河東の家

category:  house
location:   山口県周南市
site area:  ー
floor area:  81m²
completion: 2017.2

密集市街地に建つ築56年の中古住宅のリノベーション。

周囲には建物が接近し、日当たりはほとんど期待できない。室内はとりとめのない間取りで雑然とし、取るに足りない仕上げで、どこにも価値を見出せそうもないほどの絶望的な空間。このような中古住宅はどこにでも存在し、この先、さらに時代が下り、人口減少が進むなかで、増加の一途をたどるのみである。

そのような状況のなか、無価値とも言えそうなこの家に対し、それを消費の対象とするか、それとも、敢えて付加価値を与えて財産にするかで、その後の時代の風景はずいぶん変わるかもしれない。少なくとも成熟社会を迎えた日本にとっては大きな意味を持つと考えたい。このプロジェクトでは、建主の前向きな姿勢が勝り、幸運にもリノベーションにより蘇ることになった。

改修前の室内は、中央の階段が空間を遮り、薄暗い室内をさらに窮屈にしていた。改修にあたっては、ネックになっているこの階段をいかにポジティブな存在に変えられるかが勝負の分かれ目になると思われた。動線上移動できないこの階段ではあったが、閉鎖的な形態を改め、スケルトンの階段に置き換えることによって、分断されていた空間を一体化し、広がりが感じられるように設え直した。薄暗かった室内は、光の拡散を狙って白を基調に改められた。予算上、外部はそのままだが、内部は中古とは思えないほどシンプルな空間に変身し、コントラストを際立たせている。改修では、単なる見た目のデザインだけでけでなく、耐震補強と断熱改修も行われている。