版築壁と薪ストーブ、そしてモルタル

臼杵の家、中庭の版築壁は型枠が解体されて
仕上がった壁が現れました。
 
まるで地層がそのまま現れたような壁は
土のリアルな素材感を持ちながら、抽象的なアートのようにも見えます。
 
とても存在感があるのに、不思議と静けさが漂う壁を前にすると
何か、心が穏やかになる感じがします。
 
 
 
 
 
室内には薪ストーブが据えられ
奥に見えるヴィンテージのカウンターとともに
この空間の濃度が一気に高まってきました。
 
 
 
 
 
 
水回りの空間は洗面台も含めてモルタル仕上げ
やや大きさを絞った窓からの光を受けて
陰影の深い表情がなかなか渋いです。
 
 
 
 
 
 
リビングのミニキッチンもモルタル仕上げ
職人さんが丁寧に仕上げてくれています。
 
こちらも軒が深く、抑制された光の中で
モルタルの質感が引き立っています。
 
 

四熊家住宅 進行状況

江戸時代の建築が残る四熊家住宅、
その長屋門の左側にある既存建屋を改修する今回の工事、
夏の間に屋根、外壁の改修がかなり進みました。
 
主役である長屋門に対し、脇役に徹しながら
主従のバランスや互いの間合いを意識して外観をデザインしています。
 
 
 
 
 
 
改修部分はの屋根は長屋門に合わせて軒を深くすることで
長屋門側から瓦屋根が連なり、調和のとれた外観になっています。
 
 
 
 
 
 
 
改修部分の妻側外観
腰壁は杉の板壁、上部はしっくい仕上で
こちらも長屋門との視覚的な連続性を意識した外観です。
 
 
 
 
 
 
改修部分内部は現代の生活に合わせたシンプルな構成です。
天井は杉板貼り、壁は珪藻土で
内部も長屋門との一貫性を意識した仕上としています。
 
 

版築壁工事その他

臼杵の家で版築壁の工事が始まりました。
まず、コンクリート基礎の上に型枠を建て込んでいきます。
 
 
 
 
 
 
真砂土にセメントと顔料を加えて攪拌。
水を加えながら最適の粘度に調合していきます。
 
 
 
 
 
 
攪拌された土は結構粗めで水気があまりないように見えますが
手でギュッと握って水分が染み出すくらいの粘度が最適なんだそうです。
 
 
 
 
 
 
顔料は4色あって少しずつ濃さが違うそうです。
これらを各層ごとに変えることで地層のような独特の表情が現れます。
 
ちなみに、どんな順番の組合せにするのか聞いたところ
返ってきた答えは、適当!(笑)
 
 もちろん、頭の中にはイメージがあるのでしょうが
経験からくる直感が一番間違いないのかもしれません。
 
 
 
 
 
 
攪拌された材料は粒の粗さもいろいろで
これによって自然な表情が生まれます。
 
 
 
 
 
 
 
材料を型枠の中に流し込んで、上から突いていきます。
 
 
 
 
 
 
型枠1段目をある程度突き終わったところで鉄筋を継ぎ足し
2段目の型枠を建て込んでいきます。
 
 
 
 
 
 
室内ではキッチンのステンレス天板の取付が進行中。
 
 
 
 
 
 
ヴィンテージの家具も準備が整ったところで定位置に据え付けです。
 
 
 
 
 
家具の中にコンセントを組み込むため
巾木部分に配線用の穴を開けています。
 
 
 
 
 
こちらはディスプレイ棚のしっくい仕上げの最終段階です。
 
 
 
 
 
 
一通り家具が据えられて室内の雰囲気がだいぶ整ってきました。
来週にはここに薪ストーブが搬入される予定です。
 
 
 
 
 
版築壁の工事2日目。
残り1.7mほどの高さをひたすら突いていきます。
 
ちなみに1層の厚さは10センチ前後、
全部で24層になるそうです。
 
 
 
 
 
中庭側から見た施行中の風景、
この時点で2/3程度まで上がってきました。
 
 
 
 
 
ついに上まで突き終わり、天端を均して終了です。
1週間ほどこの状態で置いたのち、型枠をバラす予定です。
 
少し大げさに言えば、世界でここだけにしかない唯一無二の版築壁、
出来上がりの表情が楽しみです。
 
 
 
 

