10年という時間

 
今も鮮明に思い出される津波の光景、
あの日を境に日本人の防災意識は高まりました。
 
しかし、あれから10年、
あの日の防災意識をキープできているでしょうか?
(まさに自分にも問いかけ直しているところです)
 
この間に地震や台風、集中豪雨など
日本各地で大きな被害は続き、今は感染症に悩まされています。
 
「まさか、こんなことになるとは・・・」
 
「こんなことは初めて」
 
被災した人たちのインタビューでたびたび聞かれるこの言葉、
日常が平安であればあるほど、自然は不意をついてきます。
 
「天災は忘れた頃にやってくる」
 
物理学者、寺田寅彦が発したと言われるこの言葉があります。
人間は忘れやすい生き物で、時に慢心すらしてしまいます。
 
「世の中が安全になればなるほど、人間の危機意識は弱まるのか?」
 
毎年、高専の授業で学生たちに語りかける命題です。
 
安全や防災は意識し続ける努力をしないと「愛する人」さえ守れないかもしれない。
それは、「平和」と少し似ている気がします。
 
 

2021.3.11 設計事務所 TIME 

臼杵の家、中間検査

先週になりますが、臼杵の家の中間検査が行われました。
大分県では、一般の木造住宅でも骨組みや耐力壁、小屋組ができた段階で
審査期間の検査が行われるため、立会いに行ってきました。
 
リビング側から中庭を挟んでダイニングキッチン側を見たところ。
壁の筋違いや屋根の小屋組の工事が完了した状態です。
 
 
 
 
 
 
筋違い端部の金物納まり。
柱ごとの必要な強度に合わせて金物で固定されています。
施工もしっかりしてあり、検査も問題なく終了です。
 
 
 
 
 
南東部から見た外観
手前のリビング部分と奥のダイニングキッチン部分が
中庭をはさんで一帯の屋根でつながっています。
 
 
 
 
 
軒下から見るとこんな感じ。
軒裏の架構はそのまま表しにするため、
33センチピッチで垂木が道路まで連続して見えてきます。
 
 
 
 
 
検査の終了後、
大分市内の金属加工工場に、玄関庇の製作状況を確認しに行ってきました。
左の幅広の庇は道路側の正面玄関につけるもの、右は勝手口側のもの。
 
中間に補強のリブがビスで固定されていますが
裏面のビスがやや表面から浮いていたりするところがあり
一枚のフラットな表情に見えるように修正をお願いしました。
 
この庇は仕上に艶消しの黒い塗装を施しますが
アルミの場合、焼き付け塗装がきれいに仕上がるとのことで
まずはサンプルで確認して、全体の質感とのバランスをチェックする予定です。
 
 
 
 
 
 
 
 

臼杵の家、耐震チェック

先週に引き続き、照明や電気の打合せと耐震調査のため
臼杵の現場に行ってきました。
 
耐震調査ではやや大スパンで特殊な架構となるキッチン部分について
設計通りの強度がとれているか、現地で確認を行いました。
 
 
 
 
 
最初にトラス梁の接合部の仕様や部材の留付けの状態など
構造設計の仕様と現場の施工状況を照合。
 
 
 
 
 
仕様の確認が終わったあとは常時微動の測定です。
以前、櫛ヶ浜の家の耐震調査でも使用した測定器で
実物の建物での固有周期を測定します。
 
 
 
 
梁上に載せた測定器の振動がパソコンでデータ化され
建物の固有周期が測定されます。
 
現段階での固有周期は0.16秒で
新築の平屋部分としては良好な数値でした。
(一般的な木造の新築建物は0.1〜0.5秒)
 
 
 
 
最後に柱や梁など、部材のヤング係数も測定してもらい
耐震調査を終えました。
 
今回はやや複雑な架構になっていましたが
実際の測定により、耐震性が実証できました。
 
 
 

臼杵の家 棟上げ

 
先週の土曜日、快晴の中
臼杵の家が無事、棟上げしました。
 
中央の中庭をはさんで、手前は一部2階建、奥は平屋で構成し
全体を屋根でつないで、長さ18mの伸びやかなのプロポーションです。
 
 
 
 
 
道路側からの見返し
中庭も含めると47坪ほどの比較的大きなボリュームですが
できる限り軒の高さを抑えて、周辺のまち並みとの調和を図っています。
 
 
 
 
 
長手方向の梁の接合部は、金物を使わない伝統的な継手です。
手前の列の継手は意匠上の理由で追っかけ大栓継ぎ、
奥の継手は構造強度が特に必要なため、金輪継ぎになっています。
 
 
 
 
 
日も傾いき始めたころ、ようやく棟上げが完了し、
もちまきが行われて、子供からお年寄りまで多くの人が集まりました。
 
ちょっと「密」ではありますが(笑)
地域の方々と無事棟上げができたことをお祝いしました。
 
 

旧毛利家本邸画像堂 見学会

重要文化財の旧毛利家本邸画像堂
工事が終わり、改めて画像堂の見学会に行ってきました。
 
森の木々に囲まれた環境の中に建つ建物は
明快な構成と和の様式でまとめられた荘厳な雰囲気です。
 
 
 
 
 
楼閣部分の宝珠、入口屋根の鬼瓦や懸魚、木口を白く塗られた垂木など
寺院建築の伝統的意匠でまとめられています。
 
 
 
