何気ない風景@尾道LOG

尾道にオープンしたLOG
 
昭和38年、千光寺公園の中腹に建てられた山手の先進的なアパートが
このたびリノベーションされ、尾道の町を見下ろす宿やカフェをもち
敷地全体を公園に見立てた、新たな交流の場として誕生しました。
 
2回目は玄関からのアプローチ空間をレポートします。
 
坂を登った踊り場に当たるところにひっそりとした玄関が現れます。
中のアパートは鉄筋コンクリートですが、玄関は意外にも和の雰囲気。
麻紐のような素材を垂らした暖簾が結界をつくっています。
 
銅製の樋がオープンしたばかりの初々しさを感じさせます。
 
 
 
 
 
門の脇にはヒノキ造りのベンチ。
 
階段の踊り場でちょっと一休みできるこの場は
この施設の懐の深さをうかがわせるような存在です。
 
 
 
 
 
門をくぐるとアプローチがまっすぐと奥へ伸びています。
 
突き当たりに見えるのは大家さんの家だったもので
今後、新たな交流の場として改装される予定だそうです。
 
カフェや宿へは、その手前で左に折れてアプローチします。
 
 
 
 
 
最初に現れるのがこの空間
 
正面の壁はピクチャーウィンドウのように切り取られ
それに正対するように中央には丸テーブルが配されています。
そして極め付けは天井にとぐろを巻く設備配管。
 
これらすべてが一体のオブジェのような存在として呼応し
独特の磁場を生み出しています。
 
 
 
 
 
ボイドの空間はおおらかに庭やその先の遠景に抜けきって
何もないはずなのに、決して貧しい空間には感じられません。
 
 
 
 
 
こちらは宿泊棟裏の空き地
 
一見、気の抜けたようなこれらの空間は
隅々までデザインで埋め尽くす高級旅館やホテルの庭とは対極的です。
 
しかし、
ここにはさりげなくも巧みに力を抜いたデザインの妙があり
空間として、デザインとしての余白となって
それが豊かな空間体験につながっているように感じられます。
 
それはまるで、映画「東京物語」で尾道を描いた
小津安二郎の空気感にどことなく通ずるところがあるのかもしれません。
 
 
 
 

何気ない風景@尾道散歩

尾道にオープンしたLOG
2回に分けてレーポートします。
 
まずは、LOGへ至るアプローチから。
 
尾道の商店街から国道を渡ると見える
道路と並行して走る山陽本線の高架をくぐるトンネルは
まるでにじり口のような坂のまちの入口です。
 
 
 
 
 
 
トンネルを抜けると千光寺公園に至る坂が現れます。
道沿いには所々に雑貨やカフェの小店が営まれています。
 
 
 
 
 
メインの坂道には等高線に沿った脇道が幾つかあり
そこにも味のある路地空間が展開しています。
 
 
 
 
こちらにも。
 
細い路地ばかりの迷路のような空間は
イタリヤや南フランスなど、地中海周辺の集落に酷似しています。
 
 
 
 
ときにはこんなものも・・・
 
狛犬ならぬコマネコ?
 
 
 
 
 
坂を見上げるとシュールな刈り込み!
 
もはやオブジェのようですが
以前東京の谷中で見たのとほぼ同じ造形は
まるでデジャヴのよう。
 
 
 
 
 
 
のぼってきた坂を振り返ると
家々の間に尾道のまちと海が見えてきます。
 
平地の少ない地形を生かして発展したまちの風景は
車社会の地方都市とはまったく異なっていて
古くて不便でも、深みのあるくらしの営みが息づいています。
 
さらに、今やその先の未来へ向けて
独自の文化がふつふつと発酵を続けています。
 

何気ない風景@トクヤマの煙突

見事な非対称の構成
 
産業道路を新南陽から東進すると見えてくる(株)トクヤマの煙突。
高度成長期をリアルタイムで生きてきた市民にとっての原風景です。
 
まったく美的考察のされていないはずのこれらですが
仮に利休や織部が今の世に生きていたら、
どのような美を見出すのか、興味が絶えません。
 
 
 

カピンコーヒーにて

小春日和の中、
お客さんとともにカピンコーヒーにお邪魔しました。
 
 
 
 
朝日が差し込むリビング
完成当時から少しずつ設えられた家具とともに共鳴する空間です。
 
 
 
 
天窓からの光に満ちた吹き抜け
完成当時と比べ、少しまろやかになったように感じられます。
 
 
 
 
改修で撤去された天井裏に突き出していた梁の断片たち
空間のアクセントとして生かされたオブジェも役割を果たしています。
 
 
 
 
番付された小屋束
無作為に書かれただけの小さな部材ですが
この家の歴史を伝える大切な存在として息づいています。
 
 
 
 
シルエットが美しいワンシーン
 
改修から6年、
オーナーのセンスによって発酵が進み
ゆるやかに、しかし着実に熟成を深めています。
 
 
 
 
オリジナルのコーヒーとともに
豊かな時間を過ごさせていただきました。
 
この日のためにお時間をいただきありがとうございました。
 
 

