RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store

一面に窓がコラージュされた不思議な外観

徳島市の市街地からバスで50分ほど、街から次第に郊外へ、さらに緑豊かな山あいへと風景は変化し、やってきたのは人口1190人ほどの上勝町。

山あいの風景と呼応する赤い板壁が印象的なロッジのような建物が目的地のブルワリー併設のビアバーです。

四国山地の山間部に位置する上勝町では、葉っぱビジネスが海外メディアでも取り上げられ話題となりましたが、日本で初めて「ゼロウェイスト(ゴミゼロ)宣言」を行った町としても有名です。

このブルワリーは町の「ゼロウェイスト宣言」に共鳴した地元産のビール醸造に取り組んでおり、多彩なクラフトビールを楽しめるスポットでもあります。

 

 

外観で印象的な窓のコラージュはほとんどすべてが既存の再利用でできています。ひとつとして同じ形、寸法のないものを巧みにアレンジし、コンセプトが明快なデザインとして建築化されています。

 

 

店に入るとまず目を引くのが、ボトルを吊るしたシャンデリア

これらのボトルも再利用されたものですが、奥の大開口の光を受けて輝くオブジェとなっています。

 

 

建物のアイコンともなっている吹抜けの大開口

全面の大開口によって奥行きの深い店の奥まで光が降り注ぐおおらかな空間です。

 

 

こちらの開口も既存の建具を再利用し、コラージュしたもの

開口部は、外側のリサイクル窓と内側のマリオンと構造を兼ねた木フレームで構成されています。

コラージュされたリサイクル窓の不規則な構成とあみだくじ状にデザインされた木フレームが複雑に絡み合い、その隙間を通して表情豊かな光が漏れています。

リサイクル品を多用したローコストなデザインにもかかわらず、未来のステンドグラスのように私には感じられます。

 

 

あなぶきアリーナ香川

緩やかなカーブを描く屋根が印象的なアプローチ

10月に行った四国建築視察をレポートします。まず最初に訪れたのは香川県の新しい県立体育館、あなぶきアリーナ香川

二つの屋根の間からこちら側にスロープが伸びています。末広がりのスロープを上ったところが体育館の入口です。

ゆったりした広さと明快な動線は、丹下健三設計の国立代々木屋内競技場を連想させます。1万人の観客をスムーズに移動されるという機能とランドスケープが調和して、何気ないけれどストレスを感じない気持ちのよいアプローチ空間です。

 

 

 

スロープを上ると体育館の軒下空間の先には瀬戸内海が広がっており、おおらかな開放感が感じられます。

一般的に大きな公共建築では、外は外、中は中で別々の空間に分かれていることが多いのですが、ここでは、外と中の空間が物理的にも視覚的にも混ざり合っていて、心理的にとても風通しがよいのです。

 

 

入口からつづく交流エリア

外と中が混ざり合うという考えは、室内空間にも貫かれていて、視線が瀬戸内海へと抜ける交流エリアや、アリーナと交流エリアを完全に仕切らない流動的な空間づくりなどにも反映されています。

 

 

交流空間にはガラス越しに瀬戸内海が広がる場所にキッズスペースも設けてあり、室内でありながら公園のような親しみやすい環境です。

 

 

5000人を収容できるメーンアリーナ

ちょっとピンボケですが、ゆるやかなドーム状の天井はきれいに整理された構造材と星のように配置された照明で構成され、体育館にありがちな無機質で殺風景ないやらしさを感じさせません。

 

 

観客席はパステル調の色をランダムに配置してあり、グレー調に抑えられた室内空間に爽やかな色を添えています。

 

 

再び建物を出て、体育館の先にある瀬戸内海が広がる広場へ

広場は体育館とは道路で隔てられた別々の場所になっていますが、体育館の動線を海側までつなげて空間的に関係付けたことで、一体感のある生きた場所になっています。

まちと海との間に配置された体育館、そしてそれらとひとつながりの空間として設計としたことで生まれた相乗効果によって、まちと自然、そしてそこでの人々の活動が一体となる、とても魅力を感じる場所でした。