版築壁の現地確認

臼杵の家では、
建主のご希望で中庭の仕切り壁を版築でつくることになりました。
 
版築というのは、土を突き固めて基礎や土塀にしたもので
近代以前には寺院や貴族の館などの外塀として使われてきました。
しかし、経済性やスピード優先の現代では、工業化も進み
機能的な塀として版築が使われることはほぼなくなりました。
 
手間暇かかる版築ですが、
スピード優先の工業製品では出せない味のある表情が魅力です。
 
唯一無二の壁をつくるために、建主や工務店と検討を重ねた結果
この一品だけは長門の福田さんにお願いすることになりました。
 
時期も時期だけに、感染対策を徹底した上で
材料の搬入を兼ねて現地で打合せを行いました。
 
 
 
 
 
 
壁の高さが2m以上あるため、
2トン車いっぱいに積まれた土は全部で80袋、
1枚の壁にこれほどの土が必要とは、ちょっと予想外でした。
 
材料を降ろした後、現場で細かい寸法等の確認を行い
工事の日程も決まりました。
 
 
 
 
 
 
こちらはキッチン収納に使うカウンター用の無垢材
 
現場に向う途中、
中津の建具屋さんに立ち寄って確認してきました。
3.6mの長さがとれる無垢材が必要なため
提示していただいたのがバルサムという北米産の白木です。
 
 
 
 
 
 
 
カンナで削るとこのような表情でクセの少ない淡い色合いの木目です。
しっかり乾燥した材で狂いも少ないとのことで建主にもご了承いただき、
この材料で進めることになりました。
 
 
 
 
 
 
キッチン周りに据える造付の家具たちも順調に製作が進んでいるようです。
 
 
 
 
 
 
現場にはキッチンの顔となるカウンター家具が運び込まれていました。
 長さは4mもあるフランス製のビンテージです。
 
主役となるこの家具にふさわしい空間となるよう
平面プランと構造計画を何度も練り直してこの場所が用意されました。
 
 
 
 
 
 
ダイニングキッチンでは、壁のしっくい工事が進んでいます。
左官屋さんが塗っているのはディスプレイ用の棚。
 
細長く入り組んだ棚全体をコテで仕上げるのはけっこう面倒ですが、
一つ一つ時間をかけて仕上げていただいています。
 
 
 
 
 
 
リビングに据えられたミニキッチン。
こちらは全面モルタルで仕上げます。
 
この家の仕上げはほとんどが工業製品ではない職人による手仕事です。
その分、時間と手間がかかってしまいますが
その一つ一つの積み重ねが、ここでの暮らしを豊かに包み込み
経年変化とともに豊かな時間を提供してくれるでしょう。
 
 

臼杵の家、内装工事進行中

臼杵の現場も
 
外観はほぼ仕上がっており、現在内部の左官工事が進行中です。
 
 
 
 
 
南側正面からの外観
 
中央の中庭をはさんで
横スリット窓が印象的なダイニングと開口の大きな2階吹き抜けのリビング。
 
 
 
 
 
ダイニングから玄関方向を見たところ
まだ仕上げのしっくいを塗る前段階ですが、夏の日差しもあり
窓の少ない空間の割に明るさは十分です。
 
 
 
 
 
横スリット窓のカウンターの右側にはディスプレイ棚のアルコーブ
壁と同様にしっくいで仕上げてもらいます。
 
 
 
 
 
リビングの開口は防犯上、仮設の板戸で半分が塞がっていますが
しっくい塗装された空間は落ち着きのある明るさです。
 
 
 
 
 
 
窓側からの見返し
 
右奥には小上がりのたたみの間、
その上部は隠れ家のような子供室です。
 
 
 
 
 
 
階段も仕上がり、シンプルな手すりも取付完了しています。
 
 
 
 
 
洗面室と視覚的につながる浴室
 
床、壁ともモルタル仕上げで
蒸し暑い中、左官屋さんが丁寧に仕事をしてくれています。
 
設計に1年半、そして着工から7ヶ月余り。
普通の家であれば、すでに完成していてもおかしくないのですが
建主のこだわりをひとつひとつ確認しながらの家づくりです。
 
この忙しい時代にはありえないようなつくり方かもしれませんが
建主と設計者、そして施工する工務店それぞれが思いを受け止めて
進めることができている、とても稀な家づくりかもしれません。
 
 
 

まち歩き@防府

山口県ヘリテージマネージャー協議会の総会が土曜日に行われ
そのあとに開催地の防府のまち歩きが行われました。
 
まずは、種田山頭火の生家があった地区にある
山頭火の小径と呼ばれる路地づたいにスタート。
 
戦前から残る細い小径は車が通らず穏やかで、水路には清流が流れ
ところどころに歴史的な建築要素も残っています。
 
 
 
