櫛ケ浜の家、縄張り

 

既存の下屋が解体され、新たに増築する部分の縄張りが行われました。
 
鰻の寝床のような敷地は戦前から残る密集地区によるもので
隣地がかなり迫って互いの間合いを図るのが大変ですが、
これまで気づかれてきた地域力を頼りに調整していきます。
 

曳家工事見学

 

常盤公園での古民家の曳家工事
 
櫛ケ浜の家で家上げ工事を行う大工さんの現場を見学してきました。
敷地の南側(写真奥)に建っていた建屋を北側の新しい基礎のところまで曳家し、
南側に庭を整備するというプロジェクトです。
 
 
 
 
井桁を組み上げてレベル調整された上にレールを敷き
丸パイプをかませて転がしていくという方法です。
 
敷地にはかなりの高低差、そして建屋は老朽化して歪んでいるのですが
これを臨機応変にレベル調整して水平を出しています。
 
 
 
 
井桁足場のディテール
定型の既成部材は一切なし、どこにでもある角材を組み合わせています。
配管を外した状態の便器もそのままで移動されていきます。
 
 
 
 
引っ張っているのは手前に見えるウィンチひとつ。
この小さな動力以外はすべて手作業というのですから大したものです。
まさに経験と勘のなせるスゴ技です。
 
この古民家、老朽化で雨漏りや土台の腐朽、建屋の歪みなど
普通であれば、解体、廃棄されてもおかしくない状態ですが
優れた大工技術を伴えば再生できるのだ、ということに的を得た思いです。
 
もちろん、建て替えたほうが経済的かもしれませんが
往時の木組や年月の経った風格を残せるのなら、
新築よりも多くの価値を持って長生きできるわけです。
 
長期的な視点で考えれば、むしろこちらのほうが経済的で、かつ地球にも優しい。
建物の価値を考えるスパンを捉え直す、画期的な工事を見た思いです。
 
 

櫛ケ浜の家、解体工事スタート

 

櫛ケ浜の家、
昨年いっぱい設計とコスト調整を行っていましたが
築95年の町家再生へ向け、いよいよ工事がスタートしました。
 
奥の母屋とその後に増築された下屋部分(写真手前)、
まずはこの下屋を解体していきます。
 
 
 
 
母屋(左)と下屋を切り離したところ。
 
 
 
 
反対側から見たところ
坪庭に植えられていたマキの木は保存し、新しい中庭に活かします。
 
 
 
 
下屋を解体したところ
元々の母屋の立面が現れました。
 
このあと、下屋の基礎を除去、整地し、
手前部分の新たな増築へ向け準備が進みます。
 
 
 

櫛ヶ浜の家、軸組模型

築95年の町家の再生にあたり、耐震調査によって明らかになった骨組みを立体化。この家の架構の特徴や課題をチェックしていきます。製作してくれたインターンシップの学生さん、一つ一つの部材、組合せを確認しながら丁寧に組み立てても … “櫛ヶ浜の家、軸組模型” の続きを読む




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築95年の町家の再生にあたり、
耐震調査によって明らかになった骨組みを立体化。
この家の架構の特徴や課題をチェックしていきます。

製作してくれたインターンシップの学生さん、
一つ一つの部材、組合せを確認しながら丁寧に組み立ててもらいました。


耐震補強、工事下見

櫛ヶ浜の家で耐震補強の施工について下見が行われました。柱は長石の上に掘立で建っていますがこの骨組み全体をジャッキアップして基礎のコンクリートを打ち直す予定。2階建、35坪もの上屋をどうやって持ち上げるのか・・・詳しいこと … “耐震補強、工事下見” の続きを読む




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櫛ヶ浜の家で耐震補強の施工について下見が行われました。

柱は長石の上に掘立で建っていますが
この骨組み全体をジャッキアップして基礎のコンクリートを打ち直す予定。

2階建、35坪もの上屋をどうやって持ち上げるのか・・・
詳しいことは写真の職人さんの頭の中で構想されるようです。

櫛ヶ浜の家、耐震調査

櫛ヶ浜の家で、耐震診断用の本調査が行われました。元の図面がないため、柱や梁など1本1本すべて寸法を測っていきます。測った寸法を簡易の図として記録、この図を整理してすべてのデータをまとめていきます。今回、3日間の調査で構造 … “櫛ヶ浜の家、耐震調査” の続きを読む





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櫛ヶ浜の家で、耐震診断用の本調査が行われました。
元の図面がないため、柱や梁など1本1本すべて寸法を測っていきます。




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測った寸法を簡易の図として記録、
この図を整理してすべてのデータをまとめていきます。

今回、3日間の調査で構造部材の寸法、接合部の形状確認、
床下状況の調査、含水率の計測、部材の強度確認、
骨組みのたわみや傾斜の測定などを行いました。

このデータを元に耐震診断を行い、耐震補強設計を進めます。


櫛ヶ浜の町家、スタディ

 

 
 
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櫛ヶ浜の町家、ボリュームスタディ
まずは既存の家を立体にして、立体構成を確認。
奥の母屋に複数の下屋が増築され、細胞分裂が繰り返されたような構成です。
 
 
 
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奥の母屋を残し、手前の下屋部分を解体し、新たなボリュームを増築
母屋に合わせた入母屋屋根のパターン。
 
このパターンだと瓦屋根と漆喰壁で母屋と統一感を持たせることもできますが
コストの検討も必要です。
 
 
 
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こちらは切妻屋根のパターン
隣地が迫る細長い敷地でのボリューム確保を模索しています。
 
こちらは母屋の形態を継承しながら、
少しシンプルなデザインにする手もありそうです。
 

耐震調査

 
 
 
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櫛ヶ浜の町家にて耐震調査を行いました。
この装置は建物の揺れを測定するもので
これを小屋裏、2階床、1階床に置いて、それぞれの揺れを測定します。
 
今回は建物が古く、耐震診断の難易度も高いため、
経験豊富なグリーンデザインオフィスの岩田さんに調査を依頼。
 
 
 
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小屋裏に昇って、小屋組をチェック。
梁には松の丸太が使われており、時代が現れています。
 
 
 
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耐震性にも関わる土壁の壁厚もチェック。
 
 
 
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測定されたデータがパソコンに写し出されます。
このデータからおおよその耐震性をチェックすることができるそうです。
 
 
 
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お住いの家の中には、この町家の外観写真が額入りで飾られていました。
歴史を刻んだこの町家への思いが伝わってきます。
 
今回の調査結果をもとに、
未来に向けての再生プロジェクトに挑んでいきます。
 

櫛ヶ浜の町家から

 
 
 
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2階の座敷から欄干越しに庭を望む。
 
まるで京都の町家のようですが、ここは周南市の櫛ヶ浜。
100年近くの歴史を刻む町家のリニューアル計画です。
 
太平洋戦争の空襲を免れたまちにはこのような町家がいくつか残っています。
戦後の相次ぐ建て替えで街並みもかなり様変わりしていますが
この風情を後世につなぐことができれば大きな進歩になりそうです。
 
「古い」と「新しい」を繋いで未来を拓く、大きなチャレンジです。