 

 

家具・照明の現品確認@福岡

山口市泉都町プロジェクトの店舗でつくるカウンターや応接スペースで使用する家具の確認のため、福岡に行ってきました。

午前中は、福岡の大和銘木にてカウンター用の天板を確認。上の写真は、店舗の立飲み用のカウンターに使用するヒノキの一枚板です。

 

 

非日常の空間で味わう貴重な日本酒に合わせ、カウンターの天板は、和の繊細で清潔なイメージをもつヒノキを選択しました。

 

 

カウンターの面取りにも繊細さを求めて1ミリ程度とする予定です。

 

 

博多に移動し、午後からはソファや照明の確認。

博多リバレインにある NOUS PROJECT にてソファの現物を確認。今回、家具や照明のご提案をお願いした廣中夫妻の案内で、建主と共にソファの寸法や座り心地、生地の質感や色合いなどを確認しました。

 

NOUS PROJECT は久留米にある「ユーカス」のオリジナルブランドで、性能や座り心地とデザインのバランスもよく、クオリティの高い家具ながら海外メーカーに比べ、コストも魅力です。

 

 

こちらは最終的に選んだソファ。奥行きが108センチと深く、よりくつろいだ座り心地が好評だったため、当初提案されていたものから変更することになりました。やはり、現物を確認し、実際に座って感じることが大切さです。

 

 

ソファの形が決まったら、空間に合わせてソファの生地を確認していきます。今回は、白い空間に合わせ、メインテナンス性も考慮したグレー系を選択しました。

 

 

ソファを確認したあとは、廣中氏のオフィスも兼ねるご自宅へお邪魔し、取り寄せていただいた椅子や照明器具を確認。

このペンダント照明は、ルイスポールセンのVL45で、廣中氏のご自宅で実際に使われているもの。柔らかい造形と光が印象的で、ここと同じように玄関スペースに使用します。

 

 

店舗の4人席で使う椅子は、剣持勇デザインのNo.207。黒漆のような質感に肘掛と背板が一体化した曲木の造形が個性的で、シンプルな形ながら座り心地もなかなか良いです。

 

 

細かい内容をさらに打合せするためにリビングに移動。

隣接するキッチンはシンプルながら北欧の素朴なキッチン用具が並び、センスがよく、居心地のよい空間です。

毎年デンマークへ買い付けなどに行かれるとのことで、この空間もなにかハマスホイのような静けさを感じます。

 

 

最後におまけの1枚

廣中氏の事務所が入るマンションは、福岡市のネクサスワールドにあるクリスチャン・ド・ポルザンパルクの設計によるもの。そのデザインは個性とエレガントさが共存するところが興味深く、壁の足元にある巾木もなかなか個性的でした。

 

 

グラントワの大ホール

益田市のグラントワで行われたコンサートに行ってきました。多くの観客を迎えるホワイエには印象的なデザインの照明が目を引きます。。

日曜日に行われたチェロのコンサートで、チェリストの宮田大さんとグラントワを設計した内藤廣さんの対談も行われ、建築と音楽の関わりやグラントワの設計にかけた思いなどを伺うことができました。

 

 

ホワイエ空間は3階まで吹き抜けていて、まるで大聖堂のような荘厳さです。

 

 

ホール側面の壁はコンクリートむき出しで壁が多面体のように折れ曲がっています。このコンクリートという硬く重い素材と、反響を考慮した屈折する壁面が豊かな音響効果を生み出し、どの席にいてもクリアな音が聴こえるそうです。

 

 

コンクリートの壁はホールの外側にも多面体の形がそのまま現れています。

 

 

こちらはかなりマニアックな写真になりますが、多面体のコンクリートの6本の折れ線がズレることなく見事に一点に集まっています。

当たり前のように見えるかもしれませんが、図面で描くことができたとしても、それを実際につくるのはそう簡単ではありません。

巨大な空間をたくさんの職人たちが連携し、協力して同じ目標へ向かって集中しなければこんな仕事はできないでしょう。

さらに、この造形はコンクリート打放しという一発勝負でつくられていて、まさに執念の仕事と言ってよいでしょう。

圧巻の造形です!