HM養成講座、防府 英雲荘にて

防府市の英雲荘で行われた
HM(ヘリテージマネージャー)養成講座に参加しました。
 
英雲荘は江戸時代、毛利家の別邸として建てられた屋敷です。
なかなか質がよいとの噂は聞いていたのですが
その噂に違わず、デザイン、品格、施工の質もかなり高く
防府市によって、大切に維持されています。
 
 
 
 
 
広間は手前の主庭と奥の庭につながる
内外が融合する気持ちのいい空間です。
 
 
 
 
矩折りに曲がる内縁はすべて開閉可能な引戸で
美しい陰影をもった流動性の高い空間です。
 
 
 
 
講座は離れの花月楼にて
なんだか寺子屋の風情です。
 
座学では、防府の文化財行政の動向と山口県東部の文化財について
知識と次代へ生かすための事例などを学びました。
 
 
 
 
午後は実習として花月楼を実測調査、
3〜4人一組で建物の間取りを描き、柱や壁の位置や寸法を実測。
 
 
 
 
調査結果を書き込んだ平面図の一例。
間取り図に対し、縦横の寸法を色分けしたわかりやすいものです。
 
古い建物を生かしていく動きは今後ますます重要度が高まるでしょう。
その上で、今回の実習もとても有益な経験となりました。
 
 

室積のフォトスタジオ、外観スタディ

室積のフォトスタジオ、
外観デザインをスタディ模型にて検討中。
 
ワイルドでクールなインテリアのご要望にマッチするよう
外観を微調整。
 
庇はスチールPLによる薄さでシャープに引き締めつつ、
ハードな質感を加えています。
 
CGも手軽でいいですが、
模型によるスタディは、より陰影と奥行きがリアルに感じられます。
 

内と外をつなぐ

徳山高専で教えている建築デザイン概論、
今日の授業のテーマは「つなぐ」
 
一言で「つなぐ」といっても、
建築には様々な「つなぐ」が存在します。
 
そのうちの一つが「内と外をつなぐ」です。
 
深い軒や庇、縁側など
日本には古来から独自の建築文化として内外をつなぐ手法が育まれてきました。
 
上の図は平安時代の寝殿造りの平面図。
緑色の庭(自然)に対し、各部屋(茶色)が分棟で建てられ
それを屋根付きの廊下や縁側(黄色)でつないでいます。
 
部屋にいても、部屋と部屋を移動しても、常に家の外の庭とつながっています。
 
 
 
 
 
 
 
こちらは、京都にある仁和寺の回廊部分
寝殿造りの形態を今に伝える空間です。
 
建物の内と外が交わっていて
実際に回廊を巡ってみると、その豊かな空間を実感できるんですよ。
 
 
 
 
 
こちらは永観堂
深い軒下と縁側を通して、おおらかに庭とつながっています。
 
 
 
 
 
圓光寺の軒下空間
こちらも間口いっぱいに庭とつながっています。
 
 
 
 
 
東本願寺、渉成園にある「蘆菴」
 
建具を取り払うと、もはや内外の境がなくなる
実に気持ちのいい空間です。
 
 
 
 
 
 
変り種はこちら、岡山、後楽園の流店
究極の吹きさらし空間です。
 
 
 
 
 
しかも、建物の中に池からの水を引き込み、
内と外が入れ子のような独特な空間を作っています。
 
これらは、みな古い建物ですが
発想はむしろ斬新で、現代の建築以上に粋なデザインです。
 
内と外をつなぐ日本独自の建築文化、
これからの建築にも大切に生かしていきたいデザインです。
 
 

萩の家、提案

高杉晋作の生家もほど近い、
伝建地区に接する歴史地区での新築の提案です。
 
南北に細長い100坪ほどの敷地に対し、建物をT字型に配置し
敷地の広さを生かし、南に主庭、伝建地区に面する北側通り側に後ろ庭を確保。
前後の庭の間にリビングを配し、庭への広がりをつくっています。
 
後ろ庭によって、通りからの奥行きをつくることによって
通りにとっても落ち着いた環境を提供しています。
 
 
 
 
 
主庭側から見た外観。
 
形態は、萩のまち並みとの調和を図り、
瓦屋根の切妻による組合せや軒下空間など、日本的な要素でアレンジ。
 
L字に開く住まいの各部屋が主庭との関係をつくり
庭を通してまち並みにもゆるやかにつながる落ち着いた環境としています。
 
 
 

秋穂東の家、残工事確認2

 
寝室へと伸びる中廊下(右手がリビング、左が階段と水回り)
玄関から角を曲がると、ガラッと場面が展開します。
 
もともと現しだった柱や板張りの天井など、和のテイストだったところ、
それらを白いフィルターによって等質化。
 
古い家の灰汁(アク)を取り、
記憶の出汁(ダシ)を純化し、薄味にして抽出しています。
 
和だった空間は懐かしさをともない、ちょっとフレンチな雰囲気です。
 
 

秋穂東の家、残工事確認

 

 
 
 お引越しから2週間、
手直しや残工事の確認に行ってきました。
 
慌しかった現場の状況が長く続きましたが
少しずつ、暮らしの落ち着きが訪れているようです。
 
 
 
 
 
 
濱中史朗さんの花瓶に花が生けられ、
家とともに新旧の歴史が溶け合う味わいです。