 
 
小径から旧山陽道に出てくると見えてきたのが
板塀と漆喰塗りの蔵が印象的な白石呉服店。
 
歴史は古く、明和2年(1765年)までたどるそうで
その歴史もさることながら、現在まで大切に維持されている建物と景観は
本当に立派というより他ありません。
 
 
 
 
 
板塀のすぐ脇にはやはり清流が流れる水路があり
蔵の屋根にある扇状の棟飾りの意匠もなかなか個性的なデザインです。
これらすべてが調和して、この場所の景観を引き締め、街並みに貢献しています。
 
 
 
 
 
 
旧山陽道には明治以降の洋館も残っています。
戦前は、この通りが防府の中心だったことをうかがわせる貴重な遺産です。
 
区画整理で通りの電線は地中化、舗装もきれいに整備されていますが
車の往来を気にしながらのまち歩きはやや残念です。
 
できれば、往時の歴史を感じながらゆったりとそぞろ歩きできるよう
将来は車の往来を削減する方策を進めてほしいものです。
 
 
 
 
 
 
洋館のはす向かいにある町家を改修した蕎麦屋 兎屋
決して広い空間ではないけれど
昔の建物は軒が低く、軒下についつい佇んでしまう心地よい空間です。
 
 
 
 
 
蕎麦屋の向かいには毛利家の本陣跡
この場所には鎌倉時代から続く旧家があり
江戸時代には萩藩の本陣として建物が整備されましたが
2011年の火事で建物は全焼、貴重な歴史遺産が喪失してしまったそうです。
なんとも切ない。
 
 
 
 
 
旧山陽道をあとにして、
防府天満宮の参道を通って防府市公会堂へ。
その途中のまちなかに残る旧家の表門。
 
ケヤキの分厚い一枚板を彫り込んで縁取りを施してあり
なんとも贅を尽くしたつくりです。
 
 
 
 
 
 
まち歩きの最終地点、防府市公会堂。
 
佐藤武夫設計、1960年に完成した近代建築の王道を行くデザインです。
平成30年から2年かけて改修され、歴史遺産としてまちの宝となりました。
 
 
 
 
 
 
玄関ポーチとなる2層吹き抜けのピロティ
上階を支える細身の梁がリスミカルに並び
コンクリート造の建物に繊細さを与えています。
 
今回、防府のまちをはじめて歩いて回りましたが
人間の目線(約1.5m)とスピード(時速4キロ)でまちを眺めると
日頃見落としているものがたくさんあることに気付かされます。
 
「まちの持っている価値は歩く人間によって生み出される」
そのことを改めて実感したまち歩きでした。
 
 

中庭の日除け

中庭を覆うタープ
 
昨日、山口県も梅雨が明け、いよいよ夏本番です。
城ケ丘の家では、毎年、梅雨明けとともに中庭にタープを取り付けています。
 
中庭は15坪の広さがあるため、3枚のタープでカバーします。
ウッドデッキに置かれたたくさんのプランターを移動させて
タープの張り具合を確認しながら、最適な配置に調整し
日が高くなる前になんとか取り付け完了です。
 
 
 
 
 
 
タープを取り付けると室内は少し明るさが抑えられ
日差しの強いこの季節でもなんとなく落ち着いた雰囲気になります。
 
強い日差しを遮り、中庭の気温上昇を抑えて
暑い夏を少しでも快適に、省エネに暮らすための恒例行事です。
 
 

宇部の家、耐震調査

昭和11年に建てられたという木造平屋の家、
入母屋づくりの堂々とした佇まいです。
 
築85年ということで内部はさすがに老朽化した部分も見られますが
随所に職人技が施された風情ある日本家屋です。
 
時を経て、味わいを増したこの家を次の世代に引き継いでいくことは
社会的にも文化的にもとても意義深いことです。
 
このたび、改めて計画を進めることになりました。
 
内装の改修に伴い、耐震改修も検討されたいとのご要望があり
まずは、現在の状況を簡易調査するために伺いました。
 
 
 
 
 
 
既存の玄関はつくりは古いですが、
玄関建具や欄間は丁寧な仕事がされています。
 
この部分は新たにキッチンに改修する予定ですが
玄関建具は他の場所に移される玄関で再利用も検討します。
 
 
 
 
 
玄関から続く内縁部分
内縁の外(写真右側)はコの字に囲われた中庭になっています。
 
この中庭全体にウッドデッキを敷き込んで
内と外がつながる生活空間へと拡張する予定です。
 
 
 