 

 

住まいづくりの会 四国視察

瀬戸大橋を渡り、四国へ

設計や施工で建築に関わる有志による住まいづくりの会、年に一度の建築視察で今年は四国へ行ってきました。現在3つの工事が進行中で現場に追われる日々ですがこの企画を楽しみにしてくれている仲間のために、なんとか時間を見つけて視察先の建築と行程を組み立て、人数分のホテルを確保し、視察一週間前にようやく計画をまとめました。

今回も建築のビルディングタイプや建設年代は多種多様ですが、四国のもつ独自性や地域性に対し、建築家がどこに注目し、何に重きを置いて建築をつくりあげたのか、その思いを探りつつ、建築の持つ力を体感しようという目的です。

 

 

こちらは香川県高松市に完成したばかりの最新建築です。

 

 

一方こちらは明治時代の建設による伝統的な五重塔

 

 

伝統木造を新たな視点でデザインしたインテリアの習作などもあり、バラエティ豊かな建築たちをこれから少しずつ紹介していきます。

 

 

山口、宇部の現場進行中

山口のプロジェクトで棟上げが行われました。雨よけ用のシートが巻かれた建物は左右が出っ張っており、それに挟まれた真ん中の部分がゲスト用リビングとつながる中庭になります。

 

 

奥行き9mのゲストリビング

左側のシート部分は天井まで全面開口となり、中庭と一体の空間になる予定です。

 

 

こちらは宇部西岐波のリノベーション

既存のリビングでは内壁や天井の解体が終わり、空間の骨格が整ってきました。正面の玄関戸とその左の窓を開けると庭の緑へと視線が延びていきます。

 

 

既存の階段の塗装を落としたところ

もともと艶ありの濃い色で塗られていましたが、1週間以上かけて丁寧に削り取ってもらいました。重厚な印象だった階段が、シャープなスケルトン階段として生まれ変わりました。

 

 

えんげの茶会@大津島

JIBIの松田さんからお誘い頂き、秋分の日に大津島で行われた「えんげ」の茶会に参加しました。

コロナパンデミックの影響で、大津島を訪れるのは6年ぶりくらいになります。 茶室 石柱庵に来るのも久しぶりですが、ガマの群生地の畔にあるアプローチを歩くと、静かに心が整っていきます。

 

 

石の立礼席では、京都の茶人 天江大陸氏の趣向による抹茶をいただきました。島を訪れ、自然に触れて時間に縛られない時を過ごすことの豊かさを天江氏の語りとともに味わいました。

 

 

菓子には大津島で採れたスダイダイをくるんだ葛餅

弾力のある餅の食感の中からスダイダイの爽やかな酸味・甘み・苦味が自然そのままの味として舌の上に広がってきます。

 

 

壁に生けけられた青柿の実

暑い日が続いていましたが、かすかに秋の気配を感じます。

 

 

客座から上田快 氏製作の石の立礼卓の奥に広がる自然の庭

引戸を開けると秋の風がスーッと流れ込んできました。

 

 

茶室の屋根にはサビが現れてきました。

元の朽ちたトタン屋根を吹き替えた当初はつやつやした銀色をしていましたが、建設から10年を経て少しずつ侘びた表情に変化してきました。

 

 

ガマの群生地ではガマの穂がちょうど見頃になっています。

 

 

こちらは数珠玉。街中ではなかなか身近に出会うことない珍しい植物です。

 

 

水辺にはホテイアオイが淡い紫色の花を咲かせています。

 

 

カラフルなシャクトリムシを見つけました。

黒い体に黄色と赤の斑点がとてもきれいで、なにげない島の自然の中に広がる豊かさを感じさせてくれます。

 

