構大きかったため
収納スペースとしてたっぷり使えそうです。
 
 
 
 
 
ロフトに新たに設けた木製の突き出し窓
 
建主のこだわりを受けて、
ヒンジやキャッチ錠は真鍮製のビンテージでそろえてあります。
 
 
 
 
 
突き出し窓と小屋梁
 
窓からの光によって古材の梁が艶かしく浮かび上がり
収納スペースにするにはもったいないくらいの
とても味わい深い空間に仕上がっています。
 
 

一段落

 
寝室改造工事がひとまず完了
 
屋根のガラス瓦の部分は寝室の天窓、
外壁に開けた開口は小屋裏収納の突き出し窓です。
 
 
 
 
 
寝室の天井見上げ
 
暗室のように暗かった寝室は天井を取り払い
天窓によって、光に満ち溢れる空間に一新されました。
 
 
 
 
 
ベッドとクローゼットを仕切る衝立壁
ルイスポールセンのビンテージがユーモラスですが
夜になると下の写真のように間接の光だけがクローズアップされます。
 
 
 
 
 
ルイスポールセンの柔らかい光
 
 
 
 
 
白い室内とコントラストを成す柿渋の太鼓ふすま
和室との仕切りであり、南北に風を動かす通風の役目も担っています。
 
 
 
 
 
太鼓ふすまを開けると和室側の壁は火灯窓の形状に。
茶室の給仕口に着想を得た、高さ4尺(約1.2m)ほどの小さな開口、
表座敷と寝室の結界となるこの部分に建主のこだわりが詰まっています。
 
 

土壁、施工完了

寝室改造工事、
4連休の中日に土壁の仕上げ塗りが完了しました。
 
仕上と言っても表情はかなり粗めで、凄みがあります。
藁を混ぜたこの壁は、土に含まれる鉄分の酸化によって
10年もすると「待庵」のような渋い表情に変わっていくそうです。
 
 
 
 
火灯口の曲面を仕上げる福田さん。
 
独特の表情や細かい細工などありながら
1時間ほどで手際よく仕上げて颯爽と現場を去っていく、
その姿、カッコよすぎです(笑)
 
 
 

和室の土壁下地塗り

寝室改造工事もいよいよ終盤、
隣室の和室との間仕切壁を左官で塗っていきます。
 
左官仕事はこの人、福田左官店の福田さんです。
いつもワンポイントですいませんが、今回も期待しております!
 
まずは、ボードのジョイントや火灯口の曲線部を
ジョイントテープで手際よく補強していきます。
 
 
 
 
 
次に下地の石膏を塗りつけていきます。
今回はプラスターボート貼りに使うGLボンドを使用。
 
 
 
 
 
火灯口、GLボンドを塗ったところ
曲線部をコテで押さえるのは、想像するだけで難しそうですが
あっという間に難なく終了。
 
 
 
 
 
石膏の上に土壁を重ねていきます。
今回使用する土は、淡路のものだそうです。
 
山口県の赤土よりやや薄めの黄土色です。
淡路の土は赤土より鉄分が多いで、経年変化が起こりやすいのだそうです。
 
 
 
 
 
建て主の希望された壁のイメージは、千利休の待庵の土壁。
いかにも荒々しく、時間の経過が生み出す凄みがあります。
今回、このイメージを目指して仕上げていきます。
 
 
 
 
 
寝室側の白い壁との境には、普通は柱や枠が入りますが、
小さい開口に枠をつけるとなんともうるさくなってしまうので
今回はあえて木の見切を省略し、土壁を丸面に仕上げて見切りとします。
 
 
 
 
 
専用の丸面コテを使って、器用に曲線部分を均していきます。
 
 
 
 
 
 
柱との取り合い部分は、曲線を反転させて納めます。
 
図面で描くのは簡単ですが、
この三次曲面をどう仕上げるのだろうと思っていたのですが・・・
 
無駄のない手さばきであっという間に均し終わりました。
さすがの職人技です。
 
 
見ての通り、これらの形はすべて人の手で作られています。
「手仕事」には機械やAIではとても表現できない塩梅があります。
 
それは、熟練の職人がもつ感覚が身体を通してしか生み出せないもので
既製品では到底たどり着けない値打ちを持っています。
 
手仕事は工業製品に比べると高くつきますが
工業製品のように新品の状態が一番きれいで、
時間とともにどんどん劣化していくのとは対照的に
時間が経つとともに渋みが加わり、愛着が増していくものです。
 
それを考えれば、手仕事は必ずしも、割高ではなく
むしろ、愛着の増加する分だけ割安になるとも言えるのではないでしょうか?
 