 
 
 
耐震調査は、今回もグリーンデザインオフィスの岩田さんにお願いしました。
 
まずは、小屋裏の骨組み形状を確認し、振動を計測するため
押入れの点検口から天井裏に潜っていきます。
 
 
 
 
 
小屋裏に設置した計測器によって微細な振動を計測、
この家の固有周期などを測っていきます。
 
 
 
 
 
 
柱を揺らして振動を起こし、それによる揺れ方もチェック。
 
 
 
 
 
柱部材などの含水率も測っています。
 
建物の南側は15%程度でよく乾いていますすが
北側や建物中央の風が回りにくい箇所は25〜30%と含水率が強くなります。
 
含水率が一定以上高くなると部材の強度が下がるため
これらの条件も考慮しながら評価していくことになります。
 
 
 
 
 
一通り建物内部の計測が終わったところで屋外に移動し、
地盤の固有周期を計測します。
 
敷地のそばを国道が走っているため
車が通るたびに振動が激しくなります。
この振動の状況によって地盤の硬さを判定することができます。
 
建物と敷地地盤それぞれの固有周期を測ることで
地震時に起こる共振についてもチェックすることが可能です。
 
 
 
 
 
調査の最後には小型ドローンが登場。
 
 
 
 
 
 
古い建物で図面が残っていないため、
ドローンを飛ばして真上から屋根の形状と最高高さをチェックします。
 
今回の調査で得られたデータをもとに
これから既存建物の耐震性の評価を行い
耐震改修の内容や方法を検討していきます。
 
 

四熊家住宅、改修計画

 
まるで江戸時代にタイムスリップしたような風情です。
 
新南陽の土井にある四熊家住宅は
 江戸中期の建物が残る茅葺の母屋と明治期に増築された洋館建ての診療所が
国の登録文化財に登録されています。
 
その他にも、同じ江戸期の建設になる長屋門があり
現在、建主が経営する整体院「見聞堂」として活用されています。
 
 
 
 
 
 
長屋門の西側には広い庭園も残っており
春には満開の桜がこの地域の風景に季節感を与えています。
 
 
 
 
 
 
長屋門(写真右)には戦前に増築された居住部分(写真中央)があります。
この増築部分は建てられた時期の経済的事情のためか
かなり華奢なつくりで、傷みが著しい状態です。
 
このたび、老朽化した増築部分を改修することになり
風格のある長屋門と一体の風景として後世に引き継ぐための
お手伝いをさせていただくことになりました。
 
 
 
 
 
 
改修を行う増築部分
 
見た目にも骨組みの歪んでいるのがわかるほど傷みが激しいため
構造補強も行った上で内外の意匠を整備し直します。
 
 
 
 
 
 
まずは傷んだ部分の解体が行なわれ、古い瓦と外壁を撤去しています。
 
 
 
 
 
 
壁を撤去して骨組が表しになった状態。
現在、細かい部分について建主と打合せを行いながら設計を進めており
その後、本格的な改修工事に進む予定です。
 
 
 

何気ない風景@臼杵

臼杵インターから現場に行く通り道、
昭和っぽい2階建ての家が建っています。
 
あまりの何気なさにうっかり通り過ぎそうでしたが、なにやら気配が・・・
 
改めて見直すと
2階部分が平屋に対し、45度くらいの角度を振って引っ付いています。
 
2つのボリュームに角度をもたせて構成するのは
建築家のやりそうなデザイン手法ですが
どうみても建築家の手が入っているようには見えません。
 
しかも、
角度だけではなく、その引っ付き方がどうにも怪しい。
 
 
 
 
 
 
2階建ての妻側から見るとこんな感じ。
 一見、ひとつの建物に見えますが、接続部分がどうにも不自然です。
 
 
 
 
 
 
接続部分に寄ってみると・・・
 
なんと!
左の2階建ての外壁は、平屋側の窓の途中にぶち当っています。
建築の仕事をする人間の言葉で言うと、「納まっていない」のです。
 
おそらく
あの窓を開けると、2階建て側の外壁の断面が露出して見えるはずです。
 
どんな事情があったかは知る由もないですが
無作為なさりげないさとは裏腹のショッキングな状況、
せつなさすらも漂うトマソン級の建築と言えそうです。
 
それにしても人間というものは何をしでかすかわからない(笑)
こんなスリリングな建築は、AIでもなかなか思いつかないでしょう。