 

茶室をあとにして、ガマの群生地の奥にある厳島神社へ向かいます。

まちづくりや茶室の工事で何度も訪れたこの参道ですが、久しぶりに歩くこの道は風景とともに実に味わい深い。

 

 

厳島神社の拝殿と石の本殿

簡素な拝殿は四方全体が開放されていて、とても気持ちのよい造りです。

 

 

こちらでは白茶という中国原産のシンプルなお茶をいただきました。

木々が茂る自然に包まれた境内、自然と溶け合う拝殿の仄明るい空間、水出しのお茶からにじみ出すかすかな香り。五感を通して身も心も澄み切っていきます。

 

 

日常を離れ、時間を忘れて過ごす島のひととき

それは、現代人にとってとても豊かなデトックス。茶会をともにした皆さんとともに豊かなひとときを体に刻んで、大津島をあとにしました。

 

 

宇部のリノベーション、工事開始

宇部西岐波の家でリノベーションの工事が始まりました。

既存のリビング、ダイニング、キッチンの間仕切を取り払い、ダイニングの天井を解体しておおらかなワンルームに生まれ変わらせます。

 

 

ダイニングからL字に突き出したリビング

写真左の柱の位置に薪ストーブを設置する予定でしたが、間仕切を解体すると2階を支える通し柱だとわかったため、薪ストーブ位置を柱の右側にずらすことになりました。

古い家では当初の図面がないため、解体して初めてわかることも多く、新築にはない調整が求められますが、それを臨機応変にアレンジするのがリノベならでわの楽しみです。

 

 

天井を取り払ったダイニングの小屋裏空間

正面の壁は屋根まで立ち上げて仕切るのですが、壁の奥から屋根を支える角材が突き出しています。

壁からはみ出すのでカットしてもよいのですが、あえてこの家の歴史として、あるがままに見せることにしました。白いプレーンな壁に現れる荒々しい角材は機能を超えたオブジェとして、天窓の光を受けて日時計のように壁に影を描くことでしょう。

 

 

山口市で工事開始

少し前になりますが、山口市の湯田温泉にほど近い場所で地鎮祭が行われました。

建主の熱い思いを受けて。昨年の5月から設計を詰めてきました。45坪の平屋の建物は、日本酒の角打ちのお店や会社の応接室、オーナーの住居などが収められた複合建築です。

 

 

地鎮祭では、会社のブランドであるお酒も祭壇に飾られました。

 

 

祭壇に飾られた「MUJAKU TEN -天-

 

 

先週から基礎工事が始まりました。

昨年の湯野温泉と同様の補助金事業で、地域の活性化に寄与する施設を期待されており、来年の2月の完成を目指して力を注ぎます。

 

2025.8.25 設計事務所 TIME

設立20周年のごあいさつ

 

設計事務所TIMEは今日で20周年を迎えました。改めて、これまでご支援をいただいた多くの方々に感謝を申し上げます。

終戦記念日のこの日に、初心に立ち返るという思いで事務所をスタートし、ここまで仕事を積み重ねてきました。

社名であるTIMEには、「時を経ていくもの」という思いを込めています。

建築は空間芸術とも言われますが、一方で使い続けることや受け継ぐことがますます重要な時代になりました。

しかし、時間の効率やスピードは加速するばかりで、時間のもつ豊かな価値を見失ってはいないでしょうか? そんな状況で、果たして人間は本当に豊かな時間(人生)を送っていけるでしょうか?

そんな問いに対するTIMEのビジョンが 「時は豊かなり」 です。

日々のひとときや季節のうつろいを豊かに味わう。月日を経て育っていく愛着や大切な記憶を人生に刻んでいく。そのような場をこれからも創造したいと思います。

TIMEの建築には決して派手さはありませんが、時間を豊かに過ごすための居心地のよさにしっかりとこだわります。

暮らす人の人生がよりよい時間となるよう、これからも模索を続けて参ります。

 

2025.8.15 設計事務所 TIME