版築壁と薪ストーブ、そしてモルタル

臼杵の家、中庭の版築壁は型枠が解体されて
仕上がった壁が現れました。
 
まるで地層がそのまま現れたような壁は
土のリアルな素材感を持ちながら、抽象的なアートのようにも見えます。
 
とても存在感があるのに、不思議と静けさが漂う壁を前にすると
何か、心が穏やかになる感じがします。
 
 
 
 
 
室内には薪ストーブが据えられ
奥に見えるヴィンテージのカウンターとともに
この空間の濃度が一気に高まってきました。
 
 
 
 
 
 
水回りの空間は洗面台も含めてモルタル仕上げ
やや大きさを絞った窓からの光を受けて
陰影の深い表情がなかなか渋いです。
 
 
 
 
 
 
リビングのミニキッチンもモルタル仕上げ
職人さんが丁寧に仕上げてくれています。
 
こちらも軒が深く、抑制された光の中で
モルタルの質感が引き立っています。
 
 

版築壁工事その他

臼杵の家で版築壁の工事が始まりました。
まず、コンクリート基礎の上に型枠を建て込んでいきます。
 
 
 
 
 
 
真砂土にセメントと顔料を加えて攪拌。
水を加えながら最適の粘度に調合していきます。
 
 
 
 
 
 
攪拌された土は結構粗めで水気があまりないように見えますが
手でギュッと握って水分が染み出すくらいの粘度が最適なんだそうです。
 
 
 
 
 
 
顔料は4色あって少しずつ濃さが違うそうです。
これらを各層ごとに変えることで地層のような独特の表情が現れます。
 
ちなみに、どんな順番の組合せにするのか聞いたところ
返ってきた答えは、適当!(笑)
 
 もちろん、頭の中にはイメージがあるのでしょうが
経験からくる直感が一番間違いないのかもしれません。
 
 
 
 
 
 
攪拌された材料は粒の粗さもいろいろで
これによって自然な表情が生まれます。
 
 
 
 
 
 
 
材料を型枠の中に流し込んで、上から突いていきます。
 
 
 
 
 
 
型枠1段目をある程度突き終わったところで鉄筋を継ぎ足し
2段目の型枠を建て込んでいきます。
 
 
 
 
 
 
室内ではキッチンのステンレス天板の取付が進行中。
 
 
 
 
 
 
ヴィンテージの家具も準備が整ったところで定位置に据え付けです。
 
 
 
 
 
家具の中にコンセントを組み込むため
巾木部分に配線用の穴を開けています。
 
 
 
 
 
こちらはディスプレイ棚のしっくい仕上げの最終段階です。
 
 
 
 
 
 
一通り家具が据えられて室内の雰囲気がだいぶ整ってきました。
来週にはここに薪ストーブが搬入される予定です。
 
 
 
 
 
版築壁の工事2日目。
残り1.7mほどの高さをひたすら突いていきます。
 
ちなみに1層の厚さは10センチ前後、
全部で24層になるそうです。
 
 
 
 
 
中庭側から見た施行中の風景、
この時点で2/3程度まで上がってきました。
 
 
 
 
 
ついに上まで突き終わり、天端を均して終了です。
1週間ほどこの状態で置いたのち、型枠をバラす予定です。
 
少し大げさに言えば、世界でここだけにしかない唯一無二の版築壁、
出来上がりの表情が楽しみです。
 
 
 
 

版築壁の現地確認

臼杵の家では、
建主のご希望で中庭の仕切り壁を版築でつくることになりました。
 
版築というのは、土を突き固めて基礎や土塀にしたもので
近代以前には寺院や貴族の館などの外塀として使われてきました。
しかし、経済性やスピード優先の現代では、工業化も進み
機能的な塀として版築が使われることはほぼなくなりました。
 
手間暇かかる版築ですが、
スピード優先の工業製品では出せない味のある表情が魅力です。
 
唯一無二の壁をつくるために、建主や工務店と検討を重ねた結果
この一品だけは長門の福田さんにお願いすることになりました。
 
時期も時期だけに、感染対策を徹底した上で
材料の搬入を兼ねて現地で打合せを行いました。
 
 
 
 
 
 
壁の高さが2m以上あるため、
2トン車いっぱいに積まれた土は全部で80袋、
1枚の壁にこれほどの土が必要とは、ちょっと予想外でした。
 
材料を降ろした後、現場で細かい寸法等の確認を行い
工事の日程も決まりました。
 
 
 
 
 
 
こちらはキッチン収納に使うカウンター用の無垢材
 
現場に向う途中、
中津の建具屋さんに立ち寄って確認してきました。
3.6mの長さがとれる無垢材が必要なため
提示していただいたのがバルサムという北米産の白木です。
 
 
 
 
 
 
 
カンナで削るとこのような表情でクセの少ない淡い色合いの木目です。
しっかり乾燥した材で狂いも少ないとのことで建主にもご了承いただき、
この材料で進めることになりました。
 
 
 
 
 
 
キッチン周りに据える造付の家具たちも順調に製作が進んでいるようです。
 
 
 
 
 
 
現場にはキッチンの顔となるカウンター家具が運び込まれていました。
 長さは4mもあるフランス製のビンテージです。
 
主役となるこの家具にふさわしい空間となるよう
平面プランと構造計画を何度も練り直してこの場所が用意されました。
 
 
 
 
 
 
ダイニングキッチンでは、壁のしっくい工事が進んでいます。
左官屋さんが塗っているのはディスプレイ用の棚。
 
細長く入り組んだ棚全体をコテで仕上げるのはけっこう面倒ですが、
一つ一つ時間をかけて仕上げていただいています。
 
 
 
 
 
 
リビングに据えられたミニキッチン。
こちらは全面モルタルで仕上げます。
 
この家の仕上げはほとんどが工業製品ではない職人による手仕事です。
その分、時間と手間がかかってしまいますが
その一つ一つの積み重ねが、ここでの暮らしを豊かに包み込み
経年変化とともに豊かな時間を提供してくれるでしょう。