 
 
 
 
丸面を押さえていたコテ、福田さんの手作りだそうです。
 
 
 
 
 
コテには塩ビのパイプが貼り付けてありましたが
この塩ビの厚み分が、仕上の厚みになるそうです。
使用する道具も含め、よく計算されています。
 
 
 
 
土を塗りつけたところ。
火灯口の曲線部がきれいに丸面で弧を描いています。
 
 
 
 
 
寝室側から見たところ。
この後、数日乾かして、最後の仕上塗りを行います。
 
 

柿渋のふすま、製作中

寝室の改造工事、特注のふすまの製作中ということで
表具屋さんまでやってきました。
 
日ごろ、表具屋さんに来る機会は少ないのですが
せっかくなので製作途中で仕上げ方をじかに確認させていただきました。
 
和室と寝室を仕切る建具を特別な存在としたいという建て主のご要望を受け
ふすまの形や寸法、素材や仕上げの風合いを建て主とあれこれ話し合って
茶室の茶道口をモチーフに、柿渋の和紙で仕上げることになりました。
 
 
 
 
 
下張りまでが終わったふすま
薄い和紙を張り重ねて、しっかりとしたふすまの下地をつくっています。
 
下地段階ですが、既製品にはない手仕事の繊細さが現れていて
これを見ただけで人の手で手間をかけて作っていることが実感できます。
 
 
 
 
 
下張りに使われている和紙。
光にかざすと透けて見えるほどの薄い和紙ですが
洋紙に比べて湿気にも強くて貼りやすいそうです。
 
職人さんのリアルな話から
改めて日本の気候にあった素材が現在でも適していることを教えられます。
 
 
 
 
 
すでに引手部分には柿渋和紙が張り込んであります。
 
引手の形状は「ちり落とし」という古くからある形状で
ふすまの厚みを利用してホコリが溜まりにくいように
引手の正面部分が下向きに傾斜しています。
 
 
 
 
 
仕上げに張り込む柿渋和紙を確認。
この色合いと表情を求めて、あれこれ探して求めたものです。
 
こちらも手作りなので、一枚一枚の色合いや表情が違います。
今回は建具寸法が小さいので上下3段のシンプルな割付で
色合いなどの違いが極端にならないよう、張り込む位置を確認。
 
たった1枚の小さなふすまですが、キラリと光る存在感をもつ
他のどこにもない、この家だけの一品ものです。
 
 

ヘリテージマネージャー実践講座@向山文庫

ヘリテージマネージャー講座、
今回は、光市初の図書館として明治19年に建てられた向山文庫にて
実践的な実測調査を行いました。
 
 
 
 
 
正面入口、
風化して文字は読みにくいですが、扁額の字は三条実美によるもの。
全体として、かなり傷みはあるもののなかなか凄みのある表情です。
 
 
 
 
 
台風が接近する前日の残暑が厳しい日中でしたが
みんな汗だくになりながら、手分けして実測調査に入りました。
 
 
 
 
 
入口庇の軒の出、高さ、各部材の断面寸法などを図っていきます。
今回私は、図った寸法を図に起こす係を担当、
測定する係との連携の大変さを痛感しました。
 
 
 
 
 
 
暗い内部も懐中電灯で照らしながら
一つ一つ寸法を当たっていきます。
それにしても大きく曲がった太鼓ばりが秀逸な空間です。
 
 
 
 
 
外壁は、1階が焼杉貼り、2階は土壁仕上げ。
焼杉の一部が開口部(跳ね上げ窓)になっていますが
閉じると外壁と同化するように納められていて、
さりげなくもデザインへのこだわりが見て取れます。
 
 
 
 
 
2階の窓枠も刀掛け(枠を細く見せる納まり)になっていて
小粒で蔵のような、一見何気ない建物に見えますが
なかなかきめの細かいデザイン配慮が見受けられます。
 
 
 
 
 
土壁の表情
風雪にさらされて風化した表情が渋すぎます。
 
簡素ながら深みのある表情や繊細なディテールなどを併せ持ち
このままうち捨てるにはあまりに忍びない、風格のある建築です。