
世界で唯一のヤコブセンの専門店が大阪の池田市にあります。
アルネ・ヤコブセンの孫であるトビアス・ヤコブセンと
ハウスマネージャーの国吉玲子さんの出会いから生まれたというこの店。
昭和初期に作られた洋裁学校が廃屋になっていたものを
国吉さんたちが自力でリノベーションしたそうです。
その、やさしい雰囲気や穏やかなまちの雰囲気を気に入り
奇跡のような場所がトビアスによって生み出されたのだそうです。
簡素な切妻の建物はその天井を取り払い、小屋組をそのまま現し、
壁と共に白く塗装してプレーンな空間に仕立て直しています。
古くて均質でない部材たちは白く塗られて
リアルな質感と控えめや表情で空間を和ませてくれています。
訪れた日は天気が安定せず、雨が降ったり止んだりでしたが
天窓からの柔らかい光が、簡素な空間に温かみを与えていました。
時折、雲が晴れて差し込む光が木漏れ日となって
白い空間を劇的に変化させてくれたりもしました。
トビアスによってプロデュースされたこの店では
アルネ・ヤコブセンの家具や照明などが取り扱われています。
ヤコブセンを信奉する私にとっても
家のようなスケールの中で実物を肌で感じることのできるとても貴重な空間です。
まるでデンマークにある古い家のような柔らかい空間には
シンプルで洗練されたヤコブセンのものたちがよく映えます。
モルタルのカウンターにホーローらしき古いシンク、
木製の棚や雑貨たち、そこにさりげなくヤコブセンのデスクライト。
時を経てきたものたちが柔らかく溶け合っています。
イギリスのアンティークのドアと白黒のコントラストが際立つアントチェア。
これらを取り合わせたセンスが、時間の積層を豊かに表しています。
雑貨を集めたこちらのコーナー、
イイノナホさんの照明やグラスアートがさらに色を添えています。
古さを欠点とせず、そこに宿る時間や固有の表情を引き出し
現代の感性で上手につなぐことで生まれる豊かな時空間。
国吉さんとしばし会話を楽しみ、豊かな時間を過ごさせていただきました。