 
 
隅棟先端部の輪違瓦の意匠
細かいところまでしっかりと洗練されたデザインです。
 
 
 
 
 
補強金物が新調された入口扉は重厚な表情です。
 
 
 
 
 
火灯窓は寺院建築の様式をモチーフにしていますが
やや扁平のプロポーションにデフォルメされていて
伝統をただ単にコピーしたというより記号的に表現しているように感じます。
 
 
 
 
 
黒い仕上げで渋く光る金物類
 
 
 
 
 
扉の蝶番は銅製のオリジナルのもののようで
マイナスビスが使われています。
 
 
 
 
 
画像堂内部
毛利元就を中心に歴代藩主の肖像画が飾られています。
 
骨組みはちゃん塗りと呼ばれる塗料で黒く引き締められ
楼閣部分の欄間から自然光が柔らかく漏れる垂直性の強い空間。
 
毛利家の精神的な拠り所となるこの空間を
西洋の空間構成と和と様式を融合させて演出しています。
 
 
 
 
 
床には御影石と美祢の石灰岩による渦巻き模様の人研ぎ仕上げで
荘厳な中にも華やかな意匠を織り交ぜています。
 
工事中にも感じたことですが
和と洋のせめぎ合う大正という時代に
伝統と現代性をどのように調和させていくのか
葛藤しながら、もしくは楽しみながらデザインしたであろう
設計者の思いが感じられる建築でした。
 
 

ポジティブに模索する年に

あけましておめでとうございます
 
昨年来のコロナ禍でまだまだ大変な状況はつづいていますが
今年はこのピンチから得たヒントを次の時代に生かす年にしていきたいところです。
 
もしかすると、あわただしく時間を消費していたこれまでのくらしから
その日、その時を味わうことのできるくらしへ進化するチャンスかもしれません。
  
TIMEでは、その時間から生まれるであろう「豊かな日常」を
住まいや建築を通じてポジティブに模索して参ります。
  
今年もどうぞよろしくお願いします。
 
  

その先の「豊かな日常」をめざして

2020年もあと数日、
今年は世界中の人々にとって記憶に残る年となるのでしょう。
 
今年の年始に掲げた目標は
この忙しい時代にこそ大切なこころ落ち着く「豊かな日常」や「人と人が豊かにつながること」をめざす、
というものでした。
 
今も続いているコロナ禍は、人々の日常を制限し、
ソーシャルディスタンスで人と人を分散させることを求めています。
 
しかし、このような状況の中でも
日常のすべてが失われたわけではありません。
人と人のつながりが不要になったわけでもありません。
 
時間の余裕で生まれた新鮮な気付き、会えない人への思いなど
当たり前すぎて見過ごしてきたものの大切さに気付かされる機会になったかもしれません。
 
コロナ禍は、現代人のくらしや生き方が生み出してしまった
膿(うみ)をあぶり出す役割をも果たしているのかもしれません。
 
個人主義が当然のようになって、
我々は自分中心に地球が回っているとの勘違いをしていなかったでしょうか?
 
目先の利益に振り回されて、
一分でも一秒でも早く、早くと焦っていなかったでしょうか?
 
それがこのコロナ禍で図らずもブレーキをかけられ
一旦立ち止まって足元を見直す、とても大切な1年になったのではないかと思います。
 
自分中心から少し頭を切り替えて
他人や社会、そして自然のもつ「多様性」を受け入れる柔らかさを
もう一度我々が取り戻すことの必要をこの厄災は示唆しているのかもしれません。
 
おそらく、本当の「豊かな日常」は、その先にこそ現れるのではないか、
私はそう考えています。
 
TIMEはその「豊かな日常」をサポートすべく、住まい、建築、そしてまちに対し
これからも働きかけて参りたいと思います。
 
時代を後戻りさせず、よりよい時代への進化をポジティブにめざしていく、
来年がそんな一年になることを願っています。
 
 
 
 

大内御堀の家(第3期)

大神の家2 スタディ模型

大神の家2、
これが3案目のスタディ模型です。
 
26坪のコンパクトな家ですが
敷地向こうに広がる田園風景を望むための大きな開口を開き、
広がりの感じられるおおらかな居住空間に仕立てていきます。
 
 
 
 
 
室内の断面構成
1階に主要な部屋、2階に将来の子供室にも使えるセカンドリビング、
それらが吹抜けでつながる構成になっています。
 
 
 
 
 
上からの見下ろし
吹抜けのまわりにセカンドリビングやロフトがあり
ぐるっと一周できる回廊状の空間になっています。
 
1、2階の親密感とそれぞれの場所の個性のバランスを
平面寸法や断面構成、天井高さなどを変えながら
さらにスタディしていきます。
 
 
 

大神の家2、地盤調査

雪の散らつく中、
新たなプロジェクトの地盤調査を行いました。
敷地奥は4mほどの擁壁、その下に川が流れるロケーションです。
 
設計はまだ始まったところですが、擁壁近くの地盤の状態が気になるため
事前に地盤のデータを確認してから建物の配置と平面形状を調整する予定です。
 
地盤の状況はさておき、
川向こうに広がるのどかな風景はこの家の最大の武器になりそうです。