神勝寺 洸庭





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神勝寺の境内の裏山を上った先、
道路を挟んだ飛び地に姿を現したアートパビリオン





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名和晃平作 「洸庭」

神勝寺の母体である常石造船をイメージする船形の造形が宙に浮いています。
その造形は寺院の屋根を連想させながらも宇宙船のようでもあります。

船を持ち上げた列柱はプロポーション、質感ともやや唐突ですが
純粋な形態は、建築家というよりアーティストらしい造形感覚です。





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下から見上げたところ

建物全体がサワラのこけら葺きで覆われていて、
その丁寧な仕事ぶりととも、独特の質感を表しています。

実は、パビリオンの最大の見せ場は、この「船」の中にあります。
それはこの地を訪れて味わってみられることをお勧めします。




直線のコンポジション





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神勝寺一来亭、座敷の風景

本堂から脇道を下りて行った木立の中にある一来亭。
千利休が建てた茶室を中村昌生氏の設計で復元したものです。

屋敷の座敷部分にもさりげないデザインが施されています。
畳割と縁の線、柱や鴨居の軸組、壁の素材、腰張りや襖の配色や比率、障子や天井のライン。

直線のみで構成された空間は一見あっさりとした印象ですが、
決して単調ではなく、十分に抑揚が感じられます。

鐘楼門




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神勝寺の本堂へ向かう途中にある鐘楼門

門は本来、場所を仕切る機能を持っていますが
この門には扉がありません。
また、門の両脇も通り抜け可能になっています。

解説によると、
一切衆生が仏門に入ることを拒まない仏の大慈悲心を表すとされています。

ここから世界が変わることを表していながら
向こうとこちら側が限りなく繋がっています。

場所のもつ意味が変わっても、物理的には連続していくという
実に気持ちよく、興味深い空間性をもっています。


賞心庭





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神勝寺の境内に広がる賞心庭

山中の広大な敷地を切り開いて建立された神勝寺、
谷筋の地形を生かした池泉回遊式の庭園が広がっています。




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山の自然と庭園、建築が調和し、伝統的な日本の風景を体現しています。
京都から遠く離れた福山市の山中にこの風景が存在することに驚きます。



松堂





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神勝寺の寺務所 松堂

山門をくぐるとまず迎えてくれるのがこの寺務所、
縄文建築の藤森照信氏の設計です。

禅宗寺院に藤森建築とはなかなかのチャレンジですが、
違和感なく風景に溶け込んでいるところはさすがです。




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屋根の天辺にはトレードマークでもある木が生えています。




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深い軒下空間の先に受付があります。
柱の外側は、木材保護のため足元まで板金でカバーされています。




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軒下空間、あえて曲がった木で列柱を構成
この野蛮なところにユーモアが感じられ、なかなか痛快です。




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土壁の塗り回し
屋根も壁も継ぎ目なし、手仕事のアナログさが妙に新鮮な表情です。





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こちらはトイレの換気口

既製品のガラリのいやらしさをカモフラージュ、
建物の裏面なのに、手を抜かず、デザインしまくってます(笑)




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トイレ前の通路

床は刷毛引き仕上げ、壁天井は土壁の引きずり仕上げ
こちらもアナログな仕上げにレトロな照明が妙にマッチしています。

和とも洋とも言い難い、古めかしいようでとても斬新、
藤森建築の真骨頂が随所に見られます。



天心山 神勝寺




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禅宗の寺院らしい堂々とした山門

広島県福山市沼隈町の山中にある新勝寺、
福山西インターを降りて山道を走ること15分、
人家もまばらな山の中に忽然とこの山門が現れます。

この奥には、スゴイものたちが存在するのですが
とても一口には語れないので、明日以降、おいおいレポートしていきます。



講演会 求道会館と求道学舎の保存とリノベーション





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山口県庁の旧県会議事堂での講演会に行ってきました。

山口県の旧県庁舎・旧県会議事堂創建設計に携わった武田五一。
その彼が同時期に設計した東京の求道会館と求道学舎。



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今回、90年近く経過して荒れ果てた建物がいかに再生を果たしたか
その所有者でかつ設計者でもある近角真一氏に講演頂きました。

自身の祖父の代に建てられた求道会館と求道学舎、
時代の荒波にさらされ、その存在価値が失われかけ
再生するにも膨大な費用がかかるという困難な課題を抱えていました。

苦慮を重ねた結果、
求道会館は東京都の文化遺産(ヘリテイジ)という新たな価値を得て保存再生され、
求道学舎は趣あるコープラティブハウスとしてリノベーションされました。

こちらのサイトを参考に

求道会館

求道学舎


近角氏の話で印象に残ったのは、
コストや省エネと文化的価値のバランスについて

元の建物の文化的価値をきちんと残そうとすると新築と同じくらいコストがかかること

コストだけで考えれば、割安な材料と工法でコストを抑えることは可能でも、
その記憶や文化的価値を維持しようと思えば、それ相応の覚悟も必要です。
それは、短期的な価値とはならないけれど、長期的な価値を生み出すものなのです。

省エネの考え方については、
断熱性能を現代のものに合わせると元の建物に忠実に改修することが難しいが
建物を建替えずに、寿命を延ばすことでエネルギー消費を抑えるという考え方があること。
(実は、日常のエネルギー消費より、建物の建替えにかかるエネルギーがはるかに大きい)

今回の事例は、設計者自身が所有者であり、
建物に対する並々ならぬ思いや情熱がこの困難な事業を
最高の形で成し遂げることを可能にしたと言えるでしょう。
そして、それによって
我々にとっての貴重な財産を未来に残すことができた奇跡的な事例です。



SANAAのS-HOUSE




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SANNAのS-HOUSEを見学してきました。

1997年の作品なので完成して20年近くが経ちますが
その表現性は今見ても先鋭です。

ローコストの二世帯住宅としてデザインされた住宅が
今年、S-HOUSE MUSEUMとしてリニューアル、
ミュージアムとして一般に公開されました。



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中に入るとまず外周をめぐる吹抜けの回廊
細く背の高い空間には半透明の波板を通した光が注ぎます。




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空間の出隅部分
構造上の柱がない、光があふれる浮遊する空間です。




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2階部分はすべて開閉可能な建具、
スリット状に光が差し込みます。




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1階の個室は一部屋に一人ずつ、アーティストの表現空間になっています。




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和室には、南面の建具を床の間に見立てた作品が飾られています。





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トイレもリアルな展示空間に!




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1階のギャラリーを一通り見たところで2階のリビングへ
階高2.5mのため、2階がとても近く感じます。




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2階のリビングもほぼ原形のままにとどめ、
そこにアート作品が同居しています。

住宅としてデザインされたS-HOUSE、
それがいかにしてミュージアムに生まれ変わったのか?
今回、館長の花房香さんからその経緯をお聞きすることができました。

花房さんが目指す「前方視的ミュージアム」
作品の一つ一つにはリアルな社会性があり、
小さいミュージアムながら、生き生きとした表現が感じられます。

住宅としてデザインされながらも
ニュートラルでかつ唯一無二の固有性のある空間は
ミュージアムとしても十分機能しています。

建築としての強度が時代を乗り越えていくことを
この建築は十二分に示しています。

リアルなアートと見事に溶け合って社会とともに進化を続ける、
このミュージアムの今後が楽しみです。


S-HOUSE MUSEUM






獺祭ストア本蔵店、内覧会




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旭酒造の新な直売所、「獺祭ストア本蔵店」

以前、かわうそ亭という蕎麦屋で使われていた建屋を大幅にリノベーション、
設計は時の建築家、隈研吾氏です。




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軒のデザインがポイントという隈さん、
入口は頭が当たらないギリギリの高さまで低く抑えています。




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内部は淡い色合いの和紙に覆われたやわらかい空間
特注の照明も和紙でできているそうです。




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極め付きは元の骨組みをすべて和紙で包んでいるところ。
長ほぞに鼻栓差しの凹凸まですべて和紙で包んでいます。
徹底して和紙の質感で統一されています。




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川沿いの開口部の外には木の縦格子、そして屋根も同様の格子貼り
外観は隈さんの定番、スラットで構成されています。

今回、リノベーションされた建物はとても斬新かつ繊細、
モダンでかつ日本的な柔らかさを持っています。

惜しむらくは、
築100年以上建物の歴史が新しいデザインで漂白されてしまっているところ。
話題性とインパクトとしてのデザインとしては十分に応えていますが
デザインとしての持続性には限りがありそうです。



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こちらは旭酒造の本社ビル

隈さんが言われる里山のイメージとはほど遠いものですが
世界戦略を勝ち抜くための駆け足の状態が今の風景です。

世界展開を成就した暁には、
「獺祭が作られているのはこんな風情のある場所なんだ」と共感できるような
里山として誇らしい場所となるよう、足元を固めて欲しいと願います。