
緩やかなカーブを描く屋根が印象的なアプローチ
10月に行った四国建築視察をレポートします。まず最初に訪れたのは香川県の新しい県立体育館、あなぶきアリーナ香川
二つの屋根の間からこちら側にスロープが伸びています。末広がりのスロープを上ったところが体育館の入口です。
ゆったりした広さと明快な動線は、丹下健三設計の国立代々木屋内競技場を連想させます。1万人の観客をスムーズに移動されるという機能とランドスケープが調和して、何気ないけれどストレスを感じない気持ちのよいアプローチ空間です。

スロープを上ると体育館の軒下空間の先には瀬戸内海が広がっており、おおらかな開放感が感じられます。
一般的に大きな公共建築では、外は外、中は中で別々の空間に分かれていることが多いのですが、ここでは、外と中の空間が物理的にも視覚的にも混ざり合っていて、心理的にとても風通しがよいのです。

入口からつづく交流エリア
外と中が混ざり合うという考えは、室内空間にも貫かれていて、視線が瀬戸内海へと抜ける交流エリアや、アリーナと交流エリアを完全に仕切らない流動的な空間づくりなどにも反映されています。

交流空間にはガラス越しに瀬戸内海が広がる場所にキッズスペースも設けてあり、室内でありながら公園のような親しみやすい環境です。

5000人を収容できるメーンアリーナ
ちょっとピンボケですが、ゆるやかなドーム状の天井はきれいに整理された構造材と星のように配置された照明で構成され、体育館にありがちな無機質で殺風景ないやらしさを感じさせません。

観客席はパステル調の色をランダムに配置してあり、グレー調に抑えられた室内空間に爽やかな色を添えています。

再び建物を出て、体育館の先にある瀬戸内海が広がる広場へ
広場は体育館とは道路で隔てられた別々の場所になっていますが、体育館の動線を海側までつなげて空間的に関係付けたことで、一体感のある生きた場所になっています。
まちと海との間に配置された体育館、そしてそれらとひとつながりの空間として設計としたことで生まれた相乗効果によって、まちと自然、そしてそこでの人々の活動が一体となる、とても魅力を感じる場